33.ローレンツ群の表現

2章でスカラー場\(\varphi(x)\)はユニタリー演算子\(U(\Lambda)\)により

$$U(\Lambda)^{-1}\varphi(x)U(\Lambda)=\varphi(\Lambda^{-1}x)\tag{1}$$

と変換されることを見た.また,場の微分は

$$U(\Lambda)^{-1}\partial^{\mu}\varphi(x)U(\Lambda)=\Lambda^{\mu}_{\ \ \rho}\bar{\partial}^{\rho}\varphi(\Lambda^{-1}x)\tag{2}$$

と変換された.ここで,微分の上線は\(\bar{x}=\Lambda^{-1}x\)での微分を表している.

これに類推してベクトル場\(A^{\mu}\),テンソル場\(B^{\mu\nu}\)をローレンツ変換の下で次のように変換するものと定義する.

\begin{align} U(\Lambda)^{-1}A^{\rho}(x)U(\Lambda)&=\Lambda^{\mu}_{\ \ \rho}A^{\rho}(\Lambda^{-1}x)\tag{3} \\ U(\Lambda)^{-1}B^{\mu\nu}(x)U(\Lambda)&=\Lambda^{\mu}_{\ \ \rho}\Lambda^{\nu}_{\ \ \sigma}B^{\rho\sigma}(\Lambda^{-1}x)\tag{4} \end{align}

ここで,\(B^{\mu\nu}\)が添字の対称性を持っている場合,ローレンツ変換の下によりこの対称性は保存されることに注意する.また,トレース\(T(x)\equiv g_{\mu\nu}B^{\mu\nu}(x)\)を定義すると\(g_{\mu\nu}\)が不変テンソルであることから

$$U(\Lambda)^{-1}T(x)U(\Lambda)=T(\Lambda^{-1}x)\tag{5}$$

とスカラー場のように変換する.

よって,一般の対称性のないテンソル場\(B^{\mu\nu}(x)\)は

$$B^{\mu\nu}(x)=A^{\mu\nu}(x)+S^{\mu\nu}(x)+\frac{1}{4}g^{\mu\nu}T(x)\tag{6}$$

と分解するとローレンツ変換の下でこれらは混ざらない.ここで,\(A^{\mu\nu}\)は反対称テンソル,\(S^{\mu\nu}\)は対称テンソルでトレースレスにしたものである.

このようなローレンツ変換の下で混ざらないような分解を拡張することはできるだろうか.添字が\(n\)個の場合にはどのように拡張すればよいだろう.これは表現論でいうところの既約分解に対応している.そこでここでは一般にローレンツ群の既約表現を考えてみよう.

一般のローレンツ添字\(A\)を持つ場\(\varphi_A(x)\)を考えよう.ローレンツ変換の下では

$$U(\Lambda)^{-1}\varphi_A(x)U(\Lambda)=L_A^{\ \ B}(\Lambda)\varphi_B(\Lambda^{-1}x)\tag{7}$$

と変換する.ここで,\(L_A^{\ \ B}(\Lambda)\)は\(\Lambda\)に依存する行列である.さらに\(L_A^{\ \ B}(\Lambda)\)は群の表現なので

$$L_A^{\ \ B}(\Lambda^{\prime})L_B^{\ \ C}(\Lambda)=L_A^{\ \ C}(\Lambda^{\prime}\Lambda)\tag{8}$$

を満たす.

微小変換\(\Lambda^{\mu}_{\ \ \nu}=\delta^{\mu}_{\ \ \nu}+\delta \omega^{\mu}_{\ \ \nu}\)を考えよう.すると,ローレンツ群の生成子\(M^{\mu\nu}\)を用いて

$$U(1+\delta\omega)=I+\frac{i}{2}\delta\omega_{\mu\nu}M^{\mu\nu}\tag{9}$$

と書くことができる.2章でやったようにこの生成子は

$$[M^{\mu\nu},M^{\rho\sigma}]=i\left( g^{\mu\rho}M^{\nu\sigma}-(\mu\leftrightarrow \nu)\right)-(\rho\leftrightarrow \sigma)\tag{10}$$

の交換関係を満たした.この交換関係は角運動量演算子\(\vec{J}:J_i\equiv \frac{1}{2}\epsilon_{ijk}M^{jk}\)とブースト演算子\(\vec{K}:K_i\equiv M^{i0}\)を用いると簡単に表すことができる.

\begin{eqnarray}[J_i,J_j]&=&+i\epsilon_{ijk}J_k,\tag{11}\\ \ [J_i,K_j]&=&+i\epsilon_{ijk}K_k,\tag{12}\\ \ [K_i.K_j]&=&-i\epsilon_{ijk}J_k\tag{13}\end{eqnarray}

\(L_A^{\ \ B}\)の微小変換を

$$L_A^{\ \ B}(1+\delta\omega)=\delta_A^{\ \ B}+\frac{i}{2}\delta\omega_{\mu\nu}(S^{\mu\nu})_A^{\ \ B}\tag{14}$$

と表すことにする.すると(7)式で微小変換を考えると

$$[\varphi_A(x),M^{\mu\nu}]={\mathcal{L}}^{\mu\nu}\varphi_A(x)+(S^{\mu\nu})_A^{\ \ B}\varphi_B(x)\tag{15}$$

となる.(2次微小量を無視すると簡単に確かめられます.)ここで,\({\mathcal{L}}^{\mu\nu}\equiv \frac{1}{i}(x^{\mu}\partial^{\nu}-x^{\nu}\partial^{\mu})\)とした.\({\mathcal{L}}^{\mu\nu},(S^{\mu\nu})_A^{\ \ B}\)はそれぞれ\(M^{\mu\nu}\)と同じ交換関係を持つ.(problem2.8,2.9)

さて,これから扱う問題は(10)式の交換関係を満たす\(M^{\mu\nu}\)の表現を全て見つけること,もしくは(11)〜(13)式を満たす\(J_i,K_j\)の表現を全て見つけることである.

(11)式に限定すれば\(J_i\)の全ての表現を角運動量の話からすでに知っている.この交換関係は\(SU(2)\)のものであるからスピン\(\frac{1}{2},1,\frac{3}{2},\cdots\)表現に同値なものしか既約表現は存在しない.もっというと\(j=0,\frac{1}{2},1,\frac{3}{2},\cdots\)に対して\((2j+1)\times (2j+1)\)のエルミート行列\(J_1,J_2,J_3\)の表現をすでに知っているわけだ.ここで,スピン\(j\)表現のときの\(J_3\)の固有値は\(-j,-j+1,\cdots , +j\)である.

この\(SU(2)\)の事実を使って(11)〜(13)を満たす表現を考えよう.そのために物理的な意味はわからないが交換関係が簡単になるようにエルミートでない演算子\(N_i,N_i^{\dagger}\)を

\begin{align} N_i\equiv &\frac{1}{2}(J_i-iK_i)\tag{16}\\ N_i^{\dagger}\equiv& \frac{1}{2}(J_i+iK_i)\tag{17}\end{align}

で定義しよう.すると(11)〜(13)式は

\begin{align} [N_i,N_j]&=i\epsilon_{ijk}N_k,\tag{18}\\ [N_i^{\dagger},N_j^{\dagger}]&=i\epsilon_{ijk}N_k^{\dagger}\tag{19}\\ [N_i,N_j^{\dagger}]&=0\tag{20}\end{align}

と変換できる.(Problem33.2) これらはそれぞれ\(SU(2)\)の交換関係だから\(N_i,N_i^{\dagger}\)の表現は整数もしくは半整数により定めることができる.つまり,もともとはローレンツ群の有限次元表現を考えていたわけだがそれは\(SU(2)\)の表現を2つ定めることに一致し,整数もしくは半整数である\(n,n^{\prime}\)により,ローレンツ群の既約表現は定まるわけである.

\(N_i\)がスピン\(n\)表現,\(N_i^{\dagger}\)がスピン\(n^{\prime}\)表現であるローレンツ群の表現を\((2n+1,2n^{\prime}+1)\)表現と表すことにしよう.この表現の成分の数は\((2n+1)(2n^{\prime}+1)\)である.(場が\(\varphi_{a,b}(x)(a=-n,\cdots,n,b=-n^{\prime},\cdots ,n^{\prime})\)のように表せるということ.)(16),(17)式より,\(J_i=N_i+N_i^{\dagger}\)なので\(j\)のとりうる値は\(n,n^{\prime}\)から与えられる.これは単純なスピン\(n,n^{\prime}\)の合成なので\(j\)のとりうる値は\(|n-n^{\prime}|,|n-n^{\prime}|+1,\cdots,n+n^{\prime} \)とわかる.

よく出会う\((1,1),(2,1),(1,2),(2,2)\)表現は次のように名前がついている.

\begin{align} (1,1)&=\text{スカラー}\\ (2,1)&=\text{左手型スピノル}\\ (1,2)&=\text{右手型スピノル}\\ (2,2)&=\text{ベクトル}\tag{21}\end{align}

(2,2)表現がベクトル表現であることに多少驚きがあるだろう.これを念のために確かめておこう.まず,ベクトル表現は\(4\)次元の既約表現であることに注意しよう.(ローレンツ変換により,4成分が混ざり合う)するとベクトル表現は\(4\)次元の表現のどれかと一致しているはずであり,候補は\((1,4),(4,1),(2,2)\)表現である.始め2つは角運動量が\(j=\frac{3}{2}\)であり,不適である.\((2,2)\)表現での角運動量の候補は\(j=0,1\)であり,これは空間回転で時間成分はスカラー,空間成分はスピン\(1\)で変換を受けることに一致している.これより,必要条件的ではあるが\((2,2)\)表現がベクトル表現に対応することがわかる.

さらに理解を深めるためには角運動量\(j=\frac{1}{2}\)の\((1,2),(2,1)\)表現について調査する必要がある.

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