現象論:自然単位系とSI単位系

SI単位系と自然単位系の変換を調べてみよう。まず光速\(~c~\)、ディラック定数\(~\hbar~\)を1にしてみる。それにより
\begin{eqnarray}
c\left[m/s\right]&=&1\\
\hbar\left[kg\cdot m^2/s\right]&=&1
\end{eqnarray}
という関係式が得られる。\([kg]~,~[m]~,~[s]\)という3つの次元の間に2つの関係式が出来たので、これにより独立な次元は1つになる。ちなみに筆者含めた現象論屋さんは独立な単位に\(~[eV]~\)を選ぶ。そこで今から\([kg]~,~[m]~,~[s]\)を\(~[eV]~\)で表現しようと思う。まずMKS単位系で\(~[eV]~\)が\(~[kg\cdot m^2/s^2]~\)であったことを思い出すと\(~\hbar\times c~\)はちょうど\(~[m\cdot eV]~\)の単位になる。ちゃんと計算してみよう(以下で1[eV]=\(1.6\times10^{-19}[kg\cdot m^2/s^2]\)を用いる)。
\begin{eqnarray}
1&=&\hbar\left[kg\cdot m^2/s\right]\times c\left[m/s\right]\\
&=&
\left(1.05\times10^{-34}\left[kg\cdot m^2/s\right]\right)\times\left(2.99\times10^8\left[m/s\right]\right)\\
&=&
3.14\times10^{-26}\left[kg\cdot m^3/s^2\right]\\
&=&
1.96\times10^{-7}\left[eV\cdot m\right]\\
&\approx&
200\left[
MeV\cdot fm
\right]
\end{eqnarray}
を得る。厳密には200ではないが、単位の関係を見積もるには問題ない近似である。これは有名な関係式で、これさえ暗記しておけばSI単位系と自然単位系を簡単に行き来出来るようになる。結果をまとめると
\begin{eqnarray}
1[m]\approx\frac{1}{2\times10^{-7}[eV]}=5\times10^6 [eV^{-1}]
\end{eqnarray}
と言えた。\(~[s]~\)と\(~[eV]~\)の関係を出すのは簡単で、\(c=1\)を使えばいい。
\begin{eqnarray}
1[s]=3\times10^8[m]
\approx1.5\times10^{15}[eV^{-1}]
\end{eqnarray}
最後に\(~[kg]~\)と\(~[eV]~\)の関係を出す。\(E=mc^2\)より
\begin{eqnarray}
1[kg]=1[kg]\times c^2[m^2/s^2]=c^2[J]=\frac{c^2}{e}[eV]
&\approx&5.7\times10^{35}[eV]
\end{eqnarray}
従って
\begin{eqnarray}
1[kg]
&\approx&5.7\times10^{35}[eV]
\end{eqnarray}
を得る。この結果を用いると、例えば電子の質量は\(m_e=9.1\times10^{-31}[kg]\)なので
\begin{eqnarray}
m_e=9.1\times10^{-31}[kg]
\approx
510[keV]
\end{eqnarray}
という有名な対応式を得る。

ちなみに以上の結果をラザフォードの実験に適用すると面白い。ラザフォードは原子核の存在を実験的に確かめたわけだが、どの程度のエネルギーを持った粒子を原子核に打ち込んだら調べられるのだろうか。それを今から見積もる。今調べたい対象である原子核のサイズは(勿論ラザフォードが実験した時には知られていなかったが)、\(1[fm]\)のオーダーである。\(1[fm]\)という長さは、先ほどの\(200\left[
MeV\cdot fm\right]=1\)の結果使うと約\(200[MeV]\)が対応することになる。つまり\(1[fm]\)の世界を見るにはだいたい\(200[MeV]\)程度のエネルギーが必要になることを意味している。ウィキペディアによれば実際のラザフォードの実験では質量\(m\approx4\times10^9[eV]\)~,~速度\(v\approx2\times10^7[m/s]\)の粒子をぶつけたわけだが、この粒子のエネルギーは
\begin{eqnarray}
T=\frac{1}{2}mv^2\approx10[MeV]
\end{eqnarray}
に対応する。一桁ほどズレているものの、原子核を調べるという目的に焦点を置けば、ラザフォードは原子核探査を行うに(そこそこ)十分なアルファ線を準備できていたと言える。

次に自然単位系で\(1[eV]\)が何℃に対応するか知っておくと便利である。その為に温度とエネルギーを結びつけるボルツマン定数を1にセットするとよい。\(k_B\approx1.4\times10^{-23}[J/K]\)より
\begin{eqnarray}
1eV=e[J]\approx\frac{e}{1.4}\times10^{23}K\approx1.1\times10^4[K]
\end{eqnarray}
従って、だいたい1万度が1eVに対応することになる。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です