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4. スピン統計定理

スピン0の自由粒子のハミルトニアンは

$$H_0=\int \tilde{dk}\ \omega \ a^{\dagger}({\bf{k}})a({\bf{k}})\tag{1}$$

で表される。ここで、\(\omega=\sqrt{{\bf{k}}^2+m^2}\)である。そして正準量子化の帰結として交換関係または反交換関係

\begin{eqnarray}[a({\bf{k}}),a({\bf{k}}^{\prime})]_{\mp}&=&0\ ,\\ \ [a^{\dagger}({\bf{k}}),a^{\dagger}({\bf{k}}^{\prime})]_{\mp}&=&0\ ,\\ \ [a({\bf{k}}),a^{\dagger}({\bf{k}}^{\prime})]_{\mp}&=&(2\pi)^32\omega\delta^3({\bf(k-k^{\prime})}) \tag{2}\end{eqnarray}

が成り立つ。もちろん、ボゾンを考えているときは交換関係、フェルミオンを考えているときは反交換関係を用いる。

ローレンツ不変で局所的な相互作用を与えるハミルトニアンを考えよう。そのためにエルミートではない場

$$\varphi^+({\bf{x}},0)\equiv \int \tilde{dk}\ e^{i{\bf{k\cdot x}}}a({\bf{k}})\tag{3}$$

とそのエルミート共役

$$\varphi^-({\bf{x}},0)\equiv \int \tilde{dk}\ e^{-i{\bf{k\cdot x}}}a^{\dagger}({\bf{k}})\tag{3}$$

を用いると便利である。

Baler-Campbell -Hausdorffの公式を用いて\(\varphi^{+}\)の時間発展を計算すると

\begin{eqnarray}&&e^{iH_0t}\varphi^+({\bf{x}},0)e^{-iH_0t}\\&=&e^{iH_0t}\int \tilde{dk}\ e^{i{\bf{k\cdot x}}}a({\bf{k}})e^{-iH_0t}\\ &=&\int \tilde{dk}\ e^{i{\bf{k\cdot x}}}e^{iH_0t}a({\bf{k}})e^{-iH_0t}\\ &=&\int \tilde{dk}\ e^{i{\bf{k\cdot x}}}\left\{a({\bf{k}})+\left[iH_0t,a({\bf{k}})\right]_{\mp}+\frac{1}{2!}\left[iH_0t,\left[iH_0t,a({\bf{k}})\right]_{\mp}\right]_{\mp}+\cdots\right\}\\ &=&\int \tilde{dk}\ e^{i{\bf{k\cdot x}}}a({\bf{k}})\left\{1+(-it\omega)+\frac{(-it\omega)^2}{2!}+\frac{(-it\omega)^3}{3!}+\cdots\right\}\\ &=&\int \tilde{dk}\ e^{i{\bf{k\cdot x}}}a({\bf{k}})e^{-it\omega}\\ &=&\int \tilde{dk}\ e^{ikx}a({\bf{k}}) \end{eqnarray}

となる。ここで、

\begin{eqnarray}[iH_0t,a({\bf{k}})]_{\mp}&=&it\int\tilde{dk}^{\prime}\ \omega\ [a^{\dagger}({\bf{k}}^{\prime})a({\bf{k}}^{\prime}),a({\bf{k}})]_{\mp}\\ &=& it\int\tilde{dk}^{\prime}\ \omega\ [a^{\dagger}({\bf{k}}^{\prime}),a({\bf{k}})]_{\mp}a({\bf{k}}^{\prime})\\ &=&-it\int\tilde{dk}^{\prime}\ \omega \ (2\pi)^32\omega\delta({\bf{k^{\prime}-k}})a({\bf{k}})^{\prime}\\ &=&-it\omega a({\bf{k}}) \end{eqnarray}

を用いた。\(\varphi^-\)も同じように計算すればよく、まとめると

\begin{eqnarray} \varphi^+({\bf{x}},t)&=&e^{iH_0t}\varphi^+({\bf{x}},0)e^{-iH_0t}=\int \tilde{dk}\ e^{ikx}a({\bf{k}})\\ \varphi^-({\bf{x}},t)&=&e^{iH_0t}\varphi^-({\bf{x}},0)e^{-iH_0t}=\int \tilde{dk}\ e^{-ikx}a^{\dagger}({\bf{k}})\tag{5} \end{eqnarray}

となる。ここで、\(\varphi(x)= \varphi^+(x)+ \varphi^-(x) \)が成り立つことを注意しておく。

さらにproper orthochronous なローレンツ変換\(\Lambda\)により、\(\varphi(x)\)は

$$U(\Lambda)^{-1}\varphi(x)U(\Lambda)=\varphi(\Lambda^{-1}x)$$

で変換するのであった。また、Problem3.3より、生成消滅演算子も同じように変換する。

\begin{eqnarray}U(\Lambda)^{-1}a({\bf{k}})U(\Lambda)=a(\Lambda^{-1}{\bf{k}}),\\ U(\Lambda)^{-1}a^{\dagger}({\bf{k}})U(\Lambda)=a^{\dagger}(\Lambda^{-1}{\bf{k}}) \tag{7}\end{eqnarray}

よって、定義より\(\varphi^{\pm}(x)\)も同じように変換する。

$$U(\Lambda)^{-1}\varphi^{\pm}(x)U(\Lambda)=\varphi^{\pm}(\Lambda^{-1}x)\tag{8}$$

さて、相互作用を表すラグランジアン密度を\(\varphi^+(x)\)と\(\varphi^-(x)\)のエルミート関数と置くことにする。

量子力学での時間依存した摂動の結果を用いると、\(t=-\infty\)での始状態\(|i\rangle\)と\(t=+\infty\)での終状態の遷移振幅\({\mathcal{T}}_{f\leftarrow i}\)は

$${\mathcal{T}}_{f\leftarrow i}=\langle f |T\exp\left[-i\int^{+\infty}_{-\infty}dt H_I(t)\right]|i\rangle\tag{9}$$

で書ける。ここで\(H_I(t)\)は相互作用描像での摂動ハミルトニアン

$$H_I(t)=\exp(+iH_0t)H_1\exp(-iH_0t)\tag{10}$$

である。また、\(T\)はtime ordering symbolである。さらにハミルトン密度\({\mathcal{H}}_1({\bf{x}},0)\)を\(\varphi^+({\bf{x}},0)\)と\(\varphi^-({\bf{x}},0)\)のエルミート関数として\(H_I=\int d^3x {\mathcal{H}}_1({\bf{x}},0)\)と書くことにする。時間発展の形は\(\varphi^{\pm}(x)\)と\({\mathcal{H}}_I(x)\)で同じなので\({\mathcal{H}}_I(x)\)は\(\varphi^{\pm}(x)\)を入力として\({\mathcal{H}}_1({\bf{x}},0)\)と同じ関数形で書ける。

さて、\({\mathcal{T}}_{f\leftarrow i}\)はローレンツ不変でないといけない。そのためにはtime ordering symbol もローレンツ不変でなければならない。timelikeな二点\(x,x^{\prime}\)に対しては\((x-x^{\prime})^2<0\)がローレンツ不変であるからどのような慣性系から見ても時間順序は変わらない。(時間順序が変わるためにはある速度で同時刻にならなくてはいけないがそれでは\((x-x^{\prime})^2<0\)がローレンツ不変であることに矛盾する。)spacelike な二点\(x,x^{\prime}\)に関してはローレンツ変換によって時間順序が変わる可能性がある。これでも\({\mathcal{T}}_{f\leftarrow i}\)がローレンツ不変であるために

$$[{\mathcal{H}}_I(x),{\mathcal{H}}_I(x^{\prime})]=0\ \ {\rm{whenever}}\ \ (x-x^{\prime})^2>0\tag{11}$$

が成り立つべきである。spacelikeな二点では\([\varphi^+(x), \varphi ^{+}(x^{\prime})]_{\mp}=[ \varphi ^{-}(x), \varphi ^-(x^{\prime})]_{\mp}=0\)であるから\([ \varphi ^+(x), \varphi ^-(x^{\prime})]_{\mp}\)のみ考えればよい。\((x-x^{\prime})^2\equiv r^2\)とおいて、\(x_0-x_0^{\prime}=0\)となる慣性系で計算すると

\begin{eqnarray}[ \varphi ^+(x), \varphi ^-(x^{\prime})]_{\mp}&=&\int \tilde{dk}\tilde{dk}^{\prime}e^{i(kx-k^{\prime}x^{\prime})}[a({\bf{k}}),a^{\dagger}({\bf{k}}^{\prime})]_{\mp}\\ &=&\int \tilde{dk}\ e^{ik(x-x^{\prime})}\\ &=&\int \frac{d^3k}{(2\pi)^32\omega}\ e^{i{\bf{k\cdot(x-x^{\prime})}}}\\ &=&\frac{2\pi}{2(2\pi)^3}\int^{\infty}_0\frac{dk\ k^2}{\omega}\int^{+1}_{-1}d\cos \theta \ e^{ikr\cos \theta}\\ &=&\frac{1}{8\pi^2}\int^{\infty}_0\frac{dk\ k^2}{\omega}\frac{2\sin (kr)}{kr}\\ &=&\frac{1}{4\pi^2 r}\int^{\infty}_0dk \frac{k\sin (kr)}{(k^2+m^2)^{1/2}}\\ &=&\frac{m}{4\pi^2r}K_1(mr)\\ &\equiv&C(r) \tag{12}\end{eqnarray}

ここで、\(K_1(z)\)は第二種変形ベッセル関数である。関数\(C(r)\)は\(r>0\)であれば0にはならない。(\(m=0\)のときでさえ、0にならない。(Problem4.1))よって、一般には(11)を満たすことはできないだろうという結論に至る。

そこで、この問題を解決するために\(\varphi^{\pm}\)はある特別な線形結合の形

\begin{eqnarray} \varphi_{\lambda}(x)&\equiv& \varphi^+(x)+\lambda\varphi^-(x)\\ \varphi^{\dagger}_{\lambda}(x)&\equiv& \varphi^-(x)+\lambda^*\varphi^+(x) \tag{13}\end{eqnarray}

でしか理論に入らないという仮定をする。ここで、\(\lambda\)は任意の複素数である。\(\varphi_{\lambda}\)で交換関係を計算すると

\begin{eqnarray} [\varphi_{\lambda}(x),\varphi_{\lambda}^{\dagger}(x^{\prime})]_{\mp}&=&[\varphi^+(x),\varphi^-(x^{\prime})]_{\mp}+|\lambda|^2[\varphi^-(x),\varphi^+(x^{\prime})]_{\mp}\\ &=&(1\mp |\lambda|^2)C(r)\tag{14} \end{eqnarray}

\begin{eqnarray}[\varphi_{\lambda}(x),\varphi_{\lambda}(x^{\prime})]_{\mp}&=&\lambda[\varphi^+(x),\varphi^-(x^{\prime})]_{\mp}+\lambda[\varphi^-(x),\varphi^+(x^{\prime})]_{\mp}\\ &=&\lambda(1\mp 1)C(r) \tag{15}\end{eqnarray}

となる。これが0であるためには\(|\lambda|=1\)であり、交換関係を選ばなければならないことがわかる。

ここで、\(\lambda=e^{i\alpha}\)と書くことにして\(e^{-\alpha/2}\varphi(x)\)を考えてみよう。するとこれはエルミートであり、実スカラー場になっていることが分かる。そこでさらに\(a({\bf{k}})\to e^{+i\alpha/2} a({\bf{k}}) \),\( a^{\dagger}({\bf{k}})\to e^{-i\alpha/2} a^{\dagger}({\bf{k}}) \)と置き換えると(2)の交換関係は変わらないまま

$$e^{-i\alpha/2}\varphi_{\lambda}(x)=\varphi(x)=\varphi^+(x)+\varphi^-(x)$$

となる。つまり、結論を述べるとハミルトニアンは最初から実スカラー場\(\varphi(x)\)や\(\partial^{\mu}\varphi(x)\partial_{\mu}\varphi(x)\)で構成し、交換関係を選ぶことが散乱振幅がローレンツ不変であることから要請されるわけである。

EGMO2019問4

今まで、EGMOの問題は解いたことが無かったのですが、このブログを始めてみたことや、EGMOの記事が読みたいという読者様からのご要望などもあったこと、そして純粋な競技数学への興味などから、とりあえず今年のEGMOの問題を解いてみました。
まだ解き始めたばかりでどこまで記事に出来るかはわかりませんが、今後はEGMOの問題にも手をつけていければと思っております。

というわけで記念すべき初回は初等幾何の問題です!問題はこちら。

【問】\(\triangle ABC\)の内心を\(I\)とし、\(B\)を通り\(I\)で直線\(AI\)に接する円と\(AB\)の交点のうち\(B\)でない方を\(P\)、\(C\)を通り\(I\)で直線\(AI\)に接する円と\(AC\)の交点のうち\(C\)でない方を\(Q\)、とする。直線\(PQ\)は\(\triangle ABC\)の内接円\(I\)に接することを示せ。

内接円の中心\(I\)を接点とする円が2つもあること、そして、示したいことは「直線が円に接すること」。
この2つから僕は、内接円を反転円とする反転を考えてみました。
(反転の基礎事項についてはJJMO本選2019問5の記事の補足欄をご覧ください。)
では、やってみましょう。

【略解】
円\(I\)を反転円とする点\(A\)の反転後の点を\(A^{\prime}\)のように表すことにする。
直線\(PQ\)および内接円\(I\)の反転後の図形である円\(P^{\prime}Q^{\prime}I\)と内接円\(I\)が接することを示せばよい。

内接円半径を\(r\)とおくと、この反転により、

直線\(BC\),直線\(APB\),直線\(AQC\)は\(I\)からの距離が\(r\)の直線なので、それぞれ、\(BC,CA,AB\)に接する円にうつる。すなわち、

円\(IB^{\prime}C^{\prime}\),円\(IB^{\prime}P^{\prime}A^{\prime}\),円\(IC^{\prime}Q^{\prime}A^{\prime}\)はどれも直径\(r\)の円である。\(\cdots①\)

また、円\(BPI\)と円\(CQI\)は直線\(AI\)に点\(I\)で接するので、これらの反転後の図形を考えると、(\(A^{\prime}\)はもちろん直線\(AI\)上にあり、)

直線\(P^{\prime}B^{\prime}\)と直線\(Q^{\prime}C^{\prime}\)は直線\(AA^{\prime}I\)と平行となる。\(\cdots②\)

\(①②\)より、図のよう、4角形\(IB^{\prime}P^{\prime}A^{\prime}\)と4角形\(IC^{\prime}Q^{\prime}A^{\prime}\)は円に内接する台形なので等脚台形。ここから\(\triangle IP^{\prime}Q^{\prime}\equiv\triangle A^{\prime}B^{\prime}C^{\prime}\)がわかるので、

円\(\triangle IP^{\prime}Q^{\prime}\)と円\(A^{\prime}B^{\prime}C^{\prime}\)の半径は等しい。\(\cdots③\)

ところで\(①\)より、円\(IB^{\prime}C^{\prime}\),円\(IB^{\prime}P^{\prime}A^{\prime}\),円\(IC^{\prime}Q^{\prime}A^{\prime}\)の中心をそれぞれ\(O_1,O_2,O_3\)とすれば、\(O_1B^{\prime}O_2I,O_2A^{\prime}O_3I,O_3C^{\prime}O_1I\)は一辺\(r/2\)のひし形となる。
ここで、\(O_1B^{\prime}OC^{\prime}\)が一辺\(r/2\)のひし形となるように点\(O\)をとれば、\(OC^{\prime},B^{\prime}O_1,O_2I,A^{\prime}O_3\)は平行かつ長さが\(r/2\)となるので、\(OC^{\prime}O_3A^{\prime}\)は一辺\(r/2\)のひし形となる。
以上より、\(OA^{\prime}=OB^{\prime}=OC^{\prime}=r/2\)となり、\(\triangle A^{\prime}B^{\prime}C^{\prime}\)の外接円は中心\(O\),半径\(r/2\)の円である。

(注)この図は立方体が浮かび上がっているみたいですね!このように、半径が等しい円が一点で交わるとき、2円の交点3つを通る円の半径は元の円の半径となるのは有名な事実です。

\(③④\)より、円\(IP^{\prime}Q^{\prime}\)の半径は\(r/2\)で、内接円\(I\)の半径は\(r\)。その差\(r/2\)は中心間距離(すなわち円\(IP^{\prime}Q^{\prime}\)の半径)\(r/2\)に等しいので、円\(IP^{\prime}Q^{\prime}\)と内接円Iは接する。
∴反転前の図形を考えて、直線\(PQ\)と内接円\(I\)は接する。

このように、反転後の世界の図を描いて、綺麗な性質を見つけていくのが反転の楽しいところです。反転に最近、はまり始めたので今回は反転を用いた方針が真っ先に思い付きましたが、元の図であっても

・(方べきの定理とその逆を使えば実は)\(B,C,P,Q\)は同一円周上
・(結論から最終的には)内接円\(I\)は\(\triangle APQ\)の傍接円にもなるはず

などの様々な性質がありますから、反転を使わない方針もあるかもしれません。別解・感想などがありましたら、是非、コメントをお送りください!

JMO予選1991問3

\(\triangle ABC\)の重心を\(G\)とする。\(GA=2\sqrt{3},GB=2\sqrt{2},GC=2\)が成り立つとき、\(\triangle ABC\)の面積を求めよ。

【解法】

発想を必要とする初等幾何の計量問題では、角度にしろ長さにしろ図形の状況より「数値」がヒントとなっていることも多いです。
今回の場合、\(GA^2=GB^2+GC^2\)より、\(GA,GB,GC\)を三辺とする3角形は直角三角形であることがわかります。よって、\(GA,GB,GC\)を三辺とする直角三角形を実際に図の中に作ってみましょう。
「中線は\(2\)倍に伸ばせ」(そうすれば平行四辺形が出来る)という格言もありますし、\(BC\)の中点を\(M\)とすると重心の性質より、\(AG:GM=2:1\)ですから、\(GM\)を\(M\)の方に\(2倍\)に伸ばし、その先の点を\(D\)としてみましょう。すると、\(GD=2\sqrt{3}\)となり、さらに\(GBDC\)が平行四辺形(∵対角線が中点で交わる)となることから、\(BD=2\)もわかります。

\(∴\ \triangle BDG\)は3辺が\(2,2\sqrt{2},2\sqrt{3}\)の直角三角形となりました!ちなみにその面積は\(2\sqrt{2}\)ですね。
ここまで来ればもう求まったも同然です。\(GBDC\)が平行四辺形であることから\(\triangle GBC=\triangle BDG=2\sqrt{2}\)となることと、\(G\)が\(\triangle ABC\)の重心であるから\(\triangle GBC=\triangle GCA=\triangle GAB\)であることを考えれば、\( \triangle ABC=2\sqrt{2}\times3=6\sqrt{2}\)となりますね!

それではもう1問、僕が昔に出会って感動した、似たような考え方で出来る問題を考えてみましょう。昔に出会った問題すぎて、出典がどこだったかもはや覚えていないのですが、そこそこ有名な問題らしいので、知ってる人も多いかも知れません。

Q.正三角形\(ABC\)の内部の点\(P\)は\(PA=3,PB=4,PC=5\)を満たす。\(\triangle ABC\)の面積を求めよ。

\(3\)辺が\(3,4,5\)の直角三角形を作りたいですね。回転合同のお時間です。
\(\triangle APB\)を\(A\)中心に\(60^{\circ}\)回転して出来る三角形を\(\triangle ADC\)としましょう。\(DC=4\)となり、\(\triangle APD\)は一辺\(3\)の正三角形となることから\(\triangle PCD\)が\(3\)辺が\(3,4,5\)の直角三角形となりました!


同様に\(\triangle BPC\)を\(B\)中心に\(60^{\circ}\)回転して\(\triangle BEA\)を、\(\triangle CPA\)を\(C\)中心に\(60^{\circ}\)回転して\(\triangle CFB\)を作ることにより、六角形\(AEBFCD\)が完成しますが、この作り方により、六角形の面積は\(\triangle ABC\)の面積の\(2\)個分です。

一方で、さっきのように直角三角形および正三角形が現れることから、図のようにこの六角形は一辺\(3\)の正三角形、一辺\(4\)の正三角形、一辺\(5\)の正三角形、\(3\)辺が\(3,4,5\)の直角三角形\(3\)個で構成されていることから面積が

$$\frac{\sqrt{3}}{4}(3^2+4^2+5^2)+3×4÷2×3=\frac{25\sqrt{3}}{2}+18$$

と求まりますから、\(\triangle ABC\)の面積はこの半分の\(\frac{25\sqrt{3}}{4}+9\)とわかります!
無理矢理三角形を作るところがなんだかパズルみたいで楽しいですね。

JMO予選1991問4

$$\frac{1}{x+1}+\frac{1}{y}+\frac{1}{(x+1)y}=\frac{1}{1991}\cdots①$$
の自然数解の個数を求めよ。

【略解】

まずは分母を払い、式を整理してみましょう。

\begin{eqnarray}①&⇔&1991(y+x+1+1)=(x+1)y\\&⇔&xy-1991x-1990y=1991\times2\\ &⇔&(x-1990)(y-1991)=1991\times1992\end{eqnarray}

この最後の変形は、よくある受験数学の問題の基本ですね。\(x,y\)の値は\(x-1990\)と\(y-1991\)の値と一対一対応しており、\(x-1990\)と\(y-1991\)はかけて\(1991\times1992\)となる自然数ですから、結局求める個数は\(1991\times1992\)の正の約数の個数です。

\begin{eqnarray} 1991&=&11\times181 \\1992&=&2^3\times3\times83 \end{eqnarray}

ですから
$$ 1991\times 1992=2^3\times3\times11\times83\times181$$
より、求める個数は\(4\times2\times2\times2\times2=64\)となりますね。

このように、下手なことを考えず、受験数学的にやればできると思ったときはそのままやってしまうことも時には重要です。似たような例をもう1問見てみましょう。

Q.

$$\frac{201}{a}+\frac{3}{b}$$

が自然数となる自然数の組\((a,b)\)の個数を求めよ。
(JJMO予選2013問8)

中学生の問題とはいえ侮れません。
\(a,b,n\)の方程式

$$\frac{201}{a}+\frac{3}{b}=n\cdots①$$

の自然数解の個数を求めると考えれば先ほどの問題のちょっとした応用ですね。

\begin{eqnarray} ①&⇔&3a+201b=abn\\&⇔&abn^2-3an-201bn=0\\&⇔&(an-201)(bn-3)=603\end{eqnarray}

\(an-201\)と\(bn-3\)はかけて\(603\)となる正の整数ですから、

$$ (an-201,bn-3)=(1,603),(3,201),(9,67),(67,9),(201,3),(603,1)$$


にしぼれ、

$$ (an,bn)=(202,606),(204,204),(210,70),(268,12),(402,6),(804,4)\cdots②$$


となります。よって、\(a,b,n\)の自然数の個数は、一般に、\((an,bn)=(x,y)\)のとき、\(n\)が\(x,y\)の公約数となることを考えれば、\((a,b,n)\)の個数は\(x,y\)の最大公約数の正の約数の個数となることから、②より求める個数は、\(4+12+8+3+4+3=34\)個とわかりますね。
中学生にとっては、このような受験数学でよくある不定方程式の式変形は慣れていないでしょうし、なかなか難しい問題だったかもしれません。
このような典型問題として処理できる問題は学年が上であるほど落としたくないですね。

Problem1.1

ディラック行列の次元\(n\)は偶数でなければならないことを示せ。

【略解】

ディラック行列の定義より

$$\alpha^j\alpha^k=-\alpha^k\alpha^j$$

である。両辺\(\det\)を取って

$$\det(\alpha^j)\det(\alpha^k)=(-1)^n\det(\alpha^k)\det(\alpha^j)$$

となる。よって\((-1)^n=1\)なので\(n\)は偶数である。

1. 相対論的量子力学の試み

量子力学と相対論の復習から始める。

量子力学は次のような公理の基で始めることができる。

「系の状態はヒルベルト空間のベクトル、オブザーバブルはそのエルミート演算子、そのオブザーバブルの値はこの演算子の固有値で記述される。」

また、系の状態の時間発展はシュレディンガー方程式

$$i\hbar \frac{\partial}{\partial t}|\psi,t\rangle=H|\psi,t\rangle\tag{1}$$

により行われる。ここで、\(H\)はハミルトニアン演算子である。

スピン0の非相対論的な相互作用のない最もシンプルな系を考える。この系ではハミルトニアンは

$$H=\frac{1}{2m}{\bf{P}}^2\tag{2}$$

である。ここで、\(m\)は粒子の質量で\({\bf{P}}\)は運動量演算子である。座標表示でシュレディンガー方程式を表すと

$$i\hbar \frac{\partial}{\partial t}\psi({\bf{x}},t)=-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2\psi({\bf{x}},t)\tag{3}$$

と書ける。

これを相対論的なものに拡張したい。単純には相対論的なエネルギー運動量である

$$H=+\sqrt{{\bf{P}}^2c^2+m^2c^4}\tag{4}$$

から始めることである。これを展開すると

\begin{eqnarray} H&=&+\sqrt{{\bf{P}}^2c^2+m^2c^4}\\ &=&mc^2\sqrt{1+\frac{{\bf{P}}^2}{m^2c^2}}\\ &=&mc^2+\frac{1}{2m}{\bf{P}}^2+\cdots \tag{5}\end{eqnarray}

となり、静止エネルギーと非相対論的なエネルギーと補正項の和となる。このハミルトニアンを用いるとシュレディンガー方程式は

$$i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\psi({\bf{x}},t)=+\sqrt{-\hbar^2c^2\nabla^2+m^2c^4}\psi({\bf{x}},t)\tag{6}$$

に変わる。しかし、この方程式はいくつかの難点がある。

  • 時間と空間が対称ではない

これは式を見たら明らかである。時間微分は左辺にしかなく、空間微分は右辺のルートの中にしかない。これは相対論の要求を満たしていない。

  • 方程式が局所的でない

右辺のルートを展開すると空間微分が無限回出てくる。これでは、同時刻で異なる2点以上が影響するので因果律を破ってしまう。

これらの問題を解決するためには両辺の波動関数以外を2乗すればよい。つまり、方程式

$$-\hbar^2\frac{\partial^2}{\partial t^2}\psi({\bf{x}},t)=\left(-\hbar^2c^2\nabla^2+m^2c^4\right)\psi({\bf{x}},t)\tag{7}$$

を考える。これはクラインゴルドン方程式と呼ばれるもので先ほどの困難は解消されている。

まず、この方程式が異なる慣性系同士で同じ形式で表されることを確認しよう。そのためにまず、時空の設定から始めよう。この本を通して時空の座標を\((ct,{\bf{x}})\)とする。つまり、\(x^0=ct\)として\(x^{\mu}(\mu=0,1,2,3)\)で時空の一つの点を表すことにする。

さらに下付き添え字で\(x_0=-x^0,x_i=x^i(i=1,2,3)\)という風に\(x_{\mu}\)を定義する。これはミンコフスキー計量

$$g_{\mu\nu}=
\left( \begin{array}{cccc} -1 & & & \\ & +1 & & \\ & & +1& \\ &&&+1 \end{array} \right) \tag{8}$$

(空白部はすべて0)を用いると\(x_{\mu}=g_{\mu\nu}x^{\nu}\)というように表される。ここで、アインシュタインの縮約記法を用いている。

さらに

$$g^{\mu\nu}=
\left( \begin{array}{cccc} -1 & & & \\ & +1 & & \\ & & +1& \\ &&&+1 \end{array} \right) \tag{9}$$

としておく。 こうすることで

$$g^{\mu\nu}g_{\nu\rho}=\delta^{\mu}_{\ \ \rho},\ \ \ x^{\mu}=g^{\mu\nu}x_{\nu}$$

が成り立つとわかる。(つまり、\(g\)により添え字の上げ下げができる。)

さて、話を戻すと二つの慣性系\(x^{\mu},\bar{x}^{\mu}\)はローレンツ変換と並進変換で移りあうから

$$\bar{x}^{\mu}=\Lambda^{\mu}_{\ \ \nu}x^{\nu}+a^{\mu}\tag{10}$$

のような関係である。ここで、\(\Lambda^{\mu}_{\ \ \nu}\)はローレンツ変換を表す行列なので高速度不変の原理から

$$g_{\mu\nu}\Lambda^{\mu}_{\ \ \rho}\Lambda^{\nu}_{\ \ \sigma}=g_{\rho\sigma}\tag{11}$$

が成り立つ。この変換の下で時空の二点間の距離が保存されることが簡単に確認できる。

\begin{eqnarray}(\bar{x}-\bar{x}^{\prime})^2&=&g_{\mu\nu}(\bar{x}-\bar{x}^{\prime})^{\mu}(\bar{x}-\bar{x}^{\prime})^{\nu}\\&=&g_{\mu\nu}\Lambda^{\mu}_{\ \ \rho}\Lambda^{\nu}_{\ \ \sigma}(x-x^{\prime})^{\rho}(x-x^{\prime})^{\sigma}\\&=&g_{\rho\sigma}(x-x^{\prime})^{\rho}(x-x^{\prime})^{\sigma}\\&=&(x-x^{\prime})^2\tag{13}\end{eqnarray}

ここで、差を取っている部分で並進変換が打ち消されていることに注意する。

座標系を変えたらもちろん、波動関数の関数の形も変わる。そこで新たに慣性系\(\bar{x}^{\mu}\)での波動関数を\(\bar{\psi}(\bar{x})=\psi(x)\)と書くことにする。

また、時空による微分を次のように定義することにする。

\begin{eqnarray}\partial_{\mu}&\equiv&\frac{\partial}{\partial x^{\mu}}=\left(+\frac{1}{c}\frac{\partial}{\partial t},\nabla\right),\tag{14}\\ \partial^{\mu}&\equiv&\frac{\partial}{\partial x_{\mu}}=\left(-\frac{1}{c}\frac{\partial}{\partial t},\nabla\right)\tag{15}\end{eqnarray}

もちろんこれは

$$\partial^{\mu}x^{\nu}=g^{\mu\nu}\tag{17}$$

が成り立つように定義している。また、偏微分は次のように変換する。

\begin{eqnarray}\bar{\partial}^{\mu}=\frac{\partial}{\partial \bar{x}_{\mu}}&=&g^{\mu\nu}\frac{\partial}{\partial\bar{x}^{\nu}}\\&=&g^{\mu\nu}(\Lambda^{-1})^{\rho}_{\ \ \nu}\frac{\partial}{\partial x^{\rho}}\\&=&g^{\mu\nu}\Lambda_{\nu}^{\ \ \rho}\frac{\partial}{\partial x^{\rho}}\\&=&\Lambda^{\mu}_{\ \ \rho}\frac{\partial}{\partial x_{\rho}}\\&=&\Lambda^{\mu}_{\ \ \rho}\partial^{\rho}\tag{17}\end{eqnarray}

ここで、

$$\frac{\partial x^{\nu}}{\partial \bar{x}^{\mu}}=(\Lambda^{-1})^{\nu}_{\ \ \mu}$$

に注意する。(4つ目の=は2章を参照)

これらの変換性から

\begin{eqnarray}\bar{\partial}^{\rho}\bar{x}^{\sigma}&=&(\Lambda^{\rho}_{\ \ \mu}\partial^{\mu})(\Lambda^{\sigma}_{\ \ \nu}x^{\nu}+a^{\sigma})\\&=&\Lambda^{\rho}_{\ \ \mu}\Lambda^{\sigma}_{\ \ \nu}(\partial^{\mu}x^{\nu})\\&=&\Lambda^{\rho}_{\ \ \mu}\Lambda^{\sigma}_{\ \ \nu}g^{\mu\nu}=g^{\rho\sigma}\tag{18}\end{eqnarray}

であることが分かる。

さて、ここで定義した微分記号を用いてクラインゴルドン方程式(7)を表すと

$$-\hbar^2c^2\partial^2_0\psi(x)=(-\hbar^2c^2\nabla^2+m^2c^4)\psi(x)\tag{19}$$

となる。さらに\(\partial^2\equiv\partial^{\mu}\partial_{\mu}=-\partial_0^2+\nabla^2\)を用いると

$$\left(-\partial^2+\frac{m^2c^2}{\hbar^2}\right)\psi(x)=0\tag{21}$$

と表すことができる!(このように表した方がより、時間と空間の対称性がよく見える!)

この方程式が異なる慣性系でも同じ形なのは簡単に確かめられる。

\(x^{\mu}\rightarrow \bar{x}^{\mu}\)への変換により

$$\bar{\partial}^2=g_{\mu\nu}\bar{\partial}^{\mu}\bar{\partial}^{\nu}=g_{\mu\nu}\Lambda^{\mu}_{\ \ \rho}\Lambda^{\nu}_{\ \ \sigma}\partial^{\rho}\partial^{\sigma}=g_{\rho\sigma}
\partial^{\rho}\partial^{\sigma} =\partial^2\tag{22}$$

となるので方程式(20)は異なる慣性系に移ると

$$ \left(-\bar{\partial}^2+\frac{m^2c^2}{\hbar^2}\right)\bar{\psi}(\bar{x})=0\tag{22} $$

となり、方程式の形が変わらないことが分かる!これはクラインゴルドン方程式のもっとも素晴らしいところではないだろうか。

しかし、もちろん、この方程式は我々の求めている方程式ではない。なぜなら、クラインゴルドン方程式ではシュレディンガー方程式のように確率解釈ができないのである。

理由は簡単でクラインゴルドン方程式は時間に関して二階微分を含むことによる。つまり、それが原因で確率密度\(\rho\)は時間の一階微分を含むことになる。よって、確率密度が0以上であるという確率解釈の最も基本的なことが壊れてしまうのである。

ディラックはこの問題を解決するために新たな離散変数(スピン変数)を導入することでクラインゴルドン方程式を一階の微分方程式にできないかと考えた。そこで少し強引ではあるが次のような方程式を考える。

$$i\hbar \frac{\partial}{\partial t}\psi_a(x)=\left(-i\hbar c(\alpha ^j)_{ab}+mc^2(\beta)_{ab}\right)\psi_b(x)\tag{24}$$

ここで、\(a,b\)はスピン変数で\(a,b=1,2\)の値を取る。(正確にはスピン変数がいくつかはこの時点ではわからない。)つまり、\(\alpha^j,\beta\)はスピン変数に対する行列である。(24)式からわかるようにハミルトニアンに対応するのは

$$H_{ab}=cP_j(\alpha^j)_{ab}+mc^2(\beta)_{ab}\tag{25}$$

の部分である。この部分が相対論的なエネルギーに対応するように平方してみる。

$$(H^2)_{ab}=c^2P_jP_k(\alpha^j\alpha^k)_{ab}+mc^3P_j(\alpha^j\beta+\beta\alpha^j)_{ab}+(mc^2)^2(\beta^2)_{ab}\tag{26}$$

ここで、\(\alpha^j,\beta\)は互いに交換するとは限らないことに注意しよう。\(P_jP_k\)は\(j,k\)に関して対称なので、\(\alpha^j\alpha^k\)の対称部分のみ残るので、(26)で\(\alpha^j\alpha^k\)は\(\frac{1}{2}\{\alpha^j,\alpha^k\}\)に置き換えてもよい。ここで\(\{A,B\}=AB+BA\)である。

よって、

$$\{\alpha^j,\alpha^k\}_{ab}=2\delta^{jk}\delta_{ab},\ \ \{\alpha^j,\beta\}_{ab}=0,\ \ (\beta^2)_{ab}=\delta_{ab}\tag{27}$$

が成り立つとき、(26)は

$$(H^2)_{ab}=({\bf{P}}^2c^2+m^2c^4)\delta_{ab}\tag{28}$$

となり、相対論的なエネルギーに対応する。つまり、(27)を満たすように\(\alpha^j,\beta\)を取れれば相対論的量子力学の1階微分方程式を得られたのである!方程式(24)はディラック方程式と呼ばれ、行列\(\alpha^j,\beta\)はディラック行列と呼ばれる。

次にディラック行列を具体的に求めてみよう。これまでスピン自由度は2として考えてきたが実は\(2\times2\)行列では(27)を満たす\(\alpha^j,\beta\)を作ることはできない。例えばパウリ行列\(\sigma^i\)は\(\{\sigma^i,\sigma^j\}=2\delta^{ij}\)を満たすので\(\alpha^j\)になりうる。しかし、この三つと反交換関係をみたす\(\beta\)は存在しないのである。(すべての\(2\times 2\)は単位行列とパウリ行列で展開できることから簡単に示せます。)また、Problem1.1より、ディラック行列の次数は偶数次なので2次元の次に小さいのは4次元である。これはスピン状態が2種類存在することを示唆している。

ディラック行列のトレースについて考える。まず、\(\beta^2=I\)なので\(\beta\)の固有値の2乗は\(1\)である。(\(\beta\)を対角化したと考えるとわかる。)つまり、\(\beta\)の固有値は\(\pm 1\)のどちらかである。ここで、ディラック行列の性質とトレースの性質を用いると

$${\rm{Tr}}(\beta)=
{\rm{Tr}} ((\alpha^1)^2\beta)=
{\rm{Tr}} (\alpha^1\beta\alpha^1)=
-{\rm{Tr}} ((\alpha^1)^2\beta)=
-{\rm{Tr}}(\beta) $$

なので、\( {\rm{Tr}} (\beta)=0\)であることがわかる。また、同じ要領で\(
{\rm{Tr}} (\alpha^j)=0\)である。

次に(25)のハミルトニアンに対するエネルギー固有値について考える。固有状態\(\tilde{\psi}_{E}\)を

$$H\tilde{\psi}_{E}=E\tilde{\psi}_{E}$$

のように書いておく。さらに\([H,P]=0\)なので、同時固有状態を取ることができ、それを\(\omega(E,{\bf{p}})\)と置く。つまり、

$$\psi({\bf{x}},t)=\omega(E,{\bf{p}})e^{\frac{-iEt}{\hbar}}e^{\frac{i{\bf{p}}\cdot{\bf{x}}}{\hbar}}$$

とする。このようにすると

\begin{eqnarray} E\omega&=&(c\ {\boldsymbol{\alpha}}\cdot{\bf{p}}+mc^2\beta)\omega\\ E^2&=&c^2{\bf{p}}^2+(mc^2)^2 \end{eqnarray}

(ここでの\({\bf{p}}\)は演算子ではなく、運動量固有値)とできる。よって、\(\alpha^j,\beta\)がトレースレスからハミルトニアンもトレースレスなので\(E({\bf{p}})=+\sqrt{{\bf{p}}^2c^2+m^2c^4}\)とおくとエネルギー固有値は \(+E({\bf{p}}), +E({\bf{p}}) ,- E({\bf{p}}) ,- E({\bf{p}}) \)の4つだとわかる。

この負のエネルギー状態が無限にあることは明らかに問題である。基底状態が定まらないのでこれではすべての状態が不安定という物理的にやばい状態になる。

ディラックはフェルミ粒子についてはディラックの海という解釈により、この問題の解決策を提示した。しかし、これではフェルミ粒子の説明にしかなっていないので満足のいくものではなかった。

実はディラック方程式も我々の求めている方程式ではない。そもそもとして次のような問題がある。量子力学の公理としてオブザーバブルはエルミート演算子で表されるというものがあったが時間\(t\)はこれに当てはまらないのである!また、相対論的にも\({\bf{x}}\)は演算子だが\(t\)が単なるパラメータというのはどうも対等に扱っていないように思える。

これを解決するには二つの方法がある。

  • \(t\)を演算子にする

幸運なことに粒子の運動を考えるとき、時間は二種類存在する。系の時間\(t\)と固有時間\(\tau\)である。よって、運動のパラメータとして\(\tau\)を選択して系の時間\(t\)は演算子にして位置と対等に扱うということだ!!!(ストリングを考えるときに使う。)

  • 位置もパラメータと考える

位置を量子場\(\varphi({\bf{x}})\)のパラメータと考える。\(\varphi({\bf{x}})\)は演算子であり、パラメータとして\(t\)も含むべきだからハイゼンベルグ描像を採用して

$$\phi({\bf{x}},t)=e^{iHT/\hbar}\varphi({\bf{x}},0)e^{-iHt/\hbar}\tag{29}$$

としておく。(今は位置も時間も演算子の固有値などでは決してない!!)

後者の方では粒子数を固定した非相対論的な量子力学ですでに同じようなことをしている。(俗にいう第二量子化)

以下、本では第二量子化での結論を述べていますがあとの章で量子化の計算を丁寧に書いておくのではここでは省略することにします。

第2問

図において\(AC=AD\)である。このとき\(?\)は何度か?

(算数オリンピック1995トライアル)

【方針1】

図のように\(\triangle ACE\)が正三角形になるように点\(E\)を取る。

\(\angle EAD=150^{\circ}\)で\(\triangle AED\)は二等辺三角形だから\(\angle AED=\angle ADE=\angle EDB=15^{\circ}\)

よって錯覚が等しいから\(AE,DB\)は平行であり、\(AEBD\)は台形

錯覚から\(\angle EAB=\angle ABD=15^{\circ}\)なので\(\triangle AFE,\triangle DFB\)はともに二等辺三角形であり、このことから\(AEBD\)は等脚台形とわかる。

よって、左右は対称だから\(\angle ECB=\angle ACD=45^{\circ}\)であり、\(\angle ECA=60^{\circ}\)と合わせて\(\angle ACB=105^{\circ}\)とわかる。

【方針2】

\(BD\)上に\(\angle ECD=15^{\circ}\)となるように点\(E\)を取る。\(\triangle ACD\)は直角二等辺三角形なので\(\angle EDC=15^{\circ}\)なので\(\triangle ECD\)は二等辺三角形

よって、ニ辺夾角相等から\(\triangle ACE\equiv \triangle ADE\)であり、\(\angle CAE=\angle DAE=45^{\circ}\)

また、\(\angle CED=150^{\circ}\)なので\(\angle CEB=30^{\circ},\angle AEB=75^{\circ} \)であり、\(\angle BAE=90^{\circ}\)

\(E\)から\(AC\)に下ろした垂線の足を\(H\)、\(AB\)と\(AH\)の交点を\(F\)とおく。

\(\angle AFH=45^{\circ}\)なので\(\triangle AFH\)と\(\triangle AEH\)は合同な直角二等辺三角形である。よって\(\triangle CEF\)において\(CH\)は垂線であり、中線でもあるから二等辺三角形。\(ECH=30^{\circ}\)も合わせると\(\triangle CEF\)は正三角形である。

よって、ニ辺夾角相等から\(\triangle FBE\equiv \triangle CBE\)なので\(\angle BCE=135^{\circ}\)であり、\(\angle BCA=105^{\circ}\)とわかる。

JMO予選1991問2

$$x^{199}+10x-5=0\cdots①$$

の全ての解(199個)の199乗の和を求めよ。

【略解】

いくら

  • 対称式は基本対称式で表せる
  • 基本対称式の値は解と係数の関係からわかる

とはいえ、\(199\)乗のこの問題でその方針は厳しいでしょう。解を\(a_1,a_2,\cdots,a_{199}\)とおけば、求めたいのは\(a_1^{199},a_2^{199},\cdots,a_{199}^{199}\)の和ですから、\(a_1^{199},a_2^{199},\cdots,a_{199}^{199}\)を無理やり作り出すことがポイントです。

解\(a_k\)(ただし、\(1≦k≦199)\)を①に代入すると、\(a_k^{199}+10a_k-5=0\)より、\(a_k^{199}=-10a_k+5\)となります。

∴この式の\(k\)に\(1\)から\(199\)を代入していき、それらの式を足し合わせれば、

$$ a_1^{199}+a_2^{199}+\cdots+a_{199}^{199}=-10(a_1+a_2+\cdots+a_{199})+5×199=995$$

(∵解と係数の関係より\(a_1+a_2+\cdots+a_{199}=0)\)

と求められます。では、これならどうでしょうか…?

Q. JMO予選1991年問2

$$x^{199}+10x-5=0\cdots①$$

の全ての解(\(199\)個)の\(200\)乗の和を求めよ。

こちらは「\(200\)乗」を作り出すために、もう一工夫必要です。①を\(x\)倍して\(200\)乗を作ると、

$$ x^{200}+10x^2-5x=0\cdots②$$


となりますが、①の解は当然②でもあるので、\(a_k\)(ただし、\(1≦k≦199\))を②に代入して、

$$ a_k^{200}+10a_k^2-5a_k=0$$

より、

$$a_k^{200}=-10a_k^2+5a_k$$

が得られます。∴\(\ \)先程と同様に、この式の\(k\)に\(1\)から\(199\)を代入していき、それらの式を足し合わせれば、

$$
a_1^{200}+a_2^{200}+\cdots+a_{199}^{200}=-10(a_1^2+a_2^2+\cdots+a_{199}^2)+5\times(a_1+a_2+\cdots+a_{199})\cdots③$$


となりますね。\(a_1+a_2+\cdots+a_{199}=0\)は先ほど求めましたが、\(a_1^2+a_2^2+\cdots+a_{199}^2\)の方も解と係数の関係で

$$a_1^2+a_2^2+\cdots+a_{199}^2=(a_1+a_2+\cdots+a_{199})^2-2(a_1a_2+a_1a_3+\cdots+a_{198}a_{199})=0^2-0=0$$


とわかりますから、③より、求める値も\(0\)とわかりますね!
一般に、①の式から解と係数の関係で、\(a_1\sim a_{199}\)の\(197\)次の基本対称式の値は\(0\)ですから、解の\(1\)乗和から解の\(197\)乗和は全て\(0\)と考えられます。(∵\(a_1\sim a_{199}\)の\(197\)次以下の基本対称式で表せる)にも関わらず、\(199\)乗和が突然\(995\)という値になるなんてそんな数たちがあることがなんとなく不思議ですね。ところで\(198\)乗和はどうなってるでしょうか。\(200\)乗和の方針を真似れば出来るはずです。答えは\(-1980\)になりましたか?

JMO予選1991問1

\( A=999\cdots999(9が81個)\)とする。\(A^2\)の各位の和を求めよ。

【略解】

言われてみれば当たり前なのですが、一度経験しないと盲点になりがちなのが、\(A=10^{81}-1\)と表せるということです。これを用いれば、


$$ A^2=(10^{81}-1)^2=10^{162}-2\times 10^{81}+1=99\cdots9980\cdots0001$$


(\(9\)と\(0\)は\(80\)個ずつ)
となりますから、求める各位の和は
\(9×80+8+1=729\)となりますね。
ここまで真面目に考えずとも、

\begin{eqnarray}9^2&=&81\\ 99^2&=&9801\\ 999^2&=&998001\\ 9999^2&=&99980001\end{eqnarray}


のような規則が成り立っていることから答えを出すことも可能ですね。
ところで、この数の並びを見ていると


\begin{eqnarray} 8+1&=&9\\ 98+01&=&99\\998+001&=&999\\ 9998+0001&=&9999
\end{eqnarray}

のような規則が成り立っていることに気付きます。

実はこれには名前がついていて、このように、二乗した数が\(2n\)桁なら前半と後半を\(n\)桁ずつに、\(2n+1\)桁なら前半\(n\)桁と後半\(n+1\)桁に分けたあとに、足すことによって得られる数がもとの数に一致するとき、これを「カプレカ数」と呼びます。
先ほどの規則により、\(9,99,999,9999,\cdots\)は全てカプレカ数とわかりますね!
では、皆さんも、カプレカ数を見つけてみましょう。
※「カプレカ数」の概念は他にもあり、別のものを指す場合もあるので注意が必要です。

Q. \(45,55,4950,5050\)はカプレカ数である。ここからあと\(2\)つ、カプレカ数を見つけてみよ。

【略解】


\begin{eqnarray} 45&=&1+2+\cdots+9\\
55&=&1+2+\cdots+10\\ 4950&=&1+2+\cdots+99\\ 5050&=&1+2+\cdots+100
\end{eqnarray}

であることに気づけば、


\begin{eqnarray} 1+2+\cdots+999&=&499500\\ 1+2+\cdots+1000&=&500500
\end{eqnarray}


がカプレカ数であると予想でき、実際、

\begin{eqnarray} 499500^2&=&249500250000
\end{eqnarray}

なので


\begin{eqnarray} 499500&=&249500+250000\\
500500^2&=&250500250000\\
500500&=&250500+250000
\end{eqnarray}
より、確かに、\(499500\)や\(500500\)はカプレカ数であることがわかりますね。この先もこの規則は続いていき、「三角数かつカプレカ数であるような数」が無限個存在するなんてこともわかります!以上のことをまとめると…

  • \(99\cdots99\)はカプレカ数
  • \(1\sim 99\cdots99\)までの和もカプレカ数
  • \(1\sim100\cdots00\)までの和もカプレカ数

といったことがわかりました。
他の三角数で成り立つわけでもなく、このような性質があるのはなんともきれいな反面、不思議な気がしますね。

第1問 

図の三角形ABDにおいて、AB=CDである。このとき、?は何度か?

(算数オリンピック1993ファイナル)

【方針1】

等しい長さがあるので三角形\(ABC\)と合同な三角形を用意してくっつけましょう。  

そうすると四角形\(ACED\)が等脚台形であることが分かりますので、錯覚定理より、

$$\angle ADC=\angle DCE=40^{\circ}$$

【方針2】

方針1と同様に三角形\(ABC\)と合同な三角形を用意する。しかし、ここでは方針1とは逆になるようにくっつける。

すると\(AC=CF\)なので三角形\(ACF\)は\(C\)を頂点とする二等辺三角形であり、

$$\angle CAF=\angle CFA=40^{\circ}$$

三角形\(CFG\)の外角を考えて、\(\angle CGA=70^{\circ}\)なので\(AC=AG\)

また、\(\angle BAG=\angle BGA=70^{\circ}\)なので三角形\(ABG\)は\(B\)を頂角とする二等辺三角形で\(AB=AG\)

よって、三角形\(ABG\)と三角形\(ADC\)において、

  • \(BG=DC\)
  • \(AG=AC\)
  • \(\angle AGB=\angle ACD\)

なのでニ辺夾角相当で\(\triangle ABG\equiv \triangle ADC\)

したがって、対応角から

$$\angle ADC=\angle ABG=40^{\circ}$$

とわかる。

このように同じような方針でもくっつけ方次第でそのあとの難易度が全然違うことがあるのでしっかり検討してからくっつけるようにしましょう!!

また、これ以外の別解があれば教えてください!!