JMO予選1990問10

\(x,y,z\)を正の数とする。\(x+y+z=1\)のとき、\(\frac{1}{x}+\frac{4}{y}+\frac{9}{z}\)の最小値を求めよ。

【思考・方針】

多変数関数の最大・最小は順像法や逆像法など、様々な方針がありますが、数学オリンピックではむしろ特殊な不等式の利用がメインでしょう。

JMOの本選やIMOなどでは様々な特殊な不等式を使うはめになりますが、いきなりいろんな道具を使いこなすのは難しいうえ、覚えるのも大変なので、まずは特に有名な

\(\cdot\ \)相加相乗平均の不等式

\(\cdot\ \)コーシーシュワルツの不等式

を何変数であっても使いこなせるようにしておくのがよいでしょう。

知ってても使えるようになるには、多少の慣れが必要ですが、逆に言えば、ある程度、経験すれば出来るようになります。今回は、コーシーシュワルツの不等式の利用です。(まだ思い付いてない人はそれをヒントに考えてみましょう。)

3変数コーシーシュワルツの不等式

\begin{eqnarray}(a^2+b^2+c^2)(p^2+q^2+r^2)\ge(ap+bq+cr)^2\end{eqnarray}

において、\(a=\sqrt{x},b=\sqrt{y},c=\sqrt{z},p=\frac{1}{\sqrt{x}},q=\frac{2}{\sqrt{y}},r=\frac{3}{\sqrt{z}}\)を考えましょう。

すると、

\begin{eqnarray}(x+y+z)\left(\frac{1}{x}+\frac{4}{y}+\frac{9}{z}\right)\ge(1+2+3)^2\end{eqnarray}

より、\(\frac{1}{x}+\frac{4}{y}+\frac{9}{z}\ge36\)となりますから、等号が成立する

\begin{eqnarray}\frac{a}{p}=\frac{b}{q}=\frac{c}{r}\Leftrightarrow x=\frac{y}{2}=\frac{z}{3}\Leftrightarrow x=\frac{1}{6},y=\frac{1}{3},z=\frac{1}{2}\end{eqnarray}

のとき、\(\frac{1}{x}+\frac{4}{y}+\frac{9}{z}\)は最小値36をとる。

\((x,y,z)\)と\((\frac{1}{x},\frac{4}{y},\frac{9}{z})\)の「内積が定数」のような形の時にコーシーシュワルツの不等式が活躍します。また、他のよくあるパターンとして、「ルート型」も見ておきましょう。東大入試に挑戦です。

Q.\(\ \ \)任意の正の実数\(x,y\)に対し、

\begin{eqnarray}\sqrt{x}+\sqrt{y}\le k \sqrt{2x+y}\cdots①\end{eqnarray}

となるような正の実数$k$の範囲を求めよ。

(東大理系1995問1)

【略解】

もちろん入試問題ですし、微分などをごりごり使って倒すのもよい作戦だとは思いますが、ここではコーシーシュワルツの不等式を使った解法を紹介しましょう。①の両辺は正ですから、

\begin{eqnarray}①\Leftrightarrow k^2(2x+y)\ge(\sqrt{x}+\sqrt{y})^2\cdots②\end{eqnarray}

です。少し、近付きましたね。

さて、コーシーシュワルツの不等式を使うことを強く意識すると、

\begin{eqnarray}\left(\frac{1}{2}+1\right)(2x+y)\ge(\sqrt{x}+\sqrt{y})^2\end{eqnarray}

という不等式が作れます。

\begin{eqnarray}∴\frac{3}{2}(2x+y)\ge(\sqrt{x}+\sqrt{y})^2\cdots③\end{eqnarray}

となり、\(\frac{1}{2}:1=2x:y\)(例えば\(x=1,y=4\)など)のときに③の等号が成立してしまうことも加味すれば、②をみたす\(k\)の条件は\(k^2\ge\frac{3}{2}\)

となり、求める条件は\(k\ge\frac{\sqrt{6}}{2}\)となりますね!

このように、コーシーシュワルツの不等式などの特殊な不等式を利用する問題は、様々な経験をし、使えそうな時に「使えそうだな」と思う嗅覚が必要なうえ、用いる有名不等式を強く意識して不等式を作る必要があります。慣れないと難しいですが、その分、解けたときの達成感が味わえる分野の1つです。

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