マクスウェル方程式

もっとも重要なスピン1の粒子はフォトンである.物質によるフォトンの放出・吸収は物理の多くの分野で重要である.量子電磁力学の入り口としてこの分野についてざっと復習することにする.

まずは古典電磁力学から始めよう.マクスウェル方程式は

\begin{align} \nabla \cdot {\bf{E}}&=\rho \tag{1}\\ \nabla \times {\bf{B}}-\dot{{\bf{E}}} &={\bf{J}} \tag{2}\\ \nabla \times {\bf{E}}+\dot{{\bf{B}}}&=0\tag{3}\\ \nabla \cdot {\bf{B}}&=0\tag{4} \end{align}

で表される.ここで,\({\bf{E}}\)は電場,\({\bf{B}}\)は磁場,\(\rho\)は電荷密度,\({\bf{J}}\)はカレント密度である.また,ここでは Heaviside-Lorentz 単位系を用いていて,\(c=1\)としている.この単位系では\(Q\)の電荷を持った荷電粒子間に\(Q^2/4\pi r^2\)の力が働く.

マクスウェル方程式はこれだけでは電荷やカレントのダイナミクスまではわからない.よって,ローレンツ力などの補足を必要とするがここでは,特定の電荷やカレントに制限して話を進めるので電磁場のダイナミクスにのみ注目することにする.

マクスウェル方程式の後ろ2つは右辺にソースが含まれていないので\({\bf{E,B}}\)について解くことができる.スカラーポテンシャル\(\varphi\)とベクトルポテンシャル\({\bf{A}}\)を用いると

\begin{align} {\bf{E}}&=-\nabla \varphi-\dot{{\bf{A}}},\tag{5}\\ {\bf{B}}&=\nabla \times {\bf{A}}\tag{6} \end{align}

と表すことができる.これらのポテンシャルが決まると(5),(6)式より,電磁場はユニークに決定する.しかし,電磁場が決定してもこれらのポテンシャルには自由度が残る.正確には

\begin{align} \varphi^{\prime} &=\varphi +\dot{\Gamma}\tag{7}, \\ {\bf{A}}^{\prime}&= {\bf{A}}-\nabla \Gamma,\tag{8} \end{align}

で結ばれるポテンシャル同士は同じ電磁場を与える.ここで,\(\Gamma\)は時空に関する任意関数である.このような場を変えないポテンシャルの変換をゲージ変換という.つまり,\({\bf{E}},{\bf{B}}\)はゲージ不変である.

相対論的な表記を使うとコンパクトかつエレガントに表すことができる.4次元ポテンシャルもしくはゲージ場を

$$A^{\mu}\equiv (\varphi,{\bf{A}}),\tag{9}$$

で定義する.また,field strength を

$$F^{\mu\nu}\equiv \partial ^{\mu}A^{\nu}-\partial ^{\nu}A^{\mu}\tag{10}$$

で定義する.明らかに\(F^{\mu\nu}\)は反対称である:\(F^{\mu\nu}=F^{\nu\mu}\).(5),(6)式とこれらの定義を見ると

\begin{align} F^{0i}&= E^i,\tag{11}\\ F^{ij}&= \epsilon ^{ijk}B_k\tag{12} \end{align}

の関係がわかる.また,マクスウェル方程式の前2つも新しく

$$\partial _{\nu}F^{\mu\nu}=J^{\mu}\tag{13}$$

と表すことができる.ここで,

$$J^{\mu}\equiv (\rho,{\bf{J}})\tag{14}$$

は電荷カレントの4次元ベクトルである.

(13)式の両辺に\(\partial _{\mu}\)を作用させると\(\partial _{\mu}\partial _{\nu}F^{\mu\nu}=\partial _{\mu}J^{\mu}\)となる.左辺に注目すると\(\partial _{\mu}\partial _{\nu}\)は添字に関して対称であり,\(F^{\mu\nu}\)は反対称なので和を取ると0なる.したがって,

$$\partial_{\mu}J^{\mu}=0\tag{15}$$

もしくは,これと等しい

$$\dot{\rho}+\nabla \cdot {\bf{J}}=0\tag{16}$$

を得る.これは電荷が保存することを表している.

マクスウェル方程式の残り2つは

$$\epsilon_{\mu\nu\rho\sigma}\partial ^{\rho}F^{\mu\nu}=0\tag{17}$$

で表される.ここで,\(\epsilon_{\mu\nu\rho\sigma}\)は完全反対称テンソルである.(10)式を(17)式に代入するとこれはヤコビ恒等式であり,自動的に成り立つとわかる.

(7),(8)式のゲージ変換はまとめると

$$A^{\prime\mu}=A^{\mu}-\partial^{\mu}\Gamma\tag{18}$$

となる.これにより,field strength は

$$F^{\prime\mu\nu}=F^{\mu\nu}-(\partial^{\mu}\partial^{\nu}-\partial^{\nu}\partial ^{\mu})\Gamma\tag{19}$$

と変換される.ここで,右辺第二項は微分を交換することにより消えるので,結局

$$F^{\prime\mu\nu}=F^{\mu\nu}\tag{20}$$

となり,field strength はゲージ不変であるとわかる.

次に,マクスウェル方程式を導くようなラグランジアンを導こう.カレントは外部から与えられるとする.考える作用はローレンツ不変,ゲージ不変,パリティ不変,時間反転不変すべてを満たし,2階以上の微分を含まないものである.その唯一の候補は\(S=\int d^4x{\mathcal{L}}\),

$${\mathcal{L}}=-\frac{1}{4}F^{\mu\nu}F_{\mu\nu}+J^{\mu}A_{\mu}\tag{21}$$

である.第一項は明らかにゲージ不変である.第二項は(18)式のゲージ変換で\(J^{\mu}A_{\mu}^{\prime}\)となるが,その差は

\begin{align} J^{\mu}(A_{\mu}^{\prime}-A_{\mu})&=-J^{\mu}\partial_{\mu}\Gamma\\ &=-(\partial _{\mu}J^{\mu})\Gamma-\partial _{\mu}(J^{\mu}\Gamma)\tag{22}\end{align}

である.(22)式の一項目はカレントが保存することから0である.また,二項目は全微分項なので\(d^4x\)での積分により0になる.(無限遠での境界条件を用いる.)よって,(21)式での作用はゲージ不変である.

\(F^{\mu\nu}=\partial ^{\mu}A^{\nu}-\partial^{\nu} A^{\mu}\)を用いて(21)式を変形すると

\begin{align} {\mathcal{L}}&=-\frac{1}{2}\partial^{\mu}A^{\nu}\partial _{\mu}A_{\nu}+\frac{1}{2}\partial ^{\mu}A^{\nu}\partial_{\nu}A_{\mu}+J^{\mu}A_{\mu}\tag{23}\\ &=-\frac{1}{2}\partial^{\mu}A^{\nu}(\partial _{\mu}A_{\nu}-\partial _{\nu}A_{\mu})+J^{\mu}A_{\mu}\\
&=-\frac{1}{2}\partial^{\mu}\left\{A^{\nu}(\partial _{\mu}A_{\nu}-\partial _{\nu}A_{\mu})\right\}+\frac{1}{2}A^{\nu}(\partial^{\mu}\partial_{\mu}A_{\nu}-\partial^{\mu}\partial_{\nu}A_{\mu})+J^{\mu}A_{\mu} \\ &=+\frac{1}{2}A_{\mu}(g^{\mu\nu}\partial^2-\partial^{\mu}\partial^{\nu})A_{\nu}+J^{\mu}A_{\mu}-\partial^{\mu}K_{\mu}\tag{24}\end{align}

となる.ここで,\(K_{\mu}=\frac{1}{2}A^{\nu}(\partial_{\mu}A_{\nu}-\partial_{\nu}A_{\mu})\)である.(24)式の最後の項は全微分項なのでこれまた消えてしまう.このラグランジアンでの\(A^{\mu}\)の変分による方程式は

$$(g^{\mu\nu}\partial^2-\partial^{\mu}\partial^{\nu})A_{\nu}+J^{\mu}=0\tag{25}$$

である.

\(\partial_{\nu}F^{\mu\nu}=\partial_{\nu}(\partial^{\mu}A^{\nu}-\partial^{\nu}A^{\mu})=(\partial^{\mu}\partial^{\nu}-g^{\mu\nu}\partial^2)A_{\nu}\)に注意すると(25)式は(13)式と一致し,マクスウェル方程式になる.

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