57.フォトンの経路積分

この章ではフォトンの経路積分をより理解するために8章と同様に直接計算しよう.まず,分配関数

\begin{align} Z_0(J)&=\int {\mathcal{D}}A\ e^{iS_0}\tag{1}\\ S_0&=\int d^4x\left[-\frac{1}{4}F^{\mu\nu}F_{\mu\nu}+J^{\mu}A_{\mu}\right]\tag{2}\end{align}

から始めよう.8章と同様にフーリエ変換して運動量空間に持っていくと

\begin{align} S_0&=\frac{1}{2}\int \frac{d^4k}{(2\pi)^4}\left[ -\tilde{A}_{\mu}(k) \left(k^2g^{\mu\nu}-k^{\mu}k^{\nu}\right)\tilde{A}_{\nu}(-k)\right. \\ &\hspace{30mm}+\left.\tilde{J}^{\mu}(k)\tilde{A}_{\mu}(-k)+\tilde{J}^{\mu}(-k)\tilde{A}_{\mu}(k)\right]\tag{3}\end{align}

となる.次に平方完成するために\(\tilde{A}\)をshiftしよう.これには\(4\times4\)行列\(k^2g^{\mu\nu}-k^{\mu}k^{\nu}\)の逆行列が関係する.しかし,この行列は0固有値を持つので逆行列を持たない.そこでトリックを使うことになる.

まず,この問題点を見るために

$$k^2g^{\mu\nu}-k^{\mu}k^{\nu}=k^2P^{\mu\nu}(k)\tag{4}$$

とおこう.ここで,

$$P^{\mu\nu}(k)\equiv g^{\mu\nu}-\frac{k^{\mu}k^{\nu}}{k^2}\tag{5}$$

と定義したわけである.これが射影演算子であることを簡単に確かめられる:

\begin{align} P^{\mu\nu}(K)P_{\nu}^{\ \ \lambda}(k)=P^{\mu\lambda}(k)\tag{6}\end{align}

よって,\(P\)の固有値として0と1のみが許可される.そして最低でも1つは0固有値を持つことは

$$P^{\mu\nu}(k)k_{\nu}=0\tag{7}$$

よりわかる.一方で固有値の和はトレースにより与えられ,

$$g_{\mu\nu}P^{\mu\nu}(k)=3\tag{8}$$

である.よって,残った3つの固有値はすべて1である.

(3)式で与えられた\(S_0\)を用いて(1)式の経路積分を実行することを考えよう.そのために\(\tilde {A}_{\mu}(k)\)を線形独立な4つのベクトルに分解し,その1つを\(k^{\mu}\)に選ぶ.まず,\(\tilde{A}_{\mu}(k)\)の二次の項に注目すると(7)式より,\(k_{\mu}\)の方向は寄与しないことがわかる.また,\(\tilde{A}_{\mu}(k)\)の線形項も\(\partial^{\mu}J_{\mu}(x)=0\)は\(k^{\mu}\tilde{J}_{\mu}=0\)を意味することから寄与しないことがわかる.つまり,\(\tilde{A}_{\mu}(k)\)の\(k^{\mu}\)方向の部分は\(S_0\)には一切寄与しないことがわかる.よって,\(\int {\mathcal{D}}A\)を\(k^{\mu}\)以外の三方向にのみ積分すると定義しよう.そんなことをしてよいのかと思うかもしれないがこれはローレンツゲージ\(\partial ^{\mu}A_{\mu}(x)=0\)を課すことと同じことである.

結局,射影演算子\(P^{\mu\nu}(k)\)は\(k^{\mu}\)の直交補空間への射影演算子であった.つまり,この直交補空間上では恒等演算子であり,この部分空間上では\(k^2P^{\mu\nu}(k)\)の逆行列は\((1/k^2)P^{\mu\nu}(k)\)である.そして,真空境界条件として\(k^2\)を\(k^2-i\epsilon\)に置き換える\(\epsilon\)トリックを採用しよう.

全く同じなので計算は省くが8章と同じように計算すると結果として次の表式を得る.

\begin{align} Z_0(J)&=\exp \left[\frac{i}{2}\int \frac{d^4k}{(2\pi)^4}\tilde{J}_{\mu}(k)\frac{P^{\mu\nu}(k)}{k^2-i\epsilon}\tilde{J}_{\nu}(-k)\right]\\ &=\exp \left[\frac{i}{2}\int d^4xd^4y \ J_{\mu}(x)\Delta ^{\mu\nu}(x-y)J_{\nu}(y)\right]\tag{9}\end{align}

ここで,

$$\Delta ^{\mu\nu}(x-y)=\int \frac{d^4k}{(2\pi)^4}e^{ik(x-y)}\frac{P^{\mu\nu}(k)}{k^2-i\epsilon}\tag{10}$$

はローレンツゲージでのフォトンのプロパゲーターである.もちろん,カレントは保存するから\(P^{\mu\nu}(k)\)の中の\(k^{\mu}k^{\nu}\)は寄与せず,ファインマンゲージと同じ結果を与える.

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