24.非可換対称性

22章で導入したラグランジアンが

$${\mathcal{L}}=-\frac{1}{2}\partial^{\mu}\varphi_1\partial_{\mu}\varphi_1-\frac{1}{2}\partial^{\mu}\varphi_2\partial_{\mu}\varphi_2-\frac{1}{2}m^2(\varphi^2_1+\varphi^2_2)-\frac{1}{16}\lambda(\varphi_1^2+\varphi_2^2)^2\tag{1}$$

で与えられる2種類の実スカラー場\(\varphi_1,\varphi_2\)について考えよう.\(N\)個の実スカラー場\(\varphi_i\)に拡張すると

$${\mathcal{L}}=-\frac{1}{2}\partial^{\mu}\varphi_i\partial_{\mu}\varphi^i-\frac{1}{2}\varphi_i\varphi_i-\frac{1}{16}\lambda(\varphi_i\varphi_i)^2\tag{2}$$

となる.ここで,二度出た添字は和を取っている.これを見ると明らかにこのラグランジアンは\(SO(N)\)変換

$$\varphi_i(x)\to R_{ij}\varphi_j(x)\tag{3}$$

で不変である.ここで,\(R\)は\(\det\)が正の直交行列:\(R^T=R^{-1},\det R=+1\)である.また,明らかに\(Z_2\)変換:\(\varphi_i(x)\to -\varphi_i(x)\)でもラグランジアンは不変なので合わせて,ラグランジアンは\(O(N)\)対称性を持つとわかる.しかし,この章では単連結な部分\(SO(N)\)だけを議論することにする.

\(SO(N)\)変換の微小変換

$$R_{ij}=\delta_{ij}+\theta_{ij}+O(\theta^2)\tag{4}$$

について考えよう.ここで,\(R\)の実直交性より,

\begin{align}&R_{ij}\times(R^T)_{jk}\\&=R_{ij}\times R_{kj}\\&=(\delta_{ij}+\theta_{ij}+0(\theta^2))(\delta_{kj}+\theta_{kj}+O(\theta^2))\\ &=\delta_{ik}+\theta_{ki}+\theta_{ik}+0(\theta^2)\end{align}

なので\(\theta_{ij}\)は実反対称である. \(\theta_{ij}\) の基底としてエルミート行列\((T^a)_{ij}\)を用いると便利である.添字\(a\)は\(1\)から\(\frac{1}{2}N(N-1)\)を走る.例えば\(T^a\)として\(i<j\)において\((i,j)\)成分が\(-i\),\((j,i)\)成分が\(i\)であり,それ以外の成分が0であるような行列を選ぶと内積が

$${\mathrm{Tr}}(T^aT^b)=2\delta^{ab}\tag{5}$$

とうまく定まる.この基底で展開すると

$$\theta_{jk}=-i\theta^a(T^a)_{jk}\tag{6}$$

と書ける.ここで,\(\theta^a\)は\(\frac{1}{2}N(N-1)\)個の実な微小パラメーターである.

\(T^a\)は\(SO(N)\)の生成子になっており,任意の\(SO(N)\)の2つの元の積が閉じていることから\(T^a\)の括弧積も閉じていることがわかる.(Problem24.2)つまり,

$$[T^a,T^b]=if^{abc}T^c\tag{7}$$

と展開できる.\(f^{abc}\)は構造定数と呼ばれるものでその群を特徴付ける量である.もし,\(f^{abc}\)が0であったならその群は可換群であり,そうでなかったら非可換群になる.よって,生成子が1つしかないような\(U(1),SO(2)\)は可換群であり,\(N\ge 3\)で\(SO(N)\)は非可換群である.

(7)式の両辺に\(T^d\)を掛けてトレースを取ると(5)式より,

$$f^{abd}=-\frac{1}{2}i{\mathrm{Tr}}\left([T^a,T^b]T^d\right)\tag{8}$$

を得る.よって,これよりトレースの性質を用いると,\(f^{abd}\)は完全反対称になっていることがわかる.また,(8)式で複素共役と取ることで\(f^{abd}\)が実数であることもわかる.(右辺には\(i\)が4つあることからすぐにわかる.)

もっとも単純なのは\(SO(3)\)のときである.このとき,\((T^a)_{ij}=-i\epsilon^{aij}\)とすると,(ここで,\(\epsilon^{ijk}\)は\(\epsilon^{123}=1\)の完全反対称テンソルである.)交換関係は

$$[T^a,T^b]=i\epsilon^{abc}T^c\tag{9}$$

となる.よって,\(SO(3)\)の構造定数はこの基底のもとで\(f^{abc}=\epsilon^{abc}\)である.

次にラグランジアンが

$${\mathcal{L}}=-\partial^{\mu}\varphi_i^{\dagger}\partial_{\mu}\varphi_i-m^2\varphi_i^{\dagger}\varphi_i-\frac{1}{4}\lambda(\varphi_i^{\dagger}\varphi_i)^2\tag{10}$$

で与えられる\(N\)個の複素スカラー場\(\varphi_i\)を考えよう.このラグランジアンは明らかに\(U(N)\)対称性

$$\varphi_i(x)\to U_{ij}\varphi_j(x)\tag{11}$$

を持つ.ここで,\(U\)はユニタリ行列である:\(U^{\dagger}=U^{-1}\).さらに,\(U_{ij}=e^{-i\theta}\tilde{U}_{ij}\)と実パラメーター\(\theta\)を置くことで\(\det \tilde{U}_{ij}=+1\)とすることができる.ここで,\(\tilde{U}_{ij}\)は特殊ユニタリ行列と言われる.明らかに特殊ユニタリ行列同士の積は特殊ユニタリ行列である.つまり,\(N\times N\)の特殊ユニタリ行列の集合は群を成し,\(SU(N)\)と呼ばれる.群\(U(N)\)は\(U(1)\)と\(SU(N)\)の直積である.

$$U(N)=U(1)\times SU(N)$$

微小\(SU(N)\)変換について考えよう.

$$\tilde{U}_{ij}=\delta_{ij}-i\theta^a(T^a)_{ij}+O(\theta^2)\tag{12}$$

ここで,\(\theta^a\)は実微小パラメーターである.\(\tilde{U}\)のユニタリ性より,生成子\(T^a\)はエルミート行列である.(\(\tilde{U}_{ij}\tilde{U}_{jk}=\delta_{ik}\)に(12)式を代入しよう.)

また,\(\det \tilde{U}=+1\)より,\(T^a\)はトレースレスである.(\(\ln \det A=\mathrm{Tr}\ln A\)よりすぐにわかる.)\(a\)の添え字は\(1\)から\(N^2-1\)まで走り,エルミート,トレースレスで線形独立なものを選ぶ.さらに(5)式の条件を満たすように\(T^a\)を選ぶことができる.\(SU(2)\)の場合は生成子としてパウリ行列を選ぶことができる.このとき,構造定数は\(f^{abc}=2\epsilon^{abc}\)であり,\(SO(3)\)と一致する.(生成子に定数倍をつけることで構造定数を定数倍ずらすことができる.)

\(SU(N)\)の場合で\(T^a\)は次のように選ぶことができる.初めに\(SO(N)\)の生成子と同じようにある対角成分より右上の成分が\(-i\),その成分に対応する左下の成分が\(i\)の行列を\(N(N-1)/2\)個用意する.それ以外にある対角成分の右上の成分が1でその成分に対応する左下の成分が1の行列も\(N(N-1)/2\)個用意する.これらはエルミートトレースレスですべて直交する.さらにエルミートトレースレスになるような直交する対角成分だけなる行列を\(N-1\)個用意する.これらを合わせると計\(N^2-1\)個の\(SU(N)\)の生成子ができる.(定数倍することで(5)式の条件を満たすようにできる.)

具体的に(10)式の場合で考えてみると実はより大きい対称性\(SO(2N)\)を持つことがわかる.それは複素スカラー場を二つの実スカラー場で書くと簡単にわかる.\(\varphi_j=(\varphi_{j1}+i\varphi_{j2})/\sqrt{2}\)とすると

$$\varphi_j^{\dagger}\varphi_j=\frac{1}{2}(\varphi_{11}^2+\varphi_{12}^2+\cdots +\varphi_{N1}^2+\varphi_{N2}^2)\tag{13}$$

となり,\(2N\)個の実スカラー場は\(SO(2N)\)の対称性を持つわけである.

Parts 2,3 で\(SU(N)\)が重要な対称性であることがわかる.

2 thoughts on “24.非可換対称性

  1. 勇者あああ

    同じようにスレドニッキのこの本で場の量子論を勉強してるB4です。できれば、順番通りに更新していただければありがたいです。

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    1. totulens 投稿作成者

      計算が多いものやダイアグラムを書くのが面倒なものは後回しにしてしまっています.
      極力,前から挙げられるように努力します.

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