フーリエ級数:第5回:フーリエ級数に関する補足

ここまで順調にフーリエ級数について議論してきたが、実は数学的には難しい面が沢山ある。それを見るために次のグラフに注目してみて欲しい。


これは\(~y=x~\)の周期\(~2\pi~\)のフーリエ級数展開である(n=30項まで取っている)。言うまでもないが、\(~y=x~\)を再現できるのは\(~[-\pi,\pi]~\)だけで、これより外では


のように\(~[-\pi,\pi]~\)のグラフが繰り返される。周期\(~2\pi~\)の周期関数で展開しているのだから、まぁ当然だろう。さて元のグラフに戻ってもらうと2つの事が気になる。1つ目は\(~x=\pi~\)や\(~x=-\pi~\)等の不連続点での級数の値。2つ目は\(~x=\pi~\)や\(~x=-\pi~\)等の不連続点でのギザギザのデカさである。

まず一つ目の問題について、これは詳細な関数論の議論が必要になるので結果だけの述べるが、次の公式が成り立つことが知られている。
\begin{eqnarray}
x\in(-\pi,\pi)であれば、F(x)&\equiv&\frac{1}{2}\left(
\lim\limits_{\epsilon\to+0}
f(x+\epsilon)
+
\lim\limits_{\epsilon\to+0}
f(x-\epsilon)
\right)\\
x=\pi であれば、
F(\pi)&\equiv&\frac{1}{2}\left(
\lim\limits_{\epsilon\to+0}
f(\pi-\epsilon)
+
\lim\limits_{\epsilon\to+0}
f(-\pi+\epsilon)
\right)\\
x=-\pi であれば、F(-\pi)&\equiv&
\frac{1}{2}\left(
\lim\limits_{\epsilon\to+0}
f(-\pi+\epsilon)
+
\lim\limits_{\epsilon\to+0}
f(\pi-\epsilon)
\right)=F(\pi)
\end{eqnarray}
ここで左辺の\(~F(x)~\)は
\begin{eqnarray}
f(x)=\frac{a_0}{2}+\sum_{n=1}^{\infty}
\left(
a_n\cos\left(\frac{n\pi x}{L}\right)
+
b_n\sin\left(\frac{n\pi x}{L}\right)
\right)
\end{eqnarray}
といつものようにフーリエ級数展開した時の右辺のことである(意味が分からない人はこの後に補足を入れる)。もし\(~f(x)~\)が点\(~x~\)で連続であれば当然
\begin{eqnarray}
f(x)=\lim\limits_{\epsilon\to+0}
f(x+\epsilon)=
\lim\limits_{\epsilon\to+0}
f(x-\epsilon)
\end{eqnarray}
なので、当然のような結果\(~F(x)=f(x)~\)を得る。この式によれば、\(~y=x~\)のフーリエ級数展開の右辺に\(~x=\pi~\)を代入した時の値は
\begin{eqnarray}
F(\pi)&=&
\frac{1}{2}\left(
\lim\limits_{\epsilon\to+0}
f(\pi-\epsilon)
+
\lim\limits_{\epsilon\to+0}
f(-\pi+\epsilon)
\right)\
&=&
\frac{1}{2}\left(
\lim\limits_{\epsilon\to+0}
(\pi-\epsilon)
+
\lim\limits_{\epsilon\to+0}
(-\pi+\epsilon)
\right)\
&=&0
\end{eqnarray}
となり、フーリエ級数の値は0に収束する。実際先程載せたグラフを見ると確かに\(~x=\pm\pi~\)で\(~y=0~\)を通っていることが分かるだろう。

(先程の補足)もしかしたら読者の中には
\begin{eqnarray}
f(x)=\frac{a_0}{2}+\sum_{n=1}^{\infty}
\left(
a_n\cos\left(\frac{n\pi x}{L}\right)
+
b_n\sin\left(\frac{n\pi x}{L}\right)
\right)
\end{eqnarray}
の右辺を\(~F(x)~\)としても、右辺=左辺だから\(~F(x)=f(x)~\)となって結局\(~f(x)~\)になるじゃないか、と思う者もいるかも知れない。しかしここが難しいポイントで、あくまで右辺=左辺がちゃんと成り立つのは連続的な点だけで、不連続点についてはこのフーリエ\(~\underline{級数}~\)がどんな値に収束するのかは自明ではないし、もしかしたら収束しない可能性だってあるかもしれない。この誤解が生まれたのはある意味で私の責任で、というのも、私はこの記事の中で常に「フーリエ級数をすると\(~f(x)=\frac{a_0}{2}+\sum_{n=1}^{\infty}
\left(
a_n\cos\left(\frac{n\pi x}{L}\right)
+
b_n\sin\left(\frac{n\pi x}{L}\right)
\right)~\)と展開できるから~」
のように常にフーリエ級数展開出来るかのような言葉使いをしてしまっていた。だからフーリエ級数展開を厳密に書くならば)

連続な点xにおいては、以前求めた級数
\begin{eqnarray}
f(x)=\frac{a_0}{2}+\sum_{n=1}^{\infty}
\left(
a_n\cos\left(\frac{n\pi x}{L}\right)
+
b_n\sin\left(\frac{n\pi x}{L}\right)
\right)
\end{eqnarray}
が成り立つ。なお不連続点に関しては
\begin{eqnarray}
x_0\in(-\pi,\pi)であれば、
\left[\frac{a_0}{2}+\sum_{n=1}^{\infty}
\left(
a_n\cos\left(\frac{n\pi x}{L}\right)
+
b_n\sin\left(\frac{n\pi x}{L}\right)
\right)\right]_{x=x_0} &\equiv&\frac{1}{2}\left( \lim\limits_{\epsilon\to+0}
f(x+\epsilon)
+
\lim\limits_{\epsilon\to+0}
f(x-\epsilon)
\right)\nonumber\\
x=\pi であれば、
\left[\frac{a_0}{2}+\sum_{n=1}^{\infty}
\left(
a_n\cos\left(\frac{n\pi x}{L}\right)
+
b_n\sin\left(\frac{n\pi x}{L}\right)
\right)\right]_{x=\pi}&\equiv&\frac{1}{2}\left( \lim\limits_{\epsilon\to+0}
f(\pi-\epsilon)
+
\lim\limits_{\epsilon\to+0}
f(-\pi+\epsilon)
\right)\nonumber\\
x=-\pi であれば、\left[\frac{a_0}{2}+\sum_{n=1}^{\infty}
\left(
a_n\cos\left(\frac{n\pi x}{L}\right)
+
b_n\sin\left(\frac{n\pi x}{L}\right)
\right)\right]_{x=-\pi}&\equiv& \frac{1}{2}\left( \lim\limits_{\epsilon\to+0}
f(-\pi+\epsilon)
+
\lim\limits_{\epsilon\to+0}
f(\pi-\epsilon)
\right)\nonumber
\end{eqnarray}
が成り立つ。


というのが正しくて、こうすると先程のような疑問は生まれないと思う。


次に2つ目の問題を考える。実はグラフを書く際には有限の項でどうしても級数を打ち切る必要があるのだが(パソコンでは無限の項なんて書けないからね)、そうするとこの端点でのトゲトゲのデカさは嫌でも発生する。これは必ず発生する現象で「ギブス現象」という名前まで付いている。これに関しては難しい話なので興味ある学生は自ら調べて頂きたい。

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