5.LSZ簡約公式

散乱実験での遷移振幅を計算する公式を作ろう。相互作用のない理論では一粒子状態は真空に生成演算子をかけることで得られる。

$$|k\rangle =a^{\dagger}({\bf{k}})|0\rangle \tag{1}$$

ここで、

$$a^{\dagger}({\bf{k}})=-i\int d^3x \ e^{ikx}\overleftrightarrow{\partial_0}\varphi(x)\tag{2}$$

である。ここで、真空状態\(|0\rangle \)は任意の消滅演算子で0になるものと定義しており、

$$a({\bf{k}})|0\rangle =0\tag{3}$$

$$\langle 0|0\rangle =1\tag{4}$$

が成り立つように規格化しておく。

また、一粒子状態においては

$$\langle k|k^{\prime}\rangle =(2\pi)^32\omega\ \delta^3({\bf{k-k^{\prime}}})\tag{5}$$

で規格化しておく。ここで、\(\omega=({\bf{k}}^2+m^2)^{1/2}\)である。

さらに時間に依存しない波数空間では\({\bf{k}}_1\)、位置空間では原点に局在化した粒子を生成する演算子

$$a_1^{\dagger}\equiv \int d^3k \ f_1({\bf{k}})a^{\dagger}({\bf{k}})\tag{6}$$

を定義する。ここで、

$$f_1({\bf{k}})\varpropto\exp[-({\bf{k-k}}_1)^2/4\sigma^2]\tag{7}$$

であり、\(\sigma\)は波数空間での広がりを表している。状態\(a_1^{\dagger}|0\rangle \)について考えよう。シュレディンガー描像でのこの状態の時間発展を考えると\(t\to \pm\infty\)において原点から遠く離れることがわかる。また、状態\(a_1^{\dagger}a_2^{\dagger}|0\rangle\)について考えると、\({\bf{k}}_1\not={\bf{k}}_2\)ならば二つの粒子は\(t\to -\infty\)では遠く離れている。

これは相互作用のある理論での始状態と終状態を表すのに使える。ここから、相互作用のある理論を考えていく。相互作用表示を考えると生成消滅演算子は時間に依存する。始状態を

$$|i\rangle =\lim_{t\to -\infty}a_1^{\dagger}(t)a_2^{\dagger}(t)|0\rangle\tag{8}$$

と表すことにする。うまく、\(f({\bf{k}})\)を選ぶことにより、\(\langle i|i\rangle =1\)と規格化がしておこう。同じように終状態を

$$|f\rangle = \lim_{t\to +\infty}a_{1^{\prime}}^{\dagger}(t)a_{2^{\prime}}^{\dagger}(t)|0\rangle\tag{9} $$

と定義する。ここでも、\(\langle f|f\rangle=1\)である。

もちろん、終状態の粒子数は2とは限らないのでもっと生成演算子(\(a_n^{\dagger}\))を作用させてもよい。だが、どちらにせよ、このように状態を定義することで遷移振幅は\(\langle f|i\rangle\)で表される。

\(\langle f|i\rangle\)をきれいな形に変形しよう。(それが本セクションでの目的である。)まず、次の変形が成り立つことに注意しよう。

\begin{eqnarray}a_1^{\dagger}(+\infty)-a_1^{\dagger}(-\infty)&=&\int_{-\infty}^{\infty}dt\ \partial_0a_1^{\dagger}(t)\\ &=&-i\int d^3kf_1({\bf{k}})\int d^4x\ \partial_0\left(e^{ikx}\overleftrightarrow{\partial_0}\varphi(x)\right)\\ &=&-i\int d^3kf_1({\bf{k}})\int d^4x\ e^{ikx}(\partial_0^2+\omega^2)\varphi(x)\\ &=&-i\int d^3kf_1({\bf{k}})\int d^4x\ e^{ikx}(\partial_0^2+{\bf{k}}^2+m^2)\varphi(x)\\ &=&-i\int d^3kf_1({\bf{k}})\int d^4x\ e^{ikx}(\partial_0^2+\overleftarrow{\nabla}^2+m^2)\varphi(x)\\ &=&-i\int d^3kf_1({\bf{k}})\int d^4x\ e^{ikx}(\partial_0^2+\overrightarrow{\nabla}^2+m^2)\varphi(x)\\ &=&-i\int d^3kf_1({\bf{k}})\int d^4x\ e^{ikx}(-\partial^2+m^2)\varphi(x) \tag{10}\end{eqnarray}

相互作用がなければ\(\varphi(x)\)はKlein-Gordon方程式を満たすから右辺は0になる。つまり、自由場では当たり前であるが時間によらず生成消滅演算子は等しいのである。

(10)式を変形すると

$$a_1^{\dagger}(-\infty)=a_1^{\dagger}(+\infty)+i\int d^3k\ f_1({\bf{k}})\int d^4x e^{ikx}(-\partial^2+m^2)\varphi(x)\tag{11}$$

さらにエルミート共役をとって変形すると

$$a_1(+\infty)=a_1(-\infty)+i\int d^3k\ f_1({\bf{k}})\int d^4x e^{-ikx}(-\partial^2+m^2)\varphi(x)\tag{12}$$

さて、散乱振幅

$$\langle f|i\rangle =\langle 0|a_{1^{\prime}}(+\infty)a_{2^{\prime}}(+\infty)a_1^{\dagger}(-\infty)a_2^{\dagger}(-\infty)|0\rangle\tag{13}$$

に戻ろう。ブラケットで挟んでいる部分は時間順序になっているので時間順序積を入れることができる。

$$ \langle f|i\rangle =\langle 0|T a_{1^{\prime}}(+\infty)a_{2^{\prime}}(+\infty)a_1^{\dagger}(-\infty)a_2^{\dagger}(-\infty)|0\rangle\tag{14} $$

(11),(12)を(14)に代入するとT積により、\(a_{i^{\prime}}(-\infty)\)は右側に移動し、\(|0\rangle\)に作用して消え、\(a_i^{\dagger}(+\infty)\)は左側に移動して消える。

さらに、\(f_1({\bf{k}})=\delta^3({\bf{k-k}}_1)\)として、一般に\(n-n^{\prime}\)粒子散乱を考えると

\begin{align} \langle f|i\rangle=i^{n+n^{\prime}}\int &d^4x_1e^{ik_1x_1}(-\partial_1^2+m^2)\cdots\\ &d^4x_1^{\prime}e^{-ik_1^{\prime}x_1^{\prime}}(-\partial_{1^{\prime}}^2+m^2)\cdots\\ &\times\langle 0|T\varphi(x_1)\cdots\varphi(x_1^{\prime})\cdots|0\rangle\tag{15} \end{align}

が得られる。この公式はLSZ簡約公式と言われるものであり、散乱振幅を知りたければn点Green関数が分かればよいということを示している。(この公式があるからこの先でループ計算などをしてGreen関数を求めるわけである。)

さて、ここまでざっと計算してきたが相互作用のある場において生成消滅演算子が自由場と同等に意味を持つのかというのは実は疑問である。つまり、そもそもとして自由場においてなぜ、粒子描像を考えることができるのかといえば生成消滅演算子とハミルトニアンの交換関係があったわけであるが相互作用のあるときにも同様の交換関係が成り立つのかというのは怪しいのである。そこで\(\varphi(x)\)がどのような演算子になっているのか見てみよう。

まず、相互作用のある理論でエネルギー運動量の固有状態について考えよう。(そもそもとして固有状態があることすら怪しいことに注意する。)unique な真空\(|0\rangle\)の存在を仮定する。さらに質量\(m\)の安定な 一粒子状態が存在すると仮定する。このとき、エネルギーは\(E=\omega=\sqrt{m^2+p^2}\)である。さらに2粒子状態以上を考えるが簡単のためにすべての粒子の質量は\(m\)でbound stateは考えないことにする。この仮定より、エネルギーは\(E\ge 2m\)であるとわかるが、実は2粒子以上あると相対速度もエネルギーを持つので、2m以上のすべてのエネルギーを持つことができる。これらはスペクトル条件と呼ばれるもので物理的に意味のある系なら満たしてほしい条件である。

さて、ヒルベルト空間を定めたので場の演算子\(\varphi(x)\)の\(|0\rangle \)への影響を考えてみよう。(生成消滅演算子で空間を定めているわけではないのでフォック空間とは言わないことに注意する。)

$$\exp(-iP^{\mu}x_{\mu})\varphi(0)\exp(+iP^{\mu}x_{\mu})=\varphi(x)\tag{16}$$

に注意すると

\begin{eqnarray}\langle 0|\varphi(x)|0\rangle &=&\langle 0|e^{-iPx}\varphi(0)e^{+iPx}|0\rangle\\ &=&\langle 0|\varphi(0)|0\rangle \tag{17}\end{eqnarray}

が成り立つ。これは、ローレンツ不変量であり、粒子を生成してほしいので\( \langle 0|\varphi(x)|0\rangle =0\)であってほしい。しかし、これが成り立つかどうかは一般にはいえないのである。だが、\( \langle 0|\varphi(x)|0\rangle =v\)となったとしても

\(\tilde{\varphi(x)=\varphi(x)-v}\)

と新しく定義(shift)することで\( \langle 0|\tilde{\varphi}(x)|0\rangle \)

とすることができる。

次に4元運動量\(p\)の1粒子状態\(|p\rangle\)に対して\(\langle p|\varphi(x)|0\rangle\)を考えよう。これもローレンツ不変量である。さきほどと同じように計算すると

\begin{eqnarray}\langle p|\varphi(x)|0\rangle &=&\langle p|e^{-iPx}\varphi(0)e^{+iPx}|0\rangle\\ &=&e^{-ipx}\langle p|\varphi(0)|0\rangle \tag{18}\end{eqnarray}

となる。ここで、自由場では

\begin{eqnarray}\langle p|\varphi(0)|0\rangle&=&\langle p|\int \tilde{dk}(a^{\dagger}(k)+a(k))|0\rangle\\ &=&\int \tilde{dk}\langle p|k\rangle\\ &=&\int \tilde{dk}(2\pi)^32\omega\delta^3({\bf{p}}-{\bf{k}})\\ &=&1 \end{eqnarray}

なので相互作用がある場でも\(\langle p|\varphi(0)|0\rangle =1\)となってほしい。しかし、こちらも一般には成り立つとはいえないのである。そこで\( \langle p|\varphi(0)|0\rangle \not=1 \)であったとしても今度はrescaleすることで、\(\langle p|\tilde{\varphi}(0)|0\rangle=1\)が成り立つように調整する。

次に多粒子状態\(|p,n\rangle\)に対して、\(\langle p,n|\varphi(x)|0\rangle\)を考えよう。ここで、\(n\)は状態を決定するために必要なlavelである。先ほどと同様に計算すると

\begin{eqnarray}\langle p,n|\varphi(x)|0\rangle &=&\langle p,n|e^{-iPx}\varphi(0)e^{+iPx}|0\rangle\\ &=&e^{-ipx}\langle p,n|\varphi(0)|0\rangle\\ &=&e^{-ipx}A_n({\bf{p}}) \tag{19}\end{eqnarray}

とできる。ここで、\(p^0=({\bf{p}}^2+M^2)^{\frac{1}{2}}(M\ge 2m)\)であり、さらに\(A_n({\bf{p}})= \langle p,n|\varphi(0)|0\rangle \)と定義した。

自由場において\(a_1^{\dagger}|0\rangle\)は1粒子状態であってほしいから\(\langle p,n|\varphi(x)|0\rangle=0\)も成り立ってほしい。しかし、これは少し条件が強いので\(\langle p,n|a_1^{\dagger}(\pm \infty)|0\rangle\)で十分である。そこで

$$|\psi\rangle =\sum_n\int d^3p\ \psi_n({\bf{p}})|p,n\rangle \tag{20}$$

を考えよう。ここで、lavel \(n\) は離散的とは限らないので\(n\)による和は積分になるかもしれないことに注意する。意味としては\(|\psi\rangle\)は多粒子状態を適当に混ぜた状態であり、これに対して\(\langle \psi|a_1^{\dagger}(t)|0\rangle \)を考えようということである。計算すると

\begin{eqnarray} &&\langle \psi|a_1^{\dagger}|0\rangle \\ &=&\sum_n\int d^3 p\ \psi_n^{*}({\bf{p}})\langle p,n|a_1^{\dagger}(t)|0\rangle\\ &=&\sum_n\int d^3 p\ \psi_n^{*}({\bf{p}})\int d^3kf_1({\bf{k}})(-i)\int d^3xe^{ikx}\overleftrightarrow{\partial_0}\langle p,n|\varphi(x)|0\rangle\\ &=&-i\sum_n\int d^3 p\ \psi_n^{*}({\bf{p}})\int d^3kf_1({\bf{k}})\int d^3x\left(e^{ikx}\overleftrightarrow{\partial_0}e^{-ikx}\right)A_n({\bf{p}})\\ &=&\sum_n\int d^3 p\ \psi_n^{*}({\bf{p}})\int d^3kf_1({\bf{k}})\int d^3x\left(p^0+k^0\right)e^{i(k-p)x}A_n({\bf{p}})\\ &=&\sum_n\int d^3 p\ \psi_n^{*}({\bf{p}})\int d^3kf_1({\bf{k}})\left(p^0+k^0\right)e^{i(p^0-k^0)t}(2\pi)^3\delta^3({\bf{p-k}}) A_n({\bf{p}})\\ &=&\sum_n\int d^3 p\ \psi_n^{*}({\bf{p}})f_1({\bf{p}})\left(p^0+k^0\right)e^{i(p^0-k^0)t}(2\pi)^3 A_n({\bf{p}}) \tag{23}\end{eqnarray}

となる。ここで、\(p^0=({\bf{p}}^2+M^2)^{1/2},k^0=({\bf{p}}^2+m^2)^{1/2}\)である。

\(M\ge2m>m\)だから、\(p^0>k^0\)である。よって、(23)で\(t\to \pm\infty\)にすると振動しまくって右辺は消える。(Riemann-Lebesgue lemmma)

つまり、相互作用のある場では一般に\(a_1^{\dagger}(t)\)は多粒子状態を作るかもしれない。しかし、時間を十分置くことでこの寄与をいくらでも小さくすることができるのである。

まとめると場の演算子\(\varphi(x)\)はshiftとrescaleをすることで

$$\langle 0|\varphi(x)|0\rangle =0,\ \ \ \langle k|\varphi(x)|0\rangle=e^{-ikx}\tag{25}$$

が成り立つようにできる。また、時間を離すと多粒子成分の影響も薄くなることが分かったので(14)式に説得力が増したのではないかと思う。

もちろん、このshiftとrescaleにより、ラグランジアンの形が変わることを大いにあり得る。たとえば元のラグランジアンが

$${\mathcal{L}}=-\frac{1}{2}\partial^{\mu}\varphi\partial_{\mu}\varphi-\frac{1}{2}m^2\varphi^2+\frac{1}{6}g\varphi^3\tag{26}$$

であったときにshiftとrescaleで

$${\mathcal{L}}=-\frac{1}{2} Z_{\varphi} \partial^{\mu}\varphi\partial_{\mu}\varphi-\frac{1}{2}Z_mm^2\varphi^2+\frac{1}{6}Z_gg\varphi^3+Y\varphi\tag{27}$$

に変化したとする。ここで、\(Z_{\varphi},Z_m,Z_g,Y\)はまだわからない定数である。(25)はこの定数に対して2つの条件を課す。また、実際の質量に等しいことから\(m\)を修正、散乱断面積の依存性から\(g\)を修正する。よって、合わせて4つの条件を課すことができ、\( Z_{\varphi},Z_m,Z_g,Y \)は\(g\)の冪級数として順々に計算できるのである。

実はこの\(LSZ\)が成り立つようにする修正は繰り込みをすることに相当する。

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