投稿者「totulens」のアーカイブ

70.群の表現

コンパクトな非可換群で構造定数が\(f^{abc}\)のものを考えよう.この群の表現とは生成子行列\(T^a\)と同じ交換関係を満たすような\(D(R)\times D(R)\)のトレースレスエルミート行列\(T^a_R\)のことである.

$$[T_R^a,T_R^b]=if^{abc}T_R^c\tag{1}$$

ここで,\(R\)は表現の名前を表す部分であり,添字ではない.数\(D(R)\)を表現の次元という.また,元の行列\(T^a\)を基本表現もしくは定義表現という.

(1)式の交換関係の複素共役を取ろう.構造定数は実数なので,\(-(T^a_R)^*\)も全く同じ交換関係を満たすとわかる:

$$[-(T_R^a)^*,-(T_R^b)^*]=-if^{abc}(T_R^c)^*=if^{abc}(-T_R^c)$$

よって,\(-(T^a_R)^*\)は違う表現であるように思えるが一般にはそうではない.もし,\(-(T_R^a)^*=T_R^a\)もしくはユニタリ変換\(T_R^a\to U^{-1}T_R^aU\)で変換した先で\(-(T_R^a)^*=T_R^a\)が成り立つときは新しい表現は得られない.このような場合の表現を実表現という.また,このようなユニタリ表現は存在しないがユニタリ行列\(V\not =I\)があってすべての\(a\)で\(-(T_R^a)^*=V^{-1}T_R^aV\)が成り立つとき,\(R\)は擬実表現という.このようなユニタリ行列すらない場合は\(R\)は複素表現という.このような場合,新たに得られる表現を複素共役表現\(\overline{R}\)と表すことにする:

$$T_{\overline{R}}^a=-(T_R^a)^*\tag{2}$$

表現が複素であることを示すには最低一つの生成子行列\(T_R^a\)(もしくはそれらの実線形結合)がプラスマイナスペアでない固有値を持つことを言えばよい.例えば,\(N\ge 3\)での\(SU(N)\)の基本表現はこれが言える.また,\(SU(2)\)の基本表現は擬実表現である.このことは次のように示せる..

まず,この表現では生成子が\(\frac{1}{2}\sigma^a\)であるが,\(-(\frac{1}{2}\sigma^a)^*\not=\frac{1}{2}\sigma^a\)である.しかし,\(V=\sigma_2\)において,\(-(\frac{1}{2}\sigma^a)^*=V^{-1}\left(\frac{1}{2}\sigma^a\right)V\)が成り立つ.

\(SO(N)\)の基本表現は実である.これは生成子行列が反対称であり,反対称なエルミート行列は複素共役で元の行列にマイナスをつけたものになるからである.

コンパクトな非可換群の重要な表現に随伴表現\(A\)がある.これは

$$(T_A^a)^{bc}=-if^{abc}\tag{3}$$

で与えられるものである.\(f^{abc}\)は実数であり,完全反対称なので,\(T^a_A\)はエルミートかつ(2)式を満たす.つまり,随伴表現は実である.さらに随伴表現の次元\(D(A)\)は群の生成子の個数と一致する.この数は群の次元と呼ばれる.

随伴表現が交換関係を満たすことを示そう.そのためにヤコビ恒等式

$$f^{abd}f^{dce}+f^{bcd}f^{dae}+f^{cad}f^{dbe}=0\tag{4}$$

を用いよう.ヤコビ恒等式を示すには

$${\mathrm{Tr}}\ T^e\left([[T^a,T^b],T^c]+[[T^b,T^c],T^a]+[[T^c,T^a],T^b]\right)=0\tag{5}$$

を用いればよい.(5)式が成り立つことは左辺の交換関係を書き下せばすぐにわかる.(5)式で(1)式を用いて展開し,

$${\mathrm{Tr}}(T^aT^b)=\frac{1}{2}\delta^{ab}\tag{6}$$

を用いると(4)式を得ることができる.

さらに(4)式を次のように変形しよう.

$$(-if^{abd})(-if^{cde})-(-if^{cbd})(-if^{ade})=if^{acd}(-if^{dbe})\tag{7}$$

さらに(3)式を用いて変形すると

$$(T_A^a)^{bd}(T_A^c)^{de}-(T_A^c)^{bd}(T_A^a)^{de}=if^{acd}(T_A^d)^{be}\tag{8}$$

となり,随伴表現がちゃんと表現を成していることがわかる.

表現を特徴づける二つの便利な数 index \(T(R)\)と quadratic Casimir \(C(R)\) を導入しよう. index は

$${\mathrm{Tr}}(T_R^aT_R^b)=T(R)\delta^{ab}\tag{9}$$

で定義される.

さらに problem 69.2 より行列\(T_R^aT_R^a\)はすべての生成子と交換する.シューアの補題を用いるとこれは単位行列の定数倍になる.この値を quadratic Casimir \(C(R)\)と定義する.この定義で

$$T(R)D(A)=C(R)D(R)\tag{10}$$

を満たすことが簡単にわかる.

慣習的に使う生成子を用いると\(SU(N)\)の基本表現では\(T(N)=\frac{1}{2}\),\(SO(N)\)の基本表現では\(T(N)=2\)である.さらに problem 70.2 において\(SU(N)\)の随伴表現では\(T(A)=N\),problem 70.3 において\(SO(N)\)の随伴表現では\(T(A)=2N-4\)であることを示す.

さらに各\(a\)に対して,\(T_R^a\)が同じ不変部分空間を持つとき,その表現は可約という.(これはユニタリ変換\(T_R^a\to U^{-1}T_R^aU\)で同じ形にブロック対角化できるともいえる.)可約でないとき既約という.例えば,可約表現\(R\)が二つの既約表現\(R_1,R_2\)の直和\(R=R_1\oplus R_2\)でかけている場合を考えよう.このとき

\begin{align} D(R_1\oplus R_2)&=D(R_1)+D(R_2),\tag{11}\\ T(R_1\oplus R_2)&=T(R_1)+T(R_2)\tag{12}\end{align}

が成り立つ.

二つの群の表現の添字を持つ場\(\varphi_{iI}(X)\)を考えよう.ここで,\(i\)は表現\(R_1\),\(I\)は表現\(R_2\)に対応した添字である.この場は直積表現\(R_1\oplus R_2\)で変換する.この表現の生成子行列は

$$(T_{R_1\otimes R_2}^a)_{iI,jJ}=(T_{R_1}^a)_{ij}\delta_{IJ}+\delta_{ij}(T_{R_2}^a)_{IJ}\tag{13}$$

である.ここで,\(i,I\)は列添字で\(j,J\)は行添字である.

\begin{align} D(R_1\otimes R_2)&=D(R_1)D(R_2)\tag{14}\\ T(R_1\otimes R_2)&= T(R_1)D(R_2)+D(R_1)T(R_2)\tag{15}\end{align}

(15)式を得るために生成子行列がトレースレスであることを用いた:\((T_R^a)_{ii}=0\)

複素表現の添字として次のようなものを考えよう.

複素表現\(R\)の場\(\varphi\)を考える.この場は下付き添字を用いて,\(\varphi_i\ (i=1,2,\dots,D(R))\)で表す.エルミート共役により,\(R\)は\(\overline{R}\)に変わるが,このときは上付き添字を用いることにする.

$$(\varphi_i)^{\dagger}=\varphi^{\dagger i}\tag{16}$$

つまり,下付き添字は表現\(R\)に対応し,上付き添字は表現\(\overline{R}\)に対応する.そして,上付き添字と下付き添字で縮約を取る.\(R\)の生成子行列は最初の添字を下付きで,二つ目の添字を上付きで書くことにする:\((T_R^a)_i^{\ \ j}\).そして,\(\varphi_i\)の微小変換は

\begin{align} \varphi_i&\to (1-i\theta^aT_R^a)_i^{\ \ j}\varphi_j\\ &=\varphi_i-i\theta^a(T_R^a)_i^{\ \ j}\varphi_j\tag{17}\end{align}

である.\(\overline{R}\)の生成子行列は

$$(T^a_{\overline{R}})^i_{\ \ j}=-(T_R^a)_j^{\ \ i}\tag{18}$$

である.ここで,生成子行列はエルミートだから複素共役とマイナス転置を置き換えた.

さらに\(\varphi^{\dagger i}\)の微小変換は

\begin{align} \varphi^{\dagger i}&\to (1-i\theta^aT_{\overline{R}}^a)^i_{\ \ j}\varphi^{\dagger j}\\ &=\varphi^{\dagger i}-i\theta^a(T_{\overline{R}}^a)^i_{\ \ j}\varphi^{\dagger}\\ &= \varphi^{\dagger i}+i\theta^a(T_R^a)_j^{\ \ i}\varphi^{\dagger j}\tag{19}\end{align}

のように変換する.最終行で(18)を用いた.(17)と(19)式を用いると\(\varphi^{\dagger i}\varphi_i\)は不変であるとわかる.

上付き添字1つと下付き添字1つのクロネッカーのデルタを考えよう.これは次のように変換する:

\begin{align} \delta_i^{\ \ j}&\to (1+i\theta^aT_R^a)_i^{\ \ k}(1+i\theta^aT_{\overline{R}}^a)^j_{\ \ l}\delta_k^{\ \ l}\\ &=(1+i\theta^aT_R^a)_i^{\ \ k}\delta_k^{\ \ l}(1-i\theta^aT_R^a)_l^{\ \ j}\\ &=\delta_i^{\ \ j}+O(\theta^2)\tag{20}\end{align}

(20)式は\(\delta_i^{\ \ j}\)は群の不変テンソルであることを示している.この\(R\)表現と\(\overline{R}\)表現の添字を一つずつ持つような不変テンソルの存在は\(R\)と\(\overline{R}\)の直積表現の中に singlet 表現 1 (\(T_1^a=0\))があることを示している.つまり,

$$R\otimes \overline{R}=1\oplus \dots\tag{21}$$

ということである.

次に生成子行列\((T_R^a)_i^{\ \ j}\)を考えよう.ここで,\(R\)の添字が1つ,\({\overline{R}}\)の添字が1つと随伴表現\(A\)の添字が1つである.これもまた,不変テンソルである.これを見るために微小変換すると

\begin{align} (T_R^b)_i^{\ \ j}&\to (1-i\theta^aT_R^a)_i^{\ \ k}(1-i\theta^aT_{\overline{R}}^a)^j_{\ \ l}(1-i\theta^aT_A^a)^{bc}(T_R^c)_k^{\ \ l}\\ &=(T_R^b)_i^{\ \ j}-i\theta^a[(T_R^a)_i^{\ \ k}(T_R^b)_k^{\ \ j}+(T_{\overline{R}}^a)^j_{\ \ l}(T_R^b)_i^{\ \ l}+(T_A^a)^{bc}(T_R^c)_i^{\ \ j}]\\ &\hspace{10mm}+O(\theta^2)\tag{22}\end{align}

である.生成子行列が不変テンソルであるためにはこの大括弧の中身は\(0\)であるべきである.さらに(3),(18)式使うと

\begin{align} [\dots]&= (T_R^a)_i^{\ \ k}(T_R^b)_k^{\ \ j}-(T_R^a)_l^{\ \ j}(T_R^b)_i^{\ \ l}-if^{abc}(T_R^c)_i^{\ \ j}\\ &=(T_R^aT_R^b)_i^{\ \ j}-(T_R^bT_R^a)_i^{\ \ j}-if^{abc}(T_R^c)_i^{\ \ j}\\ &=0\tag{23}\end{align}

となる.ここで,最終行では交換関係を用いた.\((T_R^a)_i^{\ \ j}\)が不変テンソルであるという事実より,

$$R\otimes \overline{R}\otimes A=1\oplus \dots\tag{24}$$

である.(24)式の両辺に\(A\)を掛け,\(A\otimes A=1\oplus \dots\)を用いると(21)式と合わせて,

$$R\otimes \overline{R}=1\oplus A\oplus \dots \tag{25}$$

を得る.つまり,ある表現とその複素共役の表現の直積は自明な表現と随伴表現を含むわけである.

具体的には\(SU(N)\)の基本表現\(N\)を考えると

$$N\otimes \overline{N}=1\oplus A\tag{26}$$

となることがわかる.ここで,右辺にこれ以上の表現がないことは次元からわかる.\(D(1)=1\),\(D(N)=D(\overline{N})=N\)である.さらに24章より

$$D(A)=\frac{N(N-1)}{2}\times 2+(N-1)=N^2-1$$

である.よって,(26)式の両辺で次元が一致する.

実表現\(R\)のときを考えよう.この場合は\(\overline{R}=R\)であるから(25)式は

$$R\otimes R=1\oplus A\oplus \dots\tag{27}$$

となる.右辺の singlet は \(R\) 添字を二つ持つ不変テンソルの存在を意味している.それはクロネッカーのデルタ\(\delta_{ij}\)である.不変であることを見るために微小変換を考えると

\begin{align} \delta_{ij}&\to (1-i\theta^aT_R^a)_i^{\ \ k}(1-i\theta^aT_R^a)_j^{\ \ l}\delta_{kl}\\ &=\delta_{ij}-i\theta^a[(T_R^a)_{ij}+(T_R^a)_{ji}]+O(\theta^2)\tag{28}\end{align}

である.ここで大括弧の中身は(18)式から\(0\)になるとわかる.よって,確かに\(\delta_{ij}\)は不変テンソルである.

次に\(SO(N)\)の基本表現\(N\)を考えよう. (生成子がエルミートな反対称行列なので) この表現は実である.そして

$$N\otimes N=1_S\oplus A_A\oplus S_S\tag{29}$$

である.ここで添字\(A,S\)はそれぞれ基本表現の添字について反対称,対称部分を表している.これも次元をみることで確認できる.\(D(1)=1,D(N)=N\)と24章で示した\(D(A)=\frac{1}{2}N(N-1)\)を用いる.さらにトレースレスの対称性は\(D(S)=\frac{1}{2}N(N+1)-1\)の独立成分を持つので,(29)式の右辺で次元は満たされている.

次に擬実表現\(R\)を考えよう.\(R\)の複素共役の表現は\(R\)自身なので(27)式はそのまま成り立つ.しかし,\(\delta_{ij}\)は不変テンソルではない.それは(28)式の大括弧は\(R\)が擬実では\(0\)にならないからである.その代わり,反対称部分に singlet が現れる.つまり,二つの\(R\)添字に対して反対称な不変テンソルが存在する.

今,興味がある例の一つは\(SU(2)\)の基本表現である.一般の\(SU(N)\)では\(N\)個の基本表現の添字を持つ完全反対称なLevi-Civita の\(\epsilon\)が不変テンソルである.これは\(SU(N)\)変換の下で

\begin{align} \epsilon_{i_1\dots i_N}&\to U_{i_1}^{j_1}\dots U_{i_N}^{j_N}\epsilon_{j_1\dots j_N}\\ &=(\det U)\epsilon_{i_1\dots i_N}\tag{30}\end{align}

と変換する.ここで,\(U\)は\(SU(N)\)の元なので\(\det U=1\)である.よって,(30)式より,Levi-Civita symbol は不変テンソルである.同様に考えて,\(N\)個の反基本表現の添字を持つ完全反対称テンソル\(\epsilon^{i_1\dots i_N}\)が存在する.\(SU(2)\)の場合は Levi-Civita symbol は\(\epsilon_{ij}=-\epsilon_{ji}\)であり,

$$2\otimes 2=1_A\oplus 3_S\tag{31}$$

の singlet に対応する.ここで,\(3\)は随伴表現である.

さらに\(\epsilon^{ij},\epsilon_{ij}\)も用いて\(SU(2)\)の添字を上げ下げすることができる.これにより,基本表現\(2\)とその複素共役\(\overline{2}\)に区別はない.つまり,\(2\)表現の場\(\varphi_i\)は\(\varphi^i=\epsilon^{ij}\varphi_j\)により,\(\overline{2}\)の表現に移り変わる.

構造定数\(f^{abc}\)は他の不変テンソルである.それは任意の表現で生成子行列が不変であり,\((T_A^a)^{bc}=-if^{abc}\)と書けることから明らかである.あるいは表現\(R\)の生成子行列が与えられれば

$$T(R)f^{abc}=-i{\mathrm{Tr}}(T_R^a[T_R^b,T_R^c])\tag{32}$$

と書くことができる.ここから,右辺が不変であることから\(f^{abc}\)が不変であることもわかる.

(32)式で交換関係を反交換関係に変えたものを定義しよう.

$$A(R)d^{abc}\equiv \frac{1}{2}{\mathrm{Tr}}(T_R^a\{T_R^b,T_R^c\})\tag{33}$$

この右辺も生成子から作られているので不変であり,トレースのサイクリック性から\(d^{abc}\)は対称である.\(A(R)\)は表現のアノマリー係数と呼ばれる.さらに(18)式を使うと

$$A(\overline{R})=-A(R)\tag{34}$$

が分かる.よって,\(R\)が実もしくは擬実表現のとき,\(A(R)=0\)となる.また,直和と直積表現では

\begin{align} A(R_1\oplus R_2)&=A(R_1)+A(R_2)\tag{35}\\ A(R_1\otimes R_2)&=A(R_1)D(R_2)+D(R_1)A(R_2)\tag{36}\end{align}

が成り立つ.

アノマリー係数をもっとも小さい複素表現での値が1となるように規格化しよう.特に,\(N\le 3\)で\(SU(N)\)の最も小さい複素表現は基本表現であり,\(A(N)=1\)である.また,\(SU(2)\)ではすべての表現が実もしくは擬実なので\(A(R)=0\)である.

69.非可換ゲージ理論

\(N\)個のスカラー場もしくはスピノル場\(\phi_i(x)\)が\(SU(N)\)もしくは\(SO(N)\)対称性

$$\phi_i(x)\to U_{ij}\phi_j(x)\tag{1}$$

の下で不変であるようなラグランジアンを考えよう.ここで,\(U_{ij}\)は\(SU(N)\)を考えている場合は\(N\times N\)のユニタリ行列,\(SO(N)\)の場合は\(N\times N\)の直交行列である.\(U\)は時空点によらないのでグローバル対称性である.

58章で見たように量子電気力学は局所的な\(U(1)\)対称性を持っていた.

$$\phi(x)\to U(x)\phi(x)\tag{2}$$

ここで,\(U(x)=\exp[-ie\Gamma(x)]\)は時空点に依存する\(1\times 1\)のユニタリ行列と思うことができる.\(U(1)\)ゲージ場\(A_{\mu}\)があり,\(\partial_{\mu}\)を共変微分\(D_{\mu}=\partial_{\mu}-ieA_{\mu}\)に変えたら,ラグランジアンは(2)式の対称性を持つ.(2)式の変換の下で共変微分は

$$D_{\mu}\to U(x)D_{\mu}U^{\dagger}(x)\tag{3}$$

と変換する.この定義により,スカラー場の運動項\(-(D_{\mu}\varphi)^{\dagger}D^{\mu}\varphi\)やフェルミオンの運動項\(i\overline{\Psi}\cancel{D}\Psi\)も質量項のように不変である.

(3)のように変換するとゲージ場は

$$A_{\mu}\to U(x)A_{\mu}U^{\dagger}(x)+\frac{i}{e}U(x)\partial_{\mu}U^{\dagger}(x)\tag{4}$$

のように変換する.

\(U(x)=\exp[-ie\Gamma(x)]\)の場合を考えると(4)式は

$$A_{\mu}(x)\to A_{\mu}(x)-\partial_{\mu}\Gamma(x)\tag{5}$$

である.(これは54章ですでに出てきた.)

今,\(U(1)\)ゲージ理論は\(SU(N),SO(N)\)ゲージ理論に簡単に拡張できる.具体的には\(SU(N)\)を考えよう.24章を思い出すと微小な\(SU(N)\)変換は

$$U_{jk}(x)=\delta_{jk}-ig\theta^a(x)(T^a)_{jk}+O(\theta^2)\tag{6}$$

と書ける.ここで,のちの便利のためにカップリングコンスタント\(g\)を入れた.\(j,k\)は\(1\sim N\)を走り,添え字\(a\)は\(1\sim N^2-1\)を走り,生成子行列\(T^a\)はエルミートトレースレスである.(これらの性質は\(U\)の特殊ユニタリ性からすぐにわかる.)生成子行列の交換関係が

$$[T^a,T^b]=if^{abc}T^c\tag{7}$$

となるとする.ここで,実数\(f^{abc}\)は群の構造定数と呼ばれる.\(f^{abc}\)が\(0\)でなければ群は非可換である.

さらに生成子行列が次のように規格化条件を満たすとすることができる.

$${\mathrm{Tr}}{T^aT^b}=\frac{1}{2}\delta^{ab}\tag{8}$$

これはコンパクトリー代数の定義になる.さらにこのとき,構造定数\(f^{abc}\)は完全反対称になる.\(SU(2)\)においては\(T^a=\frac{1}{2}\sigma^a\)とできる.ここで,\(\sigma^a\)はパウリ行列であり,\(f^{abc}=\epsilon^{abc}\)である.

今,\(SU(N)\)ゲージ場\(A_{\mu}(x)\)をエルミートトレースレスの\(N\times N\)行列でゲージ変換の下で

$$A_{\mu}(x)\to U(x)A_{\mu}(x)U^{\dagger}(x)+\frac{i}{g}U(x)\partial_{\mu}U^{\dagger}(x)\tag{9}$$

と変換するものと定義する.これは(4)式と同じだが,\(U(x)\)は特殊ユニタリ行列で\(A_{\mu}(x)\)がエルミートトレースレスの行列という違いがある.\(U(x)\)は生成子行列を用いて

$$U(x)=\exp[-ig\Gamma^a(x)T^a]\tag{10}$$

と書ける.ここで,\(\Gamma^a(x)\)は実パラメーターであり,微小ではない.

共変微分は

$$D_{\mu}=\partial_{\mu}-igA_{\mu}(x)\tag{11}$$

である.ここで,\(\partial_{\mu}\)は\(N\times N\)の単位行列がかかっている.\(N\)個の場\(\phi_i(x)\)に共変微分は正確には次のように作用する:

$$(D_{\mu}\phi)_j(x)=\partial_{\mu}\phi_j(x)-igA_{\mu}(x)_{jk}\phi_k(x)\tag{12}$$

ここで,\(k\)について和を取っている.大域的な\(SU(N)\)対称性を持つようなラグランジアンにおいて普通の微分を共変微分に置き換えるとラグランジアンは\(SU(N)\)ゲージ対称性を持つ.

次に\(A_{\mu}(x)\)の運動項が必要である.field strength を次のように定義しよう.

\begin{align} F_{\mu\nu}(x)&\equiv \frac{i}{g}[D_{\mu},D_{\nu}]\tag{13}\\ &=\partial_{\mu}A_{\nu}-\partial_{\nu}A_{\mu}-ig[A_{\mu},A_{\nu}]\tag{14}\end{align}

\(A_{\mu}\)は行列になったので,(14)式の最終項は消えない.(13)式の定義と(3)式の変換性より,field strengthは

$$F_{\mu\nu}(x)\to U(x)F_{\mu\nu}(x)U^{\dagger}(x)\tag{15}$$

のように変換する.

したがって,

$${\mathcal{L}}_{\mathrm{kin}}=-\frac{1}{2}{\mathrm{Tr}}(F^{\mu\nu}F_{\mu\nu})\tag{16}$$

はゲージ不変になる.(トレースの性質で回転させることで\(U(x)\)を消去できる.)これが\(SU(N)\)ゲージ場の運動項になる.(\(U(1)\)のときとは違い field strength 自身はゲージ不変ではないことに注意しよう.)

\(A_{\mu}(x)\)はエルミートトレースレスなので生成子行列で展開できる:

$$A_{\mu}(x)=A_{\mu}^a(x)T^a\tag{17}$$

そして,(8)式を使って係数を取り出すと

$$A_{\mu}^a(x)=2{\mathrm{Tr}}\ A_{\mu}(x)T^a\tag{18}$$

となる.同様に field strength も展開し,係数を取り出す:

\begin{align} F_{\mu\nu}(x)&=F_{\mu\nu}^aT^a\tag{19}\\ F_{\mu\nu}^a(x)&=2{\mathrm{Tr}}\ F_{\mu\nu}T^a\tag{20}\end{align}

(14)式で(17),(19)式を用いると

\begin{align} F_{\mu\nu}^cT^c&=(\partial_{\mu}A_{\nu}^c-\partial_{\nu}A_{\mu}^c)T^c-igA_{\mu}^aA_{\nu}^b[T^a,T^b]\\ &=(\partial_{\mu}A_{\nu}^c-\partial_{\nu}A_{\mu}^c+gf^{abc}A_{\mu}^aA_{\nu}^b)T^c\tag{21}\end{align}

となる.よって,(8)式を用いると係数を取り出せるので,

$$F_{\mu\nu}^c=\partial_{\mu}A_{\nu}^c-\partial_{\nu}A_{\mu}^c+gf^{abc}A_{\mu}^aA_{\nu}^b\tag{22}$$

の関係式を得る.また,(19)式を(16)式に代入すると

\begin{align} {\mathcal{L}}_{{\mathrm{kin}}}&=-\frac{1}{2}{\mathrm{Tr}}(F_{\mu\nu}^aF^{c\mu\nu}T^aT^c)\\ &=-\frac{1}{2}(F_{\mu\nu}^aF^{c\mu\nu }\frac{\delta^{ac}}{2})\\ &=-\frac{1}{4}F^{c\mu\nu}F^c_{\mu\nu}\tag{23}\end{align}

となる.(22)式から\({\mathcal{L}}_{{\mathrm{kin}}}\)はゲージ場の相互作用を含んでいるとわかる.このような\(f^{abc}\)が\(0\)でないような理論を非可換ゲージ理論もしくは,Yang-Mills 理論という.

\(SO(N)\)については\(SU(N)\)からユニタリ性を直交性に変え,トレースレスを反対称に変えればよい.また,コンパクト非可換ゲージ理論の他のクラスとして\(Sp(2N)\)がある.他には5つのコンパクトな例外群として,\(G(2),F(4),E(6),E(7),E(8)\)などがある.ここで,コンパクトとは\({\mathrm{Tr}}(T^aT^b)\)の固有値がすべて正であることをいう.非可換ゲージ理論ではコンパクト群を考える.

特殊な例として,quantum chromodynamics (略して QCD )を考えよう.この理論では\(SU(3)\)対称性を持つ.いくつかのDirac 場はクォークに対応しており,各クォークは三つのカラーを持っている.(このカラーが\(SU(3)\)の添字に対応している.もちろん,本当にクォークに色がついているわけではない.)また,6つのフレーバーがあり,up, down, strange, charm, bottom (or beauty), top (or truth) と名前がついている.したがって, Dirac 場\(\Psi_{iI}\)において,\(i\)はカラー添字,\(I\)はフレーバー添字を表している.そのラグランジアンは

$${\mathcal{L}}=i\overline{\Psi}_{iI}\cacel{D}_{ij}\Psi_{jI}-m_I\overline{\Psi}_I\Psi_I-\frac{1}{2}{\mathrm{Tr}}(F^{\mu\nu}F_{\mu\nu})\tag{24}$$

である.ここで,すべての添字について和を取る.異なるフレーバーのクォークは異なる質量を持つ.up や down クォークは数 \(MeV\) 程度であり,top クォークは\(178GeV\)もある.また,\(u,c,t\)クォークは電荷\(+\frac{2}{3}|e|\),\(d,s,b\)クォークは電荷\(-\frac{1}{3}|e|\)を持つ.ここで,電磁場の適切なカップリングを省略している.(24)式で共変微分は

$$(D_{\mu})_{ij}=\delta_{ij}\partial_{\mu}-igA_{\mu}^aT_{ij}^a\tag{25}$$

である.ここで,\(a\)は\(1\sim 8\)を走り,\(A_{\mu}^a\)は質量\(0\)のスピン\(1\)の粒子グルーオンを表している.

一般の非可換ゲージ理論ではスカラー場やスピノル場で群の異なる表現を考えるかもしれない.コンパクトな非可換ゲージ群の表現とは有限次元エルミート行列\(T_R^a\)の集合のことをいう.ここで,\(R\)は表現の名前を表す部分で添字ではない.また,これらは表現によらず,生成子行列\(T^a\)と同じ交換関係を持つ.例えば,\(D(R)\times D(R)\)行列の表現であれば,\(\phi(x)\)は\(D(R)\)個の成分を持ち,共変微分\(D_{\mu}=\partial_{\mu}-igA_{\mu}^aT_R^a\)は\(D(R)\times D(R)\)行列を意味する.ゲージ変換では,\(\phi(x)\to U_R(x)\phi(x)\)のように変換する.ここで,\(U_R(x)\)は(10)式の\(T^a\)を\(T^a_R\)に置き換えたものである.表現とは独立に(9)式のように変換すれば理論はゲージ不変になる.(problem 69.1)

表現論について多くを知る必要はないが次章で役に立つ事実を述べることにする.

57.フォトンの経路積分

この章ではフォトンの経路積分をより理解するために8章と同様に直接計算しよう.まず,分配関数

\begin{align} Z_0(J)&=\int {\mathcal{D}}A\ e^{iS_0}\tag{1}\\ S_0&=\int d^4x\left[-\frac{1}{4}F^{\mu\nu}F_{\mu\nu}+J^{\mu}A_{\mu}\right]\tag{2}\end{align}

から始めよう.8章と同様にフーリエ変換して運動量空間に持っていくと

\begin{align} S_0&=\frac{1}{2}\int \frac{d^4k}{(2\pi)^4}\left[ -\tilde{A}_{\mu}(k) \left(k^2g^{\mu\nu}-k^{\mu}k^{\nu}\right)\tilde{A}_{\nu}(-k)\right. \\ &\hspace{30mm}+\left.\tilde{J}^{\mu}(k)\tilde{A}_{\mu}(-k)+\tilde{J}^{\mu}(-k)\tilde{A}_{\mu}(k)\right]\tag{3}\end{align}

となる.次に平方完成するために\(\tilde{A}\)をshiftしよう.これには\(4\times4\)行列\(k^2g^{\mu\nu}-k^{\mu}k^{\nu}\)の逆行列が関係する.しかし,この行列は0固有値を持つので逆行列を持たない.そこでトリックを使うことになる.

まず,この問題点を見るために

$$k^2g^{\mu\nu}-k^{\mu}k^{\nu}=k^2P^{\mu\nu}(k)\tag{4}$$

とおこう.ここで,

$$P^{\mu\nu}(k)\equiv g^{\mu\nu}-\frac{k^{\mu}k^{\nu}}{k^2}\tag{5}$$

と定義したわけである.これが射影演算子であることを簡単に確かめられる:

\begin{align} P^{\mu\nu}(K)P_{\nu}^{\ \ \lambda}(k)=P^{\mu\lambda}(k)\tag{6}\end{align}

よって,\(P\)の固有値として0と1のみが許可される.そして最低でも1つは0固有値を持つことは

$$P^{\mu\nu}(k)k_{\nu}=0\tag{7}$$

よりわかる.一方で固有値の和はトレースにより与えられ,

$$g_{\mu\nu}P^{\mu\nu}(k)=3\tag{8}$$

である.よって,残った3つの固有値はすべて1である.

(3)式で与えられた\(S_0\)を用いて(1)式の経路積分を実行することを考えよう.そのために\(\tilde {A}_{\mu}(k)\)を線形独立な4つのベクトルに分解し,その1つを\(k^{\mu}\)に選ぶ.まず,\(\tilde{A}_{\mu}(k)\)の二次の項に注目すると(7)式より,\(k_{\mu}\)の方向は寄与しないことがわかる.また,\(\tilde{A}_{\mu}(k)\)の線形項も\(\partial^{\mu}J_{\mu}(x)=0\)は\(k^{\mu}\tilde{J}_{\mu}=0\)を意味することから寄与しないことがわかる.つまり,\(\tilde{A}_{\mu}(k)\)の\(k^{\mu}\)方向の部分は\(S_0\)には一切寄与しないことがわかる.よって,\(\int {\mathcal{D}}A\)を\(k^{\mu}\)以外の三方向にのみ積分すると定義しよう.そんなことをしてよいのかと思うかもしれないがこれはローレンツゲージ\(\partial ^{\mu}A_{\mu}(x)=0\)を課すことと同じことである.

結局,射影演算子\(P^{\mu\nu}(k)\)は\(k^{\mu}\)の直交補空間への射影演算子であった.つまり,この直交補空間上では恒等演算子であり,この部分空間上では\(k^2P^{\mu\nu}(k)\)の逆行列は\((1/k^2)P^{\mu\nu}(k)\)である.そして,真空境界条件として\(k^2\)を\(k^2-i\epsilon\)に置き換える\(\epsilon\)トリックを採用しよう.

全く同じなので計算は省くが8章と同じように計算すると結果として次の表式を得る.

\begin{align} Z_0(J)&=\exp \left[\frac{i}{2}\int \frac{d^4k}{(2\pi)^4}\tilde{J}_{\mu}(k)\frac{P^{\mu\nu}(k)}{k^2-i\epsilon}\tilde{J}_{\nu}(-k)\right]\\ &=\exp \left[\frac{i}{2}\int d^4xd^4y \ J_{\mu}(x)\Delta ^{\mu\nu}(x-y)J_{\nu}(y)\right]\tag{9}\end{align}

ここで,

$$\Delta ^{\mu\nu}(x-y)=\int \frac{d^4k}{(2\pi)^4}e^{ik(x-y)}\frac{P^{\mu\nu}(k)}{k^2-i\epsilon}\tag{10}$$

はローレンツゲージでのフォトンのプロパゲーターである.もちろん,カレントは保存するから\(P^{\mu\nu}(k)\)の中の\(k^{\mu}k^{\nu}\)は寄与せず,ファインマンゲージと同じ結果を与える.

35.スピノル添字の操作

34章で不変テンソル\(\epsilon_{ab},\epsilon^{ab},\epsilon_{\dot{a}\dot{b}},\epsilon^{\dot{a}\dot{b}}\)を次のように定義した.

$$\epsilon^{12}=\epsilon^{\dot{1}\dot{2}}=\epsilon_{21}=\epsilon_{\dot{2}\dot{1}}=+1,\ \ \epsilon^{21}=\epsilon^{\dot{2}\dot{1}}=\epsilon_{12}=\epsilon_{\dot{1}\dot{2}}=-1\tag{1}$$

これらはスピノル添字の上げ下げに用いる.(\(\epsilon\)の後ろの添字で縮約を取るとマイナス符号が生じる.)

他の不変テンソルとして

$$\sigma_{a\dot{a}}^{\mu}=(I,\vec{\sigma})\tag{2}$$

がある.ここで,\(I\)は\(2\times 2\)の単位行列で

$$\sigma_1=\left(\begin{array}{cc} 0&1\\ 1&0\end{array}\right),\ \sigma_2=\left(\begin{array}{cc} 0&-i\\ i&0\end{array}\right),\ \sigma_3=\left(\begin{array}{cc} 1&0\\ 0&-1\end{array}\right)\tag{3}$$

はパウリ行列である.

次に,\(g_{\mu\nu}\sigma_{a\dot{a}}^{\mu}\sigma_{b\dot{b}}^{\nu}\)のような不変テンソルの縮約でできたものについて考えよう.これも明らかに不変テンソルである.そして,2つのドットなし添字と2つのドット付き添字を持つので\(\epsilon_{ab}\epsilon_{\dot{a}\dot{b}}\)に比例しているはずである.比例定数がいくつかは面倒だが簡単な計算により,-2になるとわかる:

$$\sigma_{a\dot{a}}^{\mu}\sigma_{\mu b\dot{b}}=-2\epsilon_{ab}\epsilon_{\dot{a}\dot{b}}\tag{4}$$

同様の議論で\(\epsilon^{ab}\epsilon^{\dot{a}\dot{b}}\sigma_{a\dot{a}}^{\mu}\sigma_{b\dot{b}}^{\nu}\)は\(g^{\mu\nu}\)に比例しているはずであり,その比例定数も-2となる:

$$\epsilon^{ab}\epsilon^{\dot{a}\dot{b}}\sigma_{a\dot{a}}^{\mu}\sigma_{b\dot{b}}^{\nu}=-2g^{\mu\nu}\tag{5}$$

次に\(\epsilon_{ab},\epsilon_{\dot{a}\dot{b}},\sigma_{a\dot{a}}^{\mu}\)がすべて不変テンソルであることから生成子\((S_L^{\mu\nu})_a^{\ \ b},(S_R^{\mu\nu})_{\dot{a}}^{\ \ \dot{b}}\)についてわかることを見ていこう.

始めに\(\epsilon_{ab}\)は不変テンソルだから

$$\epsilon_{ab}=L(\Lambda)_a^{\ \ c}L(\Lambda)_b^{\ \ d}\epsilon_{cd}\tag{6}$$

が成り立つ.微小変換\(\Lambda^{\mu}_{\ \ \nu}=\delta^{\mu}_{\ \ \nu}+\delta\omega^{\mu}_{\ \ \nu}\)に対し,

$$L_a^{\ \ b}(1+\delta\omega)=\delta_a^{\ \ b}+\frac{i}
{2}\delta\omega_{\mu\nu}(S_L^{\mu\nu})_a^{\ \ b}\tag{7}$$

であったからこれを(6)式に代入すると

\begin{align} \epsilon_{ab}&=\epsilon_{ab}+\frac{i}{2}\delta\omega_{\mu\nu}\left[(S_L^{\mu\nu})_a^{\ \ c}\epsilon_{cb}+(S_L^{\mu\nu})_b^{\ \ d}\epsilon_{ad}\right]+O(\delta\omega^2)\\ &=\epsilon_{ab}+\frac{i}{2}\delta\omega_{\mu\nu}\left[ -(S_L^{\mu\nu})_{ab}+(S_L^{\mu\nu})_{ba}\right]+O(\delta\omega^2)\tag{8}\end{align}

となる.ここで,\(\delta\omega\)は任意であったから係数部分の大括弧は\(0\)となる.つまり,\((S_L^{\mu\nu})_{ab}=(S_L^{\mu\nu})_{ba}\)であるがこれは34章で違う方法で導かれている.また,\(\epsilon_{\dot{a}\dot{b}}\)が不変テンソルであることから同じ議論をすることで\((S_R^{\mu\nu})_{\dot{a}\dot{b}}=(S_L^{\mu\nu})_{\dot{b}\dot{a}}\)が導ける.

次に,\(\sigma_{a\dot{a}}^{\rho}\)が不変テンソルであることから

$$\sigma_{a\dot{a}}^{\rho}=\Lambda^{\rho}_{\ \ \tau}L(\Lambda)_a^{\ \ b}R(\Lambda)_{\dot{a}}^{\ \ \dot{b}}\sigma_{b\dot{b}}^{\tau}\tag{9}$$

である.微小変換を考えると

\begin{align} \Lambda^{\rho}_{\ \ \tau}&=\delta^{\rho}_{\ \ \tau}+\frac{i}{2}\delta\omega_{\mu\nu}(S_V^{\mu\nu})^{\rho}_{\ \ \tau},\tag{10}\\
L_a^{\ \ b}(1+\delta\omega)&=\delta^{\ \ b}_{a}+\frac{i}{2}\delta\omega_{\mu\nu}(S_L^{\mu\nu})^{\ \ b}_{a},\tag{11}\\
R_{\dot{a}}^{\ \ \dot{b}}(1+\delta\omega)&=\delta^{\ \ \dot{b}}_{\dot{a}}+\frac{i}{2}\delta\omega_{\mu\nu}(S_R^{\mu\nu})^{\ \ \dot{b}}_{\dot{a}},\tag{12}\end{align}

である.ここで,

$$(S_V^{\mu\nu})^{\rho}_{\ \ \tau}\equiv \frac{1}{i}(g^{\mu\rho}\delta^{\nu}_{\ \ \tau}-g^{\nu\rho}\delta^{\mu}_{\ \ \tau})\tag{13}$$

である.(10-13)式を(9)式に代入して \(\delta\omega_{\mu\nu}\)の係数が\(0\)であることから

$$(g^{\mu\rho}\delta^{\nu}_{\ \ \tau}-g^{\nu\rho}\delta^{\mu}_{\ \ \tau})\sigma_{a\dot{a}}^{\tau}+i(S_L^{\mu\nu})_a^{\ \ b}\sigma_{b\dot{a}}^{\rho}+i(S_R^{\mu\nu})_{\dot{a}}^{\ \ \dot{b}}\sigma_{a\dot{b}}^{\rho}=0\tag{14}$$

である.さらに\(\sigma_{\rho c\dot{c}}\)を両辺掛けて

$$\sigma_{c\dot{c}}^{\mu}\sigma_{a\dot{a}}^{\nu}-\sigma_{c\dot{c}}^{\nu}\sigma_{a\dot{a}}^{\mu}+i(S_L^{\mu\nu})_a^{\ \ b}\sigma_{b\dot{a}}^{\rho}\sigma_{\rho c\dot{c}}+i(S_R^{\mu\nu})_{\dot{a}}^{\ \ \dot{b}}\sigma_{a\dot{b}}^{\rho}\sigma_{\rho c\dot{c}}=0\tag{15}$$

である.後ろ2項で(4)式を用いると

$$\sigma_{c\dot{c}}^{\mu}\sigma_{a\dot{a}}^{\nu}-\sigma_{c\dot{c}}^{\nu}\sigma_{a\dot{a}}^{\mu}+2i(S_L^{\mu\nu})_{ac}\epsilon_{\dot{a}\dot{c}}+2i(S_R^{\mu\nu})_{\dot{a}\dot{c}}\epsilon_{ac}=0\tag{16}$$

さらに(16)式に\(\epsilon^{\dot{a}\dot{c}}\)を掛けて和を取ると

$$(S_L^{\mu\nu})_{ac}=\frac{i}{4}\epsilon^{\dot{a}\dot{c}}(\sigma_{a\dot{a}}^{\mu}\sigma_{c\dot{c}}^{\nu}-\sigma_{a\dot{a}}^{\nu})\sigma_{c\dot{c}}^{\mu}\tag{17}$$

となる.ここで,\(\epsilon^{\dot{a}\dot{c}}(S_R^{\mu\nu})_{\dot{a}\dot{c}}=0,\epsilon^{\dot{a}\dot{c}}\epsilon_{\dot{a}\dot{c}}=-2\)を用いた.

同じように(16)式に\(\epsilon^{ac}\)を掛けて和を取ると

$$(S_R^{\mu\nu})_{\dot{a}\dot{c}}=\frac{i}{4}\epsilon^{ac}(\sigma_{a\dot{a}}^{\mu}\sigma_{c\dot{c}}^{\nu}-\sigma_{a\dot{a}}^{\nu}\sigma_{c\dot{c}}^{\mu})\tag{18}$$

となる.さらに

$$\overline{\sigma}^{\mu\dot{a}a}\equiv \epsilon^{ab}\epsilon^{\dot{a}\dot{b}}\sigma_{b\dot{b}}^{\mu}\tag{19}$$

と置くことでこれらの公式はエレガントに書ける.計算すると(19)式は

$$\overline{\sigma}^{\mu\dot{a}a}=(I,-\vec{\sigma})\tag{20}$$

である.この\(\overline{\sigma}^{\mu}\)を用いると(17-18)式は

\begin{align} (S_L^{\mu\nu})_a^{\ \ b}&=+\frac{i}{4}(\sigma^{\mu}\overline{\sigma}^{\nu}-\sigma^{\nu}\overline{\sigma}^{\mu})_a^{\ \ b},\tag{21}\\ (S_R^{\mu\nu})^{\dot{a}}_{\ \ \dot{b}}&=-\frac{i}{4}(\overline{\sigma}^{\mu}\sigma^{\nu}-\overline{\sigma}^{\nu}\sigma^{\mu})^{\dot{a}}_{\ \ \dot{b}}\tag{22}\end{align}

と書ける.ここで,(22)式ではドットなしの添字を\(^c_{\ \ c}\)と縮約,(21)式ではドット付きの添字が\(_{\dot{c}}^{\ \ \dot{c}}\)で縮約していることが省略されている.

この表記を拡張して縮約を取っているスピノル添字は省略することを考えよう.つまり,縮約したドットなしの添字を省略する場合は\(^c_{\ \ c}\)の形,縮約したドット付きの添字を省略する場合は\(_{\dot{c}}^{\ \ \dot{c}}\)の形であると約束しよう.したがって,\(\chi\)と\(\psi\)が左手型のWeyl場のとき

$$\chi\psi=\chi^a\psi_a,\ \ \chi^{\dagger}\psi^{\dagger}=\chi_{\dot{a}}^{\dagger}\psi^{\dagger\dot{a}}\tag{23}$$

と解釈するわけである.

スピン\(\frac{1}{2}\)の粒子を表すWeyl場はフェルミオンであるから反可換である.つまり,

$$\chi_a(x)\psi_b(y)=-\psi_b(y)\chi_a(x)\tag{24}$$

である.したがって,(23)式より

$$\chi\psi=\chi^a\psi_a=-\psi_a\chi^a=\psi^a\chi_a=\psi\chi\tag{25}$$

が成り立つ.よって,\(\chi\psi=\psi\chi\)となり,これはこの表記の良い点である.さらにエルミート共役を取ると

$$(\chi\psi)^{\dagger}=(\chi^a\psi_a)^{\dagger}=(\psi_a)^{\dagger}(\chi^a)^{\dagger}=\psi_{\dot{a}}^{\dagger}\chi^{\dagger\dot{a}}=\psi^{\dagger}\chi^{\dagger}\tag{26}$$

である.つまり,添字を気にせず,\((\chi\psi)^{\dagger}=\psi^{\dagger}\chi^{\dagger}\)と計算してよいわけである.もちろん,(25)式と同様に考えることで\(\psi^{\dagger}\chi^{\dagger}=\chi^{\dagger}\psi^{\dagger}\)とわかる.

添字を省略すると場が左手型なのか右手型なのかわからなくなってしまう.そこで,右手型の場はつねに左手型の場のエルミート共役として表すことにする.つまり,ダガーのあるなしで左手型なのか右手型なのか区別するわけである.

例えば

$$\psi^{\dagger}\overline{\sigma}^{\mu}\chi=\psi_{\dot{a}}^{\dagger}\overline{\sigma}^{\mu \dot{a}c}\chi_c\tag{27}$$

である.あらわにはベクトル添字しか書かないわけであるがローレンツ変換でもベクトルのように変換する.

$$U(\Lambda)^{-1}[\psi^{\dagger}\overline{\sigma}^{\mu}\chi]U(\Lambda)=\Lambda^{\mu}_{\ \ \nu}[\psi^{\dagger}\overline{\sigma}^{\nu}\chi]\tag{28}$$

(27)式でエルミート共役を取ると

\begin{align} [\psi^{\dagger}\overline{\sigma}^{\mu}\chi]^{\dagger}&=[\psi_{\dot{a}}^{\dagger}\overline{\sigma}^{\mu \dot{a}c}\chi_c]^{\dagger}\\ &=\chi_{\dot{c}}^{\dagger}(\overline{\sigma}^{\mu a\dot{c}})^*\psi_a\\ &=\chi_{\dot{c}}^{\dagger}\overline{\sigma}^{\mu \dot{c}a}\psi_a\\ &=\chi^{\dagger}\overline{\sigma}^{\mu}\psi\tag{29}\end{align}

ここで,\(\overline{\sigma}^{\mu}=(I,-\vec{\sigma})\)より,\((\overline{\sigma}^{\mu a\dot{c}})^*=\overline{\sigma}^{\mu \dot{c}a}\)を用いた.

次の章以降でこの表記に慣れていこう.

34.左,右手型スピノル場

Lorentz 群に対して(2,1)表現で作用する左手型スピノル\(\varphi_a(x)\)(Weyl場とも呼ばれる)について考える.ここで,添字\(a\)は左手型スピノルの添字であり,\(2\times1=2\)個の値を持つ.\((2,1)\)表現で作用するとはローレンツ変換の下で\((2,1)\)表現の行列\(L_a^{\ \ b}(\Lambda)\)を用いて

$$U(\Lambda)^{-1}\varphi_a(x)U(\Lambda)=L_a^{\ \ b}(\Lambda)\varphi_b(\Lambda^{-1}x)\tag{1}$$

と変換するということである.もちろん,群の表現なので

$$L_a^{\ \ b}(\Lambda^{\prime})L_b^{\ \ c}(\Lambda)=L_a^{\ \ c}(\Lambda^{\prime}\Lambda)\tag{2}$$

を満たす.微小変換\(\Lambda^{\mu}_{\ \ \nu}=\delta^{\mu}_{\ \ \nu}+\delta\omega^{\mu}_{\ \ \nu}\)においては

$$L_a^{\ \ b}(1+\delta\omega)=\delta_a^{\ \ b}+\frac{i}{2}\delta\omega_{\mu\nu}(S_L^{\mu\nu})_a^{\ \ b}\tag{3}$$

と書くことができる.ここで\(\omega_{\mu\nu}\)の添字の反対称性より,\((S_L^{\mu\nu})_a^{\ \ b}\)は\(\mu\nu\)添字に対して反対称の\(2\times2\)行列である.また,33章で述べたように\(S_L^{\mu\nu}\)は\(M^{\mu\nu}\)と同じ交換関係

$$[S_L^{\mu\nu},S_L^{\rho\sigma}]=i\left( g^{\mu\rho}S_L^{\nu\sigma}-(\mu\leftrightarrow\nu)\right)-(\rho\leftrightarrow\sigma)\tag{4}$$

を満たす.また,

$$U(1+\delta\omega)=I+\frac{i}{2}\delta\omega_{\mu\nu}M^{\mu\nu}\tag{5}$$

を使うことで(1)式より,

$$[\varphi_a(x),M^{\mu\nu}]={\mathcal{L}}^{\mu\nu}\varphi_a(x)+(S_L^{\mu\nu})_a^{\ \ b}\varphi_b(x)\tag{6}$$

を導くことができる.ここで,\({\mathcal{L}}^{\mu\nu}=\frac{1}{i}(x^{\mu}\partial^{\nu}-x^{\nu}\partial^{\mu})\)である.(6)式の第一項目は今は興味がないので,\(x^{\mu}=0\)として消してしまおう.

ここで,\(M^{ij}=\epsilon^{ijk}J_k\)なので,

$$\epsilon^{ijk}[\varphi_a(0),J_k]=(S_L^{ij})_a^{\ \ b}\varphi_b(0)\tag{7}$$

となる.

ローレンツ群の(2,1)表現はスピン\(\frac{1}{2}\)のみであった.スピン\(\frac{1}{2}\)のときは慣習的にパウリ行列を使うことになっている.つまり,(7)の右辺を\(\frac{1}{2}\epsilon^{ijk}\sigma_k\)とするわけである.ここで,\(\sigma_k\)はパウリ行列である:

$$
\sigma_1 = \left( \begin{array}{cc} 0 & 1 \\ 1 & 0 \end{array} \right) ,
\sigma_2 = \left( \begin{array}{cc} 0 & -i \\ i & 0 \end{array} \right)
\sigma_3 = \left( \begin{array}{cc} 1 & 0 \\ 0 & -1 \end{array} \right) \tag{8}$$

したがって,

$$(S_L^{ij})_a^{\ \ b}=\frac{1}{2}\epsilon^{ijk}\sigma_k\tag{9}$$

と結論づける.

角運動量演算子\(J_i\)の(2,1)表現を得てしまえばブースト演算子\(K_k=M^{k0}\)の表現も簡単にわかる.\(J_k=N_k+N_k^{\dagger}\)と\(K_k=i(N_k-N_k^{\dagger})\)に対して,\((2,1)\)表現を考えているので\(N_k^{\dagger}=0\)である.よって,\(K_k=iJ_k\)であり,

$$(S_L^{k0})_a^{\ \ b}=\frac{1}{2}i\sigma_k\tag{10}$$

となる.

左手型スピノル場\(\varphi_a(x)\)のエルミート共役がどうなるか考えてみよう.エルミート共役により,ローレンツ群のリー代数に含まれる2つの\(SU(2)\)のリー代数は交換したことを思い出そう.すると,(2,1)表現の場のエルミート共役は(1,2)表現となる右手型スピノル場(右手型Weyl場)になる.(1,2)表現の添え字は(2,1)表現と区別するためにドットをつけることにする.したがって,

$$[\varphi_a(x)]^{\dagger}=\varphi_{\dot{a}}^{\dagger}(x)\tag{11}$$

この場はローレンツ変換の下で

$$U(\Lambda)^{-1}\psi_{\dot{a}}^{\dagger}(x)U(\Lambda)=R_{\dot{a}}^{\ \ \dot{b}}(\Lambda)\psi_{\dot{b}}^{\dagger}(\Lambda^{-1}x)\tag{12}$$

のように変換する.ここで,\(R_{\dot{a}}^{\ \ \dot{b}}(\Lambda)\)は(1,2)表現の行列である.これらは表現であるから

$$R_{\dot{a}}^{\ \ \dot{b}}(\Lambda^{\prime})R_{\dot{b}}^{\ \ \dot{c}}(\Lambda)=R_{\dot{a}}^{\ \ \dot{c}}(\Lambda^{\prime}\Lambda)\tag{13}$$

を満たす.微小変換\(\Lambda^{\mu}_{\ \ \nu}=\delta^{\mu}_{\ \ \nu}+\delta\omega^{\mu}_{\ \ \nu}\)を考えると

$$R_{\dot{a}}^{\ \ \dot{b}}(1+\delta\omega)=\delta_{\dot{a}}^{\ \ \dot{b}}+\frac{i}{2}\delta\omega_{\mu\nu}(S_R^{\mu\nu})_{\dot{a}}^{\ \ \dot{b}}\tag{14}$$

と書ける.ここで,\((S_R^{\mu\nu})_{\dot{a}}^{\ \ \dot{b}}=-(S_R^{\nu\mu})_{\dot{a}}^{\ \ \dot{b}}\)は\(M^{\mu\nu}\)と同じ交換関係を満たす\(2\times 2\)行列である.(7)式と同様に考えることで

$$[\psi_{\dot{a}}^{\dagger}(0),M^{\mu\nu}]=(S_R^{\mu\nu})_{\dot{a}}^{\ \ \dot{b}}\psi_{\dot{b}}^{\dagger}(0)\tag{15}$$

である.さらにエルミート共役を取ることで,

$$[M^{\mu\nu},\psi_a(0)]=[(S_R^{\mu\nu})_{\dot{a}}^{\ \ \dot{b}}]^*\psi_b(0)\tag{16}$$

である.(6)式と比較することで

$$(S_R^{\mu\nu})_{\dot{a}}^{\ \ \dot{b}}=-[(S_L^{\mu\nu})_a^{\ \ b}]^*\tag{17}$$

前の章で二つのベクトル添え字を持つ場でのローレンツ変換を調べた.同じことを2つの(2,1)表現の添え字を持つ場で考えてみよう.そのような場を\(C_{ab}(x)\)と置くと,ローレンツ変換により,

$$U(\Lambda)^{-1}C_{ab}(x)U(\Lambda)=L_a^{\ \ c}(\Lambda)L_b^{\ \ d}(\Lambda)C_{cd}(\Lambda^{-1}x)\tag{18}$$

と変換する.興味があるのは\(C_{ab}\)の4成分がローレンツ変換の表現でどうように分類されるかである.

この質問に答えるために量子力学のスピン合成を思い出そう.スピン\(\frac{1}{2}\)同士の合成では一つのスピン0の反対称な状態と,三つのスピン1の対称な状態があった.このことを\(SU(2)\)の表現を用いて,

$$2\otimes 2=1_A\oplus 3_S$$

と表す.(2,1,3はそれぞれ成分の数を表す.)AとCはそれぞれ反対称,対称を表す.これを拡張すると

$$(2,1)\otimes (2,1)=(1,1)_A\oplus (3,1)_S$$

である.これは

$$C_{ab}(x)=\epsilon_{ab}D(x)+G_{ab}(x)\tag{19}$$

と表すべきだと主張している.ここで,\(D(x)\)はスカラー場で,\(\epsilon_{ab}=-\epsilon_{ba}\)は反対称な定数で\(G_{ab}(x)=G_{ba}(x)\)である.\(\epsilon_{ab}\)は一つの定数を定めることですべて定まる.ここでは,\(\epsilon_{21}=-\epsilon_{12}=+1\)とする.

\(D(x)\)はスカラー場なので,(19)式をローレンツ変換したときに対称,反対称は混ざらないことから

$$L_a^{\ \ c}(\Lambda)L_b^{\ \ d}(\Lambda)\epsilon_{cd}=\epsilon_{ab}\tag{20}$$

つまり,\(\epsilon_{ab}\)はローレンツ変換で不変テンソルである.この意味で\(\epsilon_{ab}\)は計量\(g_{\mu\nu}\)の性質

$$\Lambda_{\mu}^{\ \ \rho}\Lambda_{\nu}^{\ \ \sigma}g_{\rho\sigma}=g_{\mu\nu}\tag{21}$$

と類似の性質を持っている.

\(g_{\mu\nu}\)とその逆行列\(g^{\mu\nu}\)を用いてベクトル添え字を上げ下げした.これに類似して,スピノル添え字に対しては\(\epsilon_{ab}\)と逆行列\(\epsilon^{ab}\)を用いて上げ下げをしよう.\(\epsilon^{ab}\)の定義は

$$\epsilon^{12}=\epsilon_{21}=+1,\ \ \epsilon^{21}=\epsilon_{12}=-1\tag{22}$$

であり,

$$\epsilon_{ab}\epsilon^{bc}=\delta_a^{\ \ c},\ \ \epsilon^{ab}\epsilon_{bc}=\delta^a_{\ \ c}\tag{23}$$

を満たす.さらに

$$\psi^a(x)\equiv \epsilon^{ab}\psi_b(x)\tag{24}$$

と定義できる.さらに

$$\psi_a=\epsilon_{ab}\psi^b=\epsilon_{ab}\epsilon^{bc}\psi_c=\delta_a^{\ \ c}\psi_c\tag{25}$$

である.しかし,\(\epsilon^{ab}\)の反対称性からマイナス符号が出ることに注意しよう.

$$\psi^a=\epsilon^{ab}\psi_b=-\epsilon^{ba}\psi_b=-\psi_b\epsilon^{ba}=\psi_b\epsilon^{ab}\tag{26}$$

これにより,縮約した二つの場では

$$\psi^a\chi_a=\epsilon^{ab}\psi_b\chi_a=-\epsilon^{ba}\psi_b\chi_a=-\psi_b\chi^b\tag{27}$$

となる.

35章でこのマイナス符号を無視できるような添え字のない表記を導入する.

(1,2)表現でも同様のことが成り立つ.

$$(1,2)\otimes (1,2)=(1,1)_A\oplus (1,3)_S$$

であることから不変テンソル\(\epsilon_{\dot{a}\dot{b}}=-\epsilon_{\dot{b}\dot{a}}\)の存在がわかる.そして,(22)式と同様に定義された\(\epsilon_{\dot{a}\dot{b}}\)に対して,(23-27)でドットを付けたものがそのまま成り立つ.

次にドットなし添え字とドット付き添え字が1つずつの場\(A_{a\dot{a}}(x)\)を考えよう.この場は表現のテンソル積より,(2,2)表現となる.33章で書いたように(2,2)表現はベクトル表現である.つまり,この場は\(A^{\mu}(x)\)と書いてもよい.\(A_{a\dot{a}}(x)\)と\(A^{\mu}(x)\)の成分同士の関係を

$$A_{a\dot{a}}(x)=\sigma_{a\dot{a}}^{\mu}A_{\mu}(x)\tag{28}$$

と書くことにする.ここで,\(\sigma_{a\dot{a}}^{\mu}\)も不変テンソルである.このような不変テンソルの存在は群の関係式

$$(2,1)\otimes (1,2)\otimes (2,2)=(1,1)\oplus\cdots \tag{29}$$

から推論される.(先ほどと同じように(1,1)の部分を\(\sigma_{a\dot{a}}^{\mu}\)とスカラー場でおくわけである.)

35章で

$$\sigma_{a\dot{a}}^{\mu}=(I,\vec{\sigma})\tag{30}$$

と選んだときの\(S_L^{\mu\nu},S_R^{\mu\nu}\)を構成しよう.

一般には,表現同士の積で(1,1)が生成されるようなときに不変テンソルが存在する.たとえば,ベクトルでの計量\(g_{\mu\nu}=g_{\nu\mu}\)は

$$(2,2)\otimes (2,2)=(1,1)_S\oplus (1,3)_A\oplus(3,1)_A\oplus(3,3)_S\tag{31}$$

から存在が予言できる.他にはレヴィ・チビタ完全反対称テンソル\(\epsilon^{\mu\nu\rho\sigma}\)は

$$(2,2)\otimes (2,2)\otimes (2,2)\otimes (2,2)=(1,1)_A\oplus \cdots \tag{32}$$

の結果から生じる.ここで,Aは反対称からきており,完全反対称であることに由来する.また,\(\epsilon^{0123}=+1\)と定義しておく.\(\epsilon^{\mu\nu\rho\sigma}\)が不変テンソルであることを見るには

$$\Lambda^{\mu}_{\ \ \alpha}\Lambda^{\nu}_{\ \ \beta}\Lambda^{\rho}_{\ \ \gamma}\Lambda^{\sigma}_{\ \ \delta}\epsilon^{\alpha\beta\gamma\delta}=\epsilon^{\mu\nu\gamma\delta}$$

であることを確認すればいい.左辺の完全反対称性は自明である.さらにproperなローレンツ変換では\(\det \Lambda=1\)であることから\(\epsilon^{0123}=+1\)もわかる.

最後に33章の始めの疑問に答えよう.2つのベクトル添え字を持つ場\(B^{\mu\nu}(x)\)を次のように分解したのであった.

$$B^{\mu\nu}(x)=A^{\mu\nu}(x)+S^{\mu\nu}(x)+\frac{1}{4}g^{\mu\nu}T(x)\tag{33}$$

ここで,\(A^{\mu\nu}\)は反対称,\(S^{\mu\nu}\)は対称かつトレースレスである.この分解はローレンツ変換の下で混ざらないわけだがこれ以上小さい既約表現の分解があるかが疑問であった.これは(31)式が解決してくれる.明らかに\(T(x)\)は(1,1)表現に対応し,\(S^{\mu\nu}\)は(3,3)表現に対応する.しかし,場\(A^{\mu\nu}(x)\)は\((3,1)\oplus (1,3)\)に対応する.ここで,\((3,1)\)は\((2,1)\otimes (2,1)\)の対称部分であった.よって,ドットなしの2つの添え字を持つ対称テンソルである.また,(1,3)表現はそのエルミート共役であり,ドット付きの2つの添え字を持つ対称テンソルである.(28)式に類似するような場\(G_{ab}(x)\)とエルミート共役\(G_{\dot{a}\dot{b}}^{\dagger}(x)\)を\(A^{\mu\nu}(x)\)とつなぐ写像を見つけよう.

この写像は生成子\(S_L^{\mu\nu},S_R^{\mu\nu}\)により与えられる.パウリ行列はトレースレスであるから,(9),(10)より,\((S_L^{\mu\nu})_a^{\ \ a}\)である.これは(24)式を使うと\(\epsilon^{ab}(S_L^{\mu\nu})_{ab}=0\)である.ここで,\(\epsilon^{ab}\)は反対称だから\((S_L^{\mu\nu})_{ab}\)は2つのスピノル添え字に対し,対称である.同様に\((S_R^{\mu\nu})_{\dot{a}\dot{b}}\)もスピノル添え字に対して対称である.さらに(9),(10)式より,

$$(S_L^{10})_a^{\ \ b}=-i(S_L^{23})_a^{\ \ b}\tag{34}$$

である.この関係は

$$(S_L^{\mu\nu})_a^{\ \ b}=-\frac{i}{2}\epsilon^{\mu\nu\rho\sigma}(S_{L\ \rho\sigma})_a^{\ \ b}\tag{35}$$

に拡張できる.さらに(35)式の複素共役を取って,(17)式を使うことで

$$(S_R^{\mu\nu})_{\dot{a}}^{\ \ \dot{b}}=+\frac{i}{2}\epsilon^{\mu\nu\rho\sigma}(S_{R\ \rho\sigma})_{\dot{a}}^{\ \ \dot{b}}\tag{36}$$

が分かる.

(3,1)表現の場\(G_{ab}(x)\)は次の写像で自己双対な反対称テンソル\(G^{\mu\nu}(x)\)に移る.

$$G^{\mu\nu}(x)\equiv (S_L^{\mu\nu})^{ab}G_{ab}(x)\tag{37}$$

自己双対とは

$$G^{\mu\nu}(x)=-\frac{i}{2}\epsilon^{\mu\nu\rho\sigma}G_{\rho\sigma}(x)\tag{38}$$

を意味する.(37)式でエルミート共役を取り,(17)式を用いると

$$G^{\dagger\mu\nu}(x)=-(S_R^{\mu\nu})^{\dot{a}\dot{b}}G_{\dot{a}\dot{b}}^{\dagger}(x)\tag{39}$$

であり,反自己双対

$$G^{\dagger\mu\nu}(x)=+\frac{i}{2}\epsilon^{\mu\nu\rho\sigma}G_{\rho\sigma}^{\dagger}(x)\tag{40}$$

を満たす.与えられたエルミート反対称テンソル場\(A^{\mu\nu}(x)\)に対し,次のように自己双対,反自己双対部分に分けることができる.

\begin{align} G^{\mu\nu}(x)&= \frac{1}{2}A^{\mu\nu}(x)-\frac{i}{4}\epsilon^{\mu\nu\rho\sigma}A_{\rho\sigma}(x)\tag{41}\\
G^{\dagger\mu\nu}(x)&= \frac{1}{2}A^{\mu\nu}(x)+\frac{i}{4}\epsilon^{\mu\nu\rho\sigma}A_{\rho\sigma}(x)\tag{42}\end{align}

これより,

$$A^{\mu\nu}(x)=G^{\mu\nu}(x)+G^{\dagger \mu\nu}(x)\tag{43}$$

と分けることができる.この場\(G^{\mu\nu}(x)\)は(3,1)表現であり,場\(G^{\dagger\mu\nu}(x)\)は(1,3)表現である.そして,これらはローレンツ変換の下で混ざらないのである.

24.非可換対称性

22章で導入したラグランジアンが

$${\mathcal{L}}=-\frac{1}{2}\partial^{\mu}\varphi_1\partial_{\mu}\varphi_1-\frac{1}{2}\partial^{\mu}\varphi_2\partial_{\mu}\varphi_2-\frac{1}{2}m^2(\varphi^2_1+\varphi^2_2)-\frac{1}{16}\lambda(\varphi_1^2+\varphi_2^2)^2\tag{1}$$

で与えられる2種類の実スカラー場\(\varphi_1,\varphi_2\)について考えよう.\(N\)個の実スカラー場\(\varphi_i\)に拡張すると

$${\mathcal{L}}=-\frac{1}{2}\partial^{\mu}\varphi_i\partial_{\mu}\varphi^i-\frac{1}{2}\varphi_i\varphi_i-\frac{1}{16}\lambda(\varphi_i\varphi_i)^2\tag{2}$$

となる.ここで,二度出た添字は和を取っている.これを見ると明らかにこのラグランジアンは\(SO(N)\)変換

$$\varphi_i(x)\to R_{ij}\varphi_j(x)\tag{3}$$

で不変である.ここで,\(R\)は\(\det\)が正の直交行列:\(R^T=R^{-1},\det R=+1\)である.また,明らかに\(Z_2\)変換:\(\varphi_i(x)\to -\varphi_i(x)\)でもラグランジアンは不変なので合わせて,ラグランジアンは\(O(N)\)対称性を持つとわかる.しかし,この章では単連結な部分\(SO(N)\)だけを議論することにする.

\(SO(N)\)変換の微小変換

$$R_{ij}=\delta_{ij}+\theta_{ij}+O(\theta^2)\tag{4}$$

について考えよう.ここで,\(R\)の実直交性より,

\begin{align}&R_{ij}\times(R^T)_{jk}\\&=R_{ij}\times R_{kj}\\&=(\delta_{ij}+\theta_{ij}+0(\theta^2))(\delta_{kj}+\theta_{kj}+O(\theta^2))\\ &=\delta_{ik}+\theta_{ki}+\theta_{ik}+0(\theta^2)\end{align}

なので\(\theta_{ij}\)は実反対称である. \(\theta_{ij}\) の基底としてエルミート行列\((T^a)_{ij}\)を用いると便利である.添字\(a\)は\(1\)から\(\frac{1}{2}N(N-1)\)を走る.例えば\(T^a\)として\(i<j\)において\((i,j)\)成分が\(-i\),\((j,i)\)成分が\(i\)であり,それ以外の成分が0であるような行列を選ぶと内積が

$${\mathrm{Tr}}(T^aT^b)=2\delta^{ab}\tag{5}$$

とうまく定まる.この基底で展開すると

$$\theta_{jk}=-i\theta^a(T^a)_{jk}\tag{6}$$

と書ける.ここで,\(\theta^a\)は\(\frac{1}{2}N(N-1)\)個の実な微小パラメーターである.

\(T^a\)は\(SO(N)\)の生成子になっており,任意の\(SO(N)\)の2つの元の積が閉じていることから\(T^a\)の括弧積も閉じていることがわかる.(Problem24.2)つまり,

$$[T^a,T^b]=if^{abc}T^c\tag{7}$$

と展開できる.\(f^{abc}\)は構造定数と呼ばれるものでその群を特徴付ける量である.もし,\(f^{abc}\)が0であったならその群は可換群であり,そうでなかったら非可換群になる.よって,生成子が1つしかないような\(U(1),SO(2)\)は可換群であり,\(N\ge 3\)で\(SO(N)\)は非可換群である.

(7)式の両辺に\(T^d\)を掛けてトレースを取ると(5)式より,

$$f^{abd}=-\frac{1}{2}i{\mathrm{Tr}}\left([T^a,T^b]T^d\right)\tag{8}$$

を得る.よって,これよりトレースの性質を用いると,\(f^{abd}\)は完全反対称になっていることがわかる.また,(8)式で複素共役と取ることで\(f^{abd}\)が実数であることもわかる.(右辺には\(i\)が4つあることからすぐにわかる.)

もっとも単純なのは\(SO(3)\)のときである.このとき,\((T^a)_{ij}=-i\epsilon^{aij}\)とすると,(ここで,\(\epsilon^{ijk}\)は\(\epsilon^{123}=1\)の完全反対称テンソルである.)交換関係は

$$[T^a,T^b]=i\epsilon^{abc}T^c\tag{9}$$

となる.よって,\(SO(3)\)の構造定数はこの基底のもとで\(f^{abc}=\epsilon^{abc}\)である.

次にラグランジアンが

$${\mathcal{L}}=-\partial^{\mu}\varphi_i^{\dagger}\partial_{\mu}\varphi_i-m^2\varphi_i^{\dagger}\varphi_i-\frac{1}{4}\lambda(\varphi_i^{\dagger}\varphi_i)^2\tag{10}$$

で与えられる\(N\)個の複素スカラー場\(\varphi_i\)を考えよう.このラグランジアンは明らかに\(U(N)\)対称性

$$\varphi_i(x)\to U_{ij}\varphi_j(x)\tag{11}$$

を持つ.ここで,\(U\)はユニタリ行列である:\(U^{\dagger}=U^{-1}\).さらに,\(U_{ij}=e^{-i\theta}\tilde{U}_{ij}\)と実パラメーター\(\theta\)を置くことで\(\det \tilde{U}_{ij}=+1\)とすることができる.ここで,\(\tilde{U}_{ij}\)は特殊ユニタリ行列と言われる.明らかに特殊ユニタリ行列同士の積は特殊ユニタリ行列である.つまり,\(N\times N\)の特殊ユニタリ行列の集合は群を成し,\(SU(N)\)と呼ばれる.群\(U(N)\)は\(U(1)\)と\(SU(N)\)の直積である.

$$U(N)=U(1)\times SU(N)$$

微小\(SU(N)\)変換について考えよう.

$$\tilde{U}_{ij}=\delta_{ij}-i\theta^a(T^a)_{ij}+O(\theta^2)\tag{12}$$

ここで,\(\theta^a\)は実微小パラメーターである.\(\tilde{U}\)のユニタリ性より,生成子\(T^a\)はエルミート行列である.(\(\tilde{U}_{ij}\tilde{U}_{jk}=\delta_{ik}\)に(12)式を代入しよう.)

また,\(\det \tilde{U}=+1\)より,\(T^a\)はトレースレスである.(\(\ln \det A=\mathrm{Tr}\ln A\)よりすぐにわかる.)\(a\)の添え字は\(1\)から\(N^2-1\)まで走り,エルミート,トレースレスで線形独立なものを選ぶ.さらに(5)式の条件を満たすように\(T^a\)を選ぶことができる.\(SU(2)\)の場合は生成子としてパウリ行列を選ぶことができる.このとき,構造定数は\(f^{abc}=2\epsilon^{abc}\)であり,\(SO(3)\)と一致する.(生成子に定数倍をつけることで構造定数を定数倍ずらすことができる.)

\(SU(N)\)の場合で\(T^a\)は次のように選ぶことができる.初めに\(SO(N)\)の生成子と同じようにある対角成分より右上の成分が\(-i\),その成分に対応する左下の成分が\(i\)の行列を\(N(N-1)/2\)個用意する.それ以外にある対角成分の右上の成分が1でその成分に対応する左下の成分が1の行列も\(N(N-1)/2\)個用意する.これらはエルミートトレースレスですべて直交する.さらにエルミートトレースレスになるような直交する対角成分だけなる行列を\(N-1\)個用意する.これらを合わせると計\(N^2-1\)個の\(SU(N)\)の生成子ができる.(定数倍することで(5)式の条件を満たすようにできる.)

具体的に(10)式の場合で考えてみると実はより大きい対称性\(SO(2N)\)を持つことがわかる.それは複素スカラー場を二つの実スカラー場で書くと簡単にわかる.\(\varphi_j=(\varphi_{j1}+i\varphi_{j2})/\sqrt{2}\)とすると

$$\varphi_j^{\dagger}\varphi_j=\frac{1}{2}(\varphi_{11}^2+\varphi_{12}^2+\cdots +\varphi_{N1}^2+\varphi_{N2}^2)\tag{13}$$

となり,\(2N\)個の実スカラー場は\(SO(2N)\)の対称性を持つわけである.

Parts 2,3 で\(SU(N)\)が重要な対称性であることがわかる.

56.フォトンのLSZ簡約公式

フォトンの場合でLSZ簡約公式はどうなるだろう.

55章で自由場の生成・消滅演算子は

\begin{align} a_{\lambda}^{\dagger}&=-i{\boldsymbol{\epsilon}}_{\lambda}^*({\bf{k}})\cdot\int d^3x\ e^{+ikx}\overleftrightarrow{\partial_0}{\bf{A}}(x)\tag{1}\\
a_{\lambda}&=+i{\boldsymbol{\epsilon}}_{\lambda}({\bf{k}})\cdot\int d^3x\ e^{-ikx}\overleftrightarrow{\partial_0}{\bf{A}}(x)\tag{2} \end{align}

と書ける.ここで,\({\boldsymbol{\epsilon}}_{\lambda}({\bf{k}})\)は偏極ベクトルである.\({\boldsymbol{\epsilon}}\cdot{\bf{A}}\)をスカラー場と思うことで5章のスカラー場での計算を簡単に拡張できる.入射フォトンの生成演算子は

$$a_{\lambda}^{\dagger}({\bf{k}})_{in}\to i\epsilon_{\lambda}^{\mu*}({\bf{k}})\int d^4x\ e^{+ikx}(-\partial^2)A_{\mu}(x)\tag{3}$$

で置き換えられるだろう.(フォトンの質量が0であることに注意しよう.)そして出ていくフォトンの消滅演算子は

$$
a_{\lambda}({\bf{k}})_{out}\to i\epsilon_{\lambda}^{\mu}({\bf{k}})\int d^4x\ e^{-ikx}(-\partial^2)A_{\mu}(x)\tag{4} $$

である.そして,時間順序積を含んだ真空期待値を計算したいわけだ.ここで,(3),(4)式で\(\epsilon_{\lambda}^0({\bf{k}})\equiv 0\)と定義することで4元ベクトルでの内積に変形した.

ヒルベルト空間については

\begin{align} \langle 0 |A^i(x)|0\rangle &=0,\tag{5}\\
\langle k,\lambda |A^i(x)|0\rangle &=\epsilon_{\lambda}^i({\bf{k}})e^{ikx},\tag{6}\\
\langle k^{\prime},\lambda^{\prime}|k,\lambda\rangle =(2\pi)^32& \omega\ \delta^3({\bf{k^{\prime}-k}})\delta_{\lambda\lambda^{\prime}}\tag{7} \end{align}

と定める.ここで,(5)式はローレンツ変換での共変性からの要請と理解できる.

くりこみされたラグランジアンを

$${\mathcal{L}}=-\frac{1}{4}Z_3F^{\mu\nu}F_{\mu\nu}+Z_1J^{\mu}A_{\mu}\tag{8}$$

と書こう.ここで,\(Z_3,Z_1\)はよく使われる記法であり,\(Z_2\)は62章で出て来る.

次に自由場の場合で相関関数\(\langle 0|TA_i(x)\dots|0\rangle\)を計算しよう.これもスカラー場とほとんど同じ計算でできる.2点関数は

$$\langle 0|TA^i(x)A^j(y)|0\rangle =\frac{1}{i}\Delta^{ij}(x-y)\tag{9}$$

と書ける.ここで,

$$\Delta^{ij}(x-y)=\int \frac{d^4k}{(2\pi)^4}\frac{e^{ik(x-y)}}{k^2-i\epsilon}\sum_{\lambda=\pm}\epsilon_{\lambda}^{i*}({\bf{k}})\epsilon_{\lambda}^j({\bf{k}})\tag{10}$$

である.8章でみたよう自由スカラーでは奇数個の相関関数は0となり,偶数個の場合は propagator の和で与えられた.

自由電磁場で経路積分を計算しよう.

$$Z_0(J)\equiv \langle 0|0\rangle_J=\int{\mathcal{D}}A\ e^{i\int d^4x\left[-\frac{1}{4}F^{\mu\nu}F_{\mu\nu}+J^{\mu}A_{\mu}\right]}\tag{11}$$

ここで,カレント\(J^{\mu}(x)\)は外場として扱う.

クーロンゲージの下で\(Z_0(J)\)を計算しよう.これは\(\nabla\cdot{\bf{A}}=0\)を満たす部分多様体上で積分することを意味する.

55章での計算を踏まえて積分を実行すると

$$S_{coul} =-\frac{1}{2}\int d^4xd^4y \delta(x^0-y^0)\frac{J^0(x)J^0(y)}{4\pi|{\bf{x-y}}|}\tag{12}$$

としたとき,

$$Z_0(J)=\exp\left[iS_{coul}+\frac{i}{2}\int d^4xd^4y\ J_i(x)\Delta^{ij}(x-y)J_j(y)\right]\tag{13}$$

となる.(詳しい計算は57章で述べるが55章(20)式の交換関係によりスカラー場と差が生まれる.)

さらに

\begin{align} \Delta^{\mu\nu}(x-y)&\equiv \int \frac{d^4k}{(2\pi)^4}e^{ik(x-y)}\tilde{\Delta}^{\mu\nu}(k),\tag{15}\\ \tilde{\Delta}^{\mu\nu}(k)&\equiv -\frac{1}{{\bf{k}}^2}\delta^{\mu 0}\delta^{\nu 0}+\frac{1}{k^2-i\epsilon}\sum_{\lambda=\pm }\epsilon j_{\lambda}^{\mu*}({\bf{k}})\epsilon_{\lambda}^{\nu}({\bf{k}})\tag{16}\end{align}

と定義することで

$$Z_0(J)=\exp\left[\frac{i}{2}\int d^4xd^4y\ J_{\mu}(x)\Delta^{\mu\nu}(x-y)J_{\nu}(y)\right]\tag{14}$$

とまとめることができる.ここで,

\begin{align} \int _{-\infty}^{+\infty}\frac{dk^0}{2\pi}\ e^{-ik^0(x^0-y^0)}&=\delta(x^0-y^0)\tag{17}\\ \int\frac{d^3k}{(2\pi)^3}\frac{e^{i{\bf{k\cdot(x-y)}}}}{{\bf{k}}^2}&=\frac{1}{4\pi|{\bf{x-y}}|}\tag{18} \end{align}

を用いると確かめられる.また,\(\epsilon_{\lambda}^0({\bf{k}})=0\)とした.さらに(16)式を整理しよう.そのために時間方向の単位ベクトル

$$\hat{t}^{\mu}=(1,{\bf{0}})\tag{19}$$

を導入する.次に\({\bf{k}}\)方向の単位ベクトル\(\hat{z}^{\mu}\)を表そう.すぐに\(\hat{t}\cdot k=\hat{t}^{\mu}k_{\mu}=-k^0\)が成り立つことがわかる.よって,

$$(0,{\bf{k}})=k^{\mu}+(\hat{t}\cdot k)\hat{t}^{\mu}\tag{20}$$

である.この両辺を2乗すると

\begin{align} {\bf{k}}^2&=(k^{\mu}+(\hat{t}\cdot k)\hat{t}^{\mu})
(k_{\mu}+(\hat{t}\cdot k)\hat{t}_{\mu})\\ &=k^{\mu}k_{\mu}+2\times (\hat{t}\cdot k)k^{\mu}\hat{t}_{\mu}-(\hat{t}\cdot k)^2\\ &=k^2+(\hat{t}\cdot k)^2\tag{21}\end{align}

である.ここで,\(\hat{t}^2=-1\)を用いた.よって,

$$\hat{z}^{\mu}=\frac{k^{\mu}+(\hat{t}\cdot k)\hat{t}^{\mu}}{[k^2+(\hat{t}\cdot k)^2]^{1/2}}\tag{22}$$

である.さらに,55章より,

$$\sum_{\lambda=\pm}\epsilon_{\lambda}^{i*}({\bf{k}})\epsilon_{\lambda}^j({\bf{k}})=\delta_{ij}-\frac{k_ik_j}{{\bf{k}}^2}\tag{23}$$

であったから

$$\sum_{\lambda=\pm}\epsilon_{\lambda}^{\mu*}({\bf{k}})\epsilon_{\lambda}^{\nu}({\bf{k}})=g^{\mu\nu}+\hat{t}^{\mu}\hat{t}^{\nu}-\hat{z}^{\mu}\hat{z}^{\nu}\tag{24}$$

とすることができる.ここで,\(\mu,\nu\)が0であるか場合分けすることで簡単に確かめることができる.これらを使うと(16)式は

$$\tilde{\Delta}^{\mu\nu}(k)=-\frac{\hat{t}^{\mu}\hat{t}^{\nu}}{k^2+(\hat{t}\cdot k)^2}+\frac{g^{\mu\nu}+\hat{t}^{\mu}\hat{t}^{\nu}-\hat{z}^{\mu}\hat{z}^{\nu}}{k^2-i\epsilon}\tag{25}$$

と書ける.

次に(22)式を代入することで(25)式を\(k^{\mu},k^{\nu}\)を使って表そう.(15)式で\(x^{\mu}\)で微分すると\(e^{ik(x-y)}\)に作用して\(k^{\mu}\)が現れる.さらに(14)式で\(\Delta^{\mu\nu}(x-y)\to \partial/\partial x^{\sigma}\Delta^{\mu\nu}(x-y)\)と置き換わったとするならば部分積分をすることで\(\partial^{\mu}J_{\mu}\)が生じ,カレントの保存からこれはゼロになる.これはつまり,\(\tilde{\Delta}^{\mu\nu}(k)\)に含まれる\(k^{\mu},k^{\nu}\)の項は無視してよいということである.

よって,(22)式より,(25)式には

$$\hat{z}^{\mu}\to \frac{(\hat{t}\cdot k)\hat{t}^{\mu}}{[k^2+(\hat{t}\cdot k)^2]^{1/2}}\tag{26}$$

を代入すればよいことがわかる.実際に代入を行うと

$$\tilde{\Delta}^{\mu\nu}(k)=\frac{1}{k^2-i\epsilon}\left[g^{\mu\nu}+\left(-\frac{k^2}{k^2+(\hat{t}\cdot k)^2}+1-\frac{(\hat{t}\cdot k)^2}{k^2+(\hat{t}\cdot k)^2}\right)\hat{t}^{\mu}\hat{t}^{\nu}\right]\tag{27}$$

となる.(分子の\(i\epsilon\)は消去した.)さらに,\(\hat{t}^{\mu}\hat{t}^{\nu}\)の係数は計算すると0になる.結局,

$$\tilde{\Delta}^{\mu\nu}(k)=\frac{g^{\mu\nu}}{k^2-i\epsilon}\tag{28}$$

と表される.このように書いたフォトンの propagator をファインマンゲージと呼ぶ.(積分したときに消える\(k^{\mu},k^{\nu}\)の項を残したpropagatorがクーロンゲージである.)

次の章で経路積分を用いて(28)式を導こう.

55.クーロンゲージによる電気力学

ハミルトニアンを構成して電磁場を量子化しよう.

これはゲージ不変性があることからいつものように簡単にはいかない.自由度がありすぎるのである.たとえばラグランジアンが

\begin{align}{\mathcal{L}}&=-\frac{1}{4}F^{\mu\nu}F_{\mu\nu}+J^{\mu}A_{\mu} \tag{1}\\ &=-\frac{1}{2}\partial ^{\mu}A^{\nu}\partial _{\mu}A_{\nu}+\frac{1}{2}\partial ^{\mu}A^{\nu}\partial _{\nu}A_{\mu}+J^{\mu}A_{\mu}\tag{2}\end{align}

で与えられるとする.ここには,\(A^0\)の時間微分は含まれていない.これにより,正準共役運動量は力学的ではないのである.(もっというと正準共役運動量の時間成分が0となり,これは一次拘束条件になる.)

これを解決するためにゲージ固定をしよう.\(A^{\mu}(x)\)が満たす条件を要求するゲージ条件を課すことにより,これを行う.同じ\(F^{\mu\nu}\)与えるような\(A^{\mu}(x)\)がただ1つとなるような条件が良い条件である.

その1つのとして \(n^{\nu}A_{\mu}(x)=0\) を課すこともある.ここで,\(n^{\mu}\)は4次元定数ベクトルである.これらの条件は

\begin{align} &nが spacelike (n^2>0) のときaxial\ gauge\\& nが lightlike (n^2>0) のとき lightcone\ gauge\\& nが timelike (n^2>0) のとき temporal \ gauge \end{align}

と呼ばれる.

他には\(\partial^{\mu}A_{\mu}(x)=0\)を課すローレンツゲージなどもある.これについては62章で議論する.

この章ではクーロンゲージ(Coulomb gauge, radiation gauge, transverse gaugeなどともいわれる)を用いることにする.クーロンゲージの条件は

$$\nabla\cdot {\bf{A}}(x)=0\tag{3}$$

である.この条件は(4)式のように\(A_i(x)\)に射影演算子を作用することで自動的に成り立つ.

$$A_i(x)\to \left(\delta_{ij}-\frac{\nabla_i\nabla_j}{\nabla^2}\right)A_j(x)\tag{4}$$

ここで,(4)式の右辺はフーリエ変換で\(A_i(x)\)を\(\tilde{A}_i(k)\)にして行列\(\delta_{ij}-k_ik_j/{\bf{k}}^2\)をかけてから逆フーリエ変換することで定義される.ここから,\(A_i\)と書いたら(4)式の右辺の意味であるとする.

ラグランジアンをクーロンゲージのもとでスカラー,ベクトルポテンシャル\(\varphi=A^0,A_i\)を用いて表そう.(2)式から出発すると

\begin{align} {\mathcal{L}}&=\frac{1}{2}\dot{A}_i\dot{A}i-\frac{1}{2}\nabla_jA_i\nabla_jA_i+J_iA_i\\ &=\frac{1}{2}\nabla_iA_j\nabla_jA_i+\dot{A}_i\nabla_i\varphi\\ &=\frac{1}{2}\nabla_i\varphi\nabla_i\varphi-\rho\varphi\tag{5}\end{align}

となる.(5)式の二行目は部分積分を行って微分の順序を変えるとクーロンゲージにより消える.

\(\varphi\)についての変分による方程式を考えるとこれはポアソン方程式

$$-\nabla^2\varphi=\rho\tag{6}$$

となる.無限遠で\(\varphi,\rho\)が0になるという境界条件の下で解くと解は

$$\varphi({\bf{x}},t)=\int d^3y \frac{\rho({\bf{y}},t)}{4\pi|{\bf{x-y}}|}\tag{7}$$

となる.

(7)式は\(\varphi({\bf{x}},t)\)は同時刻の電荷密度により与えられ,力学的でないことを表している.(7)式をラグランジアンに代入し,部分積分\(\nabla_i\varphi\nabla_i\varphi\to -\varphi\nabla^2\varphi=\varphi\rho\)を用いて計算すると

$${\mathcal{L}}=\frac{1}{2}\dot{A}_i\dot{A}_i-\frac{1}{2}\nabla_jA_i\nabla_jA_i+J_iA_i+{\mathcal{L}}_{coul}\tag{8}$$

となる.ここで,

$${\mathcal{L}}_{coul}=-\frac{1}{2}\int d^3y \frac{\rho({\bf{x}},t)\rho({\bf{y}},t)}{4\pi |{\bf{x-y}}|}\tag{9}$$

である.

自由場(\(J_i=0\))を考えると\(A_i\)の変分から得られる方程式は

$$\partial^2A_i(x)=0\tag{10*}$$

である.よって,\({\bf{A}}\)が実でクーロンゲージより一般解は

$${\bf{A}}(x)=\sum_{\lambda=\pm}\int\tilde{dk}\left[{\boldsymbol{\epsilon}}_{\lambda}^*({\bf{k}})a_{\lambda}({\bf{k}})e^{ikx}+{\boldsymbol{\epsilon}}_{\lambda}({\bf{k}})a_{\lambda}^{\dagger}({\bf{k}})e^{-ikx}\right]\tag{11}$$

と書ける.ここで,\(k^0=\omega=|{\bf{k}}|,\tilde{dk}=d^3k/(2\pi)^32\omega,{\boldsymbol{\epsilon}}\)は偏極ベクトルである.クーロンゲージより,\({\boldsymbol{\epsilon}}_{\pm}\)は\({\bf{k}}\)と垂直な面の基底であるが左右の円偏光に対応するように取ろう.\({\bf{k}}=(0,0,k)\)であれば

\begin{align} {\boldsymbol{\epsilon}}_+({\bf{k}})&=\frac{1}{\sqrt{2}}(1,-i,0), \\
{\boldsymbol{\epsilon}}_-({\bf{k}})&=\frac{1}{\sqrt{2}}(1,i,0)\tag{12}\end{align}

である.より一般には偏極ベクトルは次の三つの条件を満たすものである.

\begin{align} {\bf{k}}\cdot {\boldsymbol{\epsilon}}_{\lambda}({\bf{k}})&=0\tag{13}
\\ {\boldsymbol{\epsilon}}_{\lambda^{\prime}}\cdot{\boldsymbol{\epsilon}}_{\lambda}^*({\bf{k}})&=\delta_{\lambda^{\prime}\lambda}\tag{14}\\ \sum_{\lambda=\pm}\epsilon_{i\lambda}^*({\bf{k}})\epsilon_{j\lambda}({\bf{k}})&=\delta_{ij}-\frac{k_ik_j}{{\bf{k}}^2}\tag{15} \end{align}

量子化したら係数\(a_{\lambda}({\bf{k}}),a_{\lambda}^{\dagger}({\bf{k}})\)のダガーはエルミート共役を意味する.

3章でスカラー場について行った計算と同様の計算をすると(11)式より,

\begin{align} a_{\lambda}({\bf{k}})&=+i{\boldsymbol{\epsilon}}_{\lambda}({\bf{k}})\cdot \int d^3x\ e^{-ikx}\overleftrightarrow{\partial}_0{\bf{A}}(x)\tag{16}\\
a^{\dagger}_{\lambda}({\bf{k}})&=-i{\boldsymbol{\epsilon}}^*_{\lambda}({\bf{k}})\cdot \int d^3x\ e^{+ikx}\overleftrightarrow{\partial}_0{\bf{A}}(x) \tag{17}\end{align}

を得る.ここで,\(f\overleftrightarrow{\partial}_{\mu}g=f(\partial_{\mu}g)-(\partial_{\mu}f)g\)である.

準備が整ったので量子化していこう.まず,\(A_i\)の正準共役運動量は

$$\Pi_i=\frac{\partial{\mathcal{L}}}{\partial\dot{A}_i}=\dot{A}_i\tag{18}$$

である.\(\nabla_iA_i=0\)なので\(\nabla_i\Pi=0\)に注意するとハミルトニアン密度は

\begin{align} {\mathcal{H}}&=\Pi_i\dot{A}_i-{\mathcal{L}}\\ &=\frac{1}{2}\Pi_i\Pi_i+\frac{1}{2}\nabla_jA_i\nabla_jA_i-J_iA_i+{\mathcal{H}}_{coul}\tag{19}\end{align}

となる.ここで,\({\mathcal{H}}_{coul}=-{\mathcal{L}}_{coul}\)である.

正準交換関係を課そう.クーロンゲージを取っているので(4)式より

\begin{align} [A_i({\bf{x}},t),\Pi_j({\bf{y}},t)]&= i\left(\delta_{ij}-\frac{\nabla_i\nabla_j}{\nabla^2}\right)\delta^3({\bf{x-y}})\\ &= i\left(\delta_{ij}-\frac{\nabla_i\nabla_j}{\nabla^2}\right)\int \frac{d^3k}{(2\pi)^3}e^{i{\bf{k}}\cdot({\bf{x-y}})}\\ &=i\int\frac{d^3k}{(2\pi)^3}e^{i{\bf{k}}\cdot({\bf{x-y}})}\left(\delta_{ij}-\frac{k_ik_j}{{\bf{k}}^2}\right)\tag{20}\end{align}

とする.(ここではかなり適当な議論をしている.まじめにやるならば拘束条件を正しく扱ってディラック括弧を計算する必要がある.)

(20)式と\([A_i,A_j]=[\Pi_i,\Pi_j]=0\)を用いると\(a_{\lambda}({\bf{k}}),a_{\lambda}({\bf{k}})\)の交換関係も計算することができる.結果は次のようになる.

\begin{align} [a_{\lambda}({\bf{k}}),a_{\lambda^{\prime}}({\bf{k}}^{\prime})]&=0 \tag{21}\\ [a^{\dagger}_{\lambda}({\bf{k}}),a^{\dagger}_{\lambda^{\prime}}({\bf{k}}^{\prime})]&=0 \tag{22}\\ [a_{\lambda}({\bf{k}}),a^{\dagger}_{\lambda^{\prime}}({\bf{k}}^{\prime})]&=(2\pi)^32\omega\delta^3({\bf{k^{\prime}-k}})\delta_{\lambda\lambda^{\prime}} \tag{23}\end{align}

\(a_{\lambda}^{\dagger}({\bf{k}}),a_{\lambda}({\bf{k}})\)はそれぞれ定義されたヘリシティを持つフォトンを生成,消滅させる演算子だと解釈する.ここで,右円偏光がヘリシティ1で左円偏光がヘリシティ-1の状態を表す.

これらの演算子を用いてハミルトニアンを書くと

$$H=\sum_{\lambda=\pm}\int \tilde{dk}\ \omega a_{\lambda}^{\dagger}({\bf{k}})a_{\lambda}({\bf{k}})+2\epsilon_0V-\int d^3x{\bf{J}}(x)\cdot {\bf{A}}(x)+H_{could}\tag{24}$$

となる.ここで,\(\epsilon_0=\frac{1}{2}(2\pi)^{-3}\int d^3k\ \omega\) で単位体積あたりのゼロ点エネルギーである.(3章とほとんど同様の計算である.)さらにクーロンハミルトニアンは

$$H_{could}=\frac{1}{2}\int d^3xd^3y\ \frac{\rho({\bf{x}},t)\rho({\bf{y}},t)}{4\pi|{\bf{x-y}}|}\tag{25}$$

である.

計算の中で\(t=0\)として漸近場で(11)式を用いた.これが許されるのは\(H\)が時間不変だからである.

電磁力学のハミルトニアンのこの表式はしばしば非相対論的なシュレディンガー方程式での原子の遷移振幅の出発点になる.(もしかしたら学部の量子力学の範囲で扱ったことがある人もいるかもしれない.)クーロン相互作用は\({\bf{J\cdot A}}\)に表れていて,定義された偏極を持つフォトンの生成消滅を可能にしている.

54.マクスウェル方程式

もっとも重要なスピン1の粒子はフォトンである.物質によるフォトンの放出・吸収は物理の多くの分野で重要である.量子電磁力学の入り口としてこの分野についてざっと復習することにする.

まずは古典電磁力学から始めよう.マクスウェル方程式は

\begin{align} \nabla \cdot {\bf{E}}&=\rho \tag{1}\\ \nabla \times {\bf{B}}-\dot{{\bf{E}}} &={\bf{J}} \tag{2}\\ \nabla \times {\bf{E}}+\dot{{\bf{B}}}&=0\tag{3}\\ \nabla \cdot {\bf{B}}&=0\tag{4} \end{align}

で表される.ここで,\({\bf{E}}\)は電場,\({\bf{B}}\)は磁場,\(\rho\)は電荷密度,\({\bf{J}}\)はカレント密度である.また,ここでは Heaviside-Lorentz 単位系を用いていて,\(c=1\)としている.この単位系では\(Q\)の電荷を持った荷電粒子間に\(Q^2/4\pi r^2\)の力が働く.

マクスウェル方程式はこれだけでは電荷やカレントのダイナミクスまではわからない.よって,ローレンツ力などの補足を必要とするがここでは,特定の電荷やカレントに制限して話を進めるので電磁場のダイナミクスにのみ注目することにする.

マクスウェル方程式の後ろ2つは右辺にソースが含まれていないので\({\bf{E,B}}\)について解くことができる.スカラーポテンシャル\(\varphi\)とベクトルポテンシャル\({\bf{A}}\)を用いると

\begin{align} {\bf{E}}&=-\nabla \varphi-\dot{{\bf{A}}},\tag{5}\\ {\bf{B}}&=\nabla \times {\bf{A}}\tag{6} \end{align}

と表すことができる.これらのポテンシャルが決まると(5),(6)式より,電磁場はユニークに決定する.しかし,電磁場が決定してもこれらのポテンシャルには自由度が残る.正確には

\begin{align} \varphi^{\prime} &=\varphi +\dot{\Gamma}\tag{7}, \\ {\bf{A}}^{\prime}&= {\bf{A}}-\nabla \Gamma,\tag{8} \end{align}

で結ばれるポテンシャル同士は同じ電磁場を与える.ここで,\(\Gamma\)は時空に関する任意関数である.このような場を変えないポテンシャルの変換をゲージ変換という.つまり,\({\bf{E}},{\bf{B}}\)はゲージ不変である.

相対論的な表記を使うとコンパクトかつエレガントに表すことができる.4次元ポテンシャルもしくはゲージ場を

$$A^{\mu}\equiv (\varphi,{\bf{A}}),\tag{9}$$

で定義する.また,field strength を

$$F^{\mu\nu}\equiv \partial ^{\mu}A^{\nu}-\partial ^{\nu}A^{\mu}\tag{10}$$

で定義する.明らかに\(F^{\mu\nu}\)は反対称である:\(F^{\mu\nu}=F^{\nu\mu}\).(5),(6)式とこれらの定義を見ると

\begin{align} F^{0i}&= E^i,\tag{11}\\ F^{ij}&= \epsilon ^{ijk}B_k\tag{12} \end{align}

の関係がわかる.また,マクスウェル方程式の前2つも新しく

$$\partial _{\nu}F^{\mu\nu}=J^{\mu}\tag{13}$$

と表すことができる.ここで,

$$J^{\mu}\equiv (\rho,{\bf{J}})\tag{14}$$

は電荷カレントの4次元ベクトルである.

(13)式の両辺に\(\partial _{\mu}\)を作用させると\(\partial _{\mu}\partial _{\nu}F^{\mu\nu}=\partial _{\mu}J^{\mu}\)となる.左辺に注目すると\(\partial _{\mu}\partial _{\nu}\)は添字に関して対称であり,\(F^{\mu\nu}\)は反対称なので和を取ると0なる.したがって,

$$\partial_{\mu}J^{\mu}=0\tag{15}$$

もしくは,これと等しい

$$\dot{\rho}+\nabla \cdot {\bf{J}}=0\tag{16}$$

を得る.これは電荷が保存することを表している.

マクスウェル方程式の残り2つは

$$\epsilon_{\mu\nu\rho\sigma}\partial ^{\rho}F^{\mu\nu}=0\tag{17}$$

で表される.ここで,\(\epsilon_{\mu\nu\rho\sigma}\)は完全反対称テンソルである.(10)式を(17)式に代入するとこれはヤコビ恒等式であり,自動的に成り立つとわかる.

(7),(8)式のゲージ変換はまとめると

$$A^{\prime\mu}=A^{\mu}-\partial^{\mu}\Gamma\tag{18}$$

となる.これにより,field strength は

$$F^{\prime\mu\nu}=F^{\mu\nu}-(\partial^{\mu}\partial^{\nu}-\partial^{\nu}\partial ^{\mu})\Gamma\tag{19}$$

と変換される.ここで,右辺第二項は微分を交換することにより消えるので,結局

$$F^{\prime\mu\nu}=F^{\mu\nu}\tag{20}$$

となり,field strength はゲージ不変であるとわかる.

次に,マクスウェル方程式を導くようなラグランジアンを導こう.カレントは外部から与えられるとする.考える作用はローレンツ不変,ゲージ不変,パリティ不変,時間反転不変すべてを満たし,2階以上の微分を含まないものである.その唯一の候補は\(S=\int d^4x{\mathcal{L}}\),

$${\mathcal{L}}=-\frac{1}{4}F^{\mu\nu}F_{\mu\nu}+J^{\mu}A_{\mu}\tag{21}$$

である.第一項は明らかにゲージ不変である.第二項は(18)式のゲージ変換で\(J^{\mu}A_{\mu}^{\prime}\)となるが,その差は

\begin{align} J^{\mu}(A_{\mu}^{\prime}-A_{\mu})&=-J^{\mu}\partial_{\mu}\Gamma\\ &=-(\partial _{\mu}J^{\mu})\Gamma-\partial _{\mu}(J^{\mu}\Gamma)\tag{22}\end{align}

である.(22)式の一項目はカレントが保存することから0である.また,二項目は全微分項なので\(d^4x\)での積分により0になる.(無限遠での境界条件を用いる.)よって,(21)式での作用はゲージ不変である.

\(F^{\mu\nu}=\partial ^{\mu}A^{\nu}-\partial^{\nu} A^{\mu}\)を用いて(21)式を変形すると

\begin{align} {\mathcal{L}}&=-\frac{1}{2}\partial^{\mu}A^{\nu}\partial _{\mu}A_{\nu}+\frac{1}{2}\partial ^{\mu}A^{\nu}\partial_{\nu}A_{\mu}+J^{\mu}A_{\mu}\tag{23}\\ &=-\frac{1}{2}\partial^{\mu}A^{\nu}(\partial _{\mu}A_{\nu}-\partial _{\nu}A_{\mu})+J^{\mu}A_{\mu}\\
&=-\frac{1}{2}\partial^{\mu}\left\{A^{\nu}(\partial _{\mu}A_{\nu}-\partial _{\nu}A_{\mu})\right\}+\frac{1}{2}A^{\nu}(\partial^{\mu}\partial_{\mu}A_{\nu}-\partial^{\mu}\partial_{\nu}A_{\mu})+J^{\mu}A_{\mu} \\ &=+\frac{1}{2}A_{\mu}(g^{\mu\nu}\partial^2-\partial^{\mu}\partial^{\nu})A_{\nu}+J^{\mu}A_{\mu}-\partial^{\mu}K_{\mu}\tag{24}\end{align}

となる.ここで,\(K_{\mu}=\frac{1}{2}A^{\nu}(\partial_{\mu}A_{\nu}-\partial_{\nu}A_{\mu})\)である.(24)式の最後の項は全微分項なのでこれまた消えてしまう.このラグランジアンでの\(A^{\mu}\)の変分による方程式は

$$(g^{\mu\nu}\partial^2-\partial^{\mu}\partial^{\nu})A_{\nu}+J^{\mu}=0\tag{25}$$

である.

\(\partial_{\nu}F^{\mu\nu}=\partial_{\nu}(\partial^{\mu}A^{\nu}-\partial^{\nu}A^{\mu})=(\partial^{\mu}\partial^{\nu}-g^{\mu\nu}\partial^2)A_{\nu}\)に注意すると(25)式は(13)式と一致し,マクスウェル方程式になる.

Problem2.3

\begin{eqnarray}U(\Lambda)^{-1}M^{\mu\nu}U(\Lambda)=\Lambda^{\mu}_{\ \ \rho}\Lambda^{\nu}_{\ \ \sigma}M^{\rho\sigma}\tag{14}\end{eqnarray}

から

$$[M^{\mu\nu},M^{\rho\sigma}]=i\hbar\left(g^{\mu\rho}M^{\nu\sigma}-(\mu\leftrightarrow\nu)\right)-(\rho\leftrightarrow \sigma)\tag{16}$$

を示せ。

【解答】

$$U(1+\delta\omega)=I+\frac{i}{2\hbar}\delta\omega_{\mu\nu}M^{\mu\nu}$$

を用いて、\(\delta\omega\)の一次の項までで計算すると

\begin{eqnarray} U(\Lambda)^{-1}M^{\mu\nu}U(\Lambda)&=&\left(I-\frac{i}{2\hbar}\delta\omega_{\rho\sigma}M^{\rho\sigma}\right)M^{\mu\nu}\left(I+\frac{i}{2\hbar}\delta\omega_{\rho\sigma}M^{\rho\sigma}\right)\\ &=&M^{\mu\nu}+\frac{i}{2\hbar}\delta\omega_{\rho\sigma}[M^{\mu\nu},M^{\rho\sigma}] \end{eqnarray}

\begin{eqnarray} \Lambda^{\mu}_{\ \ \rho}\Lambda^{\nu}_{\ \ \sigma}M^{\rho\sigma}&=&(\delta^{\mu}_{\ \ \rho}+\delta\omega^{\mu}_{\ \ \rho})(\delta^{\nu}_{\ \ \sigma}+\delta\omega^{\nu}_{\ \ \sigma})M^{\rho\sigma}\\ &=&M^{\mu\nu}+\delta\omega^{\mu}_{\ \ \rho}M^{\rho\nu}+\delta\omega^{\nu}_{\ \ \sigma}M^{\mu\sigma}\\ &=&M^{\mu\nu}+\delta\omega_{\sigma\rho}g^{\sigma\mu}M^{\rho\nu}+\delta\omega_{\rho\sigma}g^{\rho\nu}M^{\mu\sigma}\\ &=&M^{\mu\nu}-\delta\omega_{\rho\sigma}(g^{\sigma\mu}M^{\rho\nu}-g^{\rho\nu}M^{\mu\sigma})\\ &=&M^{\mu\nu}-\frac{\delta\omega_{\rho\sigma}}{2}(g^{\sigma\mu}M^{\rho\nu}-g^{\rho\nu}M^{\mu\sigma}+g^{\sigma\mu}M^{\rho\nu}-g^{\rho\nu}M^{\mu\sigma})\\ &=&M^{\mu\nu}-\frac{\delta\omega_{\rho\sigma}}{2}(g^{\sigma\mu}M^{\rho\nu}-g^{\rho\nu}M^{\mu\sigma})-\frac{\delta\omega_{\sigma\rho}}{2}(g^{\rho\mu}M^{\sigma\nu}-g^{\sigma\nu}M^{\mu\rho})\\ &=&M^{\mu\nu}-\frac{\delta\omega_{\rho\sigma}}{2}(g^{\sigma\mu}M^{\rho\nu}-g^{\rho\nu}M^{\mu\sigma}+g^{\rho\mu}M^{\sigma\nu}-g^{\sigma\nu}M^{\mu\rho}) \end{eqnarray}

なので、\(\delta\omega\)の係数を比べる。ここで、\(\delta\omega_{\rho\sigma}\)は反対称において任意だから係数部分も反対称部分が等しいわけだが\(M^{\rho\sigma}\)が最初から反対称だから結局、係数は等しいとできて、

$$[M^{\mu\nu},M^{\rho\sigma}]=i\hbar\left(g^{\mu\rho}M^{\nu\sigma}-(\mu\leftrightarrow\nu)\right)-(\rho\leftrightarrow \sigma)\tag{16}$$

が成り立つとわかる。