量子力学の経路積分

非相対論的な1次元1粒子系の経路積分について考える。ハミルトニアンは

$$H(P,Q)=\frac{1}{2m}P^2+V(Q)\tag{1}$$

とする。ここで、\(P,Q\)は運動量と位置の演算子で\([Q,P]=i\)とする。(ここで、\(\hbar=1\))としている。

時刻\(t^{\prime}\)で位置\(q^{\prime}\)にいる粒子が、時刻\(t^{\prime\prime}\)で位置\(q^{\prime\prime}\)にいる確率振幅を計算したい。これはシュレディンガー描像では\(\langle q^{\prime\prime}|e^{-iH(t^{\prime\prime}-t^{\prime})}|q^{\prime}\rangle\)で計算できる。ここで、\(|q^{\prime}\rangle,|q^{\prime\prime}\rangle\)はそれぞれの位置にいる状態である。

ハイゼンベルグ描像に切り替えよう。位置演算子は時間発展して\(Q(t)=e^{iHt}Qe^{-iHt}\)で表され、\(Q(t)\)の固有状態\(|q,t\rangle\)を\(Q(t) |q,t\rangle =q |q,t\rangle \)で定義する。(固有状態が時間により変わるというだけで状態が時間発展しているわけではないことに注意しよう。)するとハイゼンベルグ描像とシュレディンガー描像の固有状態は\(|q,t\rangle=e^{iHt}|q\rangle\)で関係付く。なので、計算する確率振幅はハイゼンベルグ描像では\(\langle q^{\prime\prime},t^{\prime\prime}|q^{\prime},t^{\prime}\rangle\)で表される。

経路積分による計算は時間を分割するところから始まる。時間間隔\(T\equiv t^{\prime\prime}-t^{\prime}\)を\(N+1\)等分することを考えよう。\(\delta t=T/(N+1)\)として位置固有状態の完全系を入れることで

$$ \langle q^{\prime\prime},t^{\prime\prime}|q^{\prime},t^{\prime}\rangle =\int \prod_{j=1}^Ndq_j\langle q^{\prime\prime}|e^{-iH\delta t}|q_N\rangle\langle q_N|e^{-iH\delta t}|q_{N-1}\rangle\dots\langle q_1|e^{-iH\delta t}|q^{\prime}\rangle\tag{2}$$

と変形できる。ここで、積分範囲は\(-\infty\sim \infty\)である。

まず、\(\langle q_2|e^{-iH\delta t}|q_1\rangle\)はどのように計算できるか考えよう。Campbell-Baker-Hausdorf の公式

$$\exp(A+B)=\exp(A)\exp(B)\exp(-\frac{1}{2}[A,B]+\cdots)\tag{3}$$

を用いると

$$\exp(-iH\delta t)=\exp\left[-i\frac{\delta t}{2m}P^2\right]\exp[-i\delta tV(Q)]\exp[O(\delta t^2)]\tag{4}$$

とできるが\(\delta t\)が小さいという極限では最後の\(\exp\)は無視できるので運動量固有状態の完全系を挟むことにより、

\begin{eqnarray} \langle q_2|e^{-iH\delta t}|q_1\rangle&=&\int dp_1\langle q_2|e^{-i(\delta t/2m)P^2}|p_1\rangle \langle p_1|e^{-i\delta tV(Q)}|q_1\rangle\\ &=&\int dp_1e^{-i(\delta t/2m)p_1^2}e^{-i\delta tV(q_1)}\langle q_2|p_1\rangle \langle p_1|q_1\rangle\\ &=&\int \frac{dp_1}{2\pi}e^{-i(\delta t/2m)p_1^2}e^{-i\delta tV(q_1)}e^{ip_1(q_2-q_1)} \\ &=&\int \frac{dp_1}{2\pi}e^{-iH(p_1,q_1)\delta t}e^{ip_1(q_2-q_1)} \tag{5} \end{eqnarray}

と計算できる。ここで、\(\langle q|p\rangle =(2\pi)^{-1/2}\exp(ipq)\)を用いた。

もし、もっと一般的な\(P,Q\)を含むような項があるハミルトニアンを考える場合は\(P,Q\)の順序について考える必要がある。このような場合は例えば量子ハミルトニアン\(H(P,Q)\)と古典ハミルトニアン\(H(p,q)\)の間の関係を

$$H(P,Q)\equiv \int \frac{dx}{2\pi}\frac{dk}{2\pi}e^{ixP+ikQ}\int dpdq\ e^{-ixp-ikq}H(p,q)\tag{6}$$

で定めことにする。(Weyl順序)このようにすると(5)式の最終形の\(H(p_1,q_1)\)は\(H(p_1,\bar{q}_1)\)に修正されることになる。ここで、\(\bar{q}_1=\frac{1}{2}(q_1+q_2)\)である。この修正により、\(\delta t\to 0\)での極限は変わらないことに注意しよう。つまり、古典と量子でハミルトニアンはWeyl順序の関係がある理由は一切ないわけであるがWeyl順序などを考える上では\(\delta t\to 0\)の下では経路積分の結果は変わらないわけである。

結局、求めたい確率振幅は

$$\langle q^{\prime\prime},t^{\prime\prime}|q^{\prime},t^{\prime}\rangle=\int \prod^N_{k=1}dq_k \prod^N_{j=0}\frac{dp_j}{2\pi}\ e^{ip_j(q_{j+1}-q_j)}e^{-iH(p_j,\bar{q}_j)\delta t}\tag{7}$$

となる。ここで、\(\bar{q}_j=\frac{1}{2}(q_j+q_{j+1}),q_0=q^{\prime},q_{N+1}=q^{\prime\prime}\)である。さらに\(\delta t\to 0\)とすると

$$\langle q^{\prime\prime},t^{\prime\prime}|q^{\prime},t^{\prime}\rangle=\int {\mathcal{D}}q{\mathcal{D}}p\exp\left[i\int _{t^{\prime}}^{t^{\prime\prime}}dt\left(p(t)\dot{q}(t)-H(p(t),q(t))\right)\right]\tag{8}$$

となる。これは\(\delta t\to 0\)での略記であり、位相空間において\(q(t^{\prime})=q^{\prime}\)と\(q(t^{\prime\prime})=q^{\prime\prime}\)の条件の下での任意の経路について積分しているわけである。

もし、\(H(p,q)\)が運動量\(p\)について二次であれば\(p\)についての積分はガウス積分により、簡単に実行できる。実際にガウス積分を実行するときは平方完成してから行うわけであるが

$$A(p-B)^2+C$$

の一項目はガウス積分により\(q\)に依存しないので、\({\mathcal{D}}q\)に吸収させることにする。\(C\)の部分が指数部分になるがこれは定常点

$$0=\frac{\partial}{\partial p}\left(p\dot{q}-H(p,q)\right)=\dot{q}-\frac{\partial H(p,q)}{\partial p}\tag{10}$$

での\(p\dot{q}-H(p,q)\)の値である。よって、\( p\dot{q}-H(p,q) \)はラグランジアンになり、

$$ \langle q^{\prime\prime},t^{\prime\prime}|q^{\prime},t^{\prime}\rangle=\int {\mathcal{D}}q\exp\left[i\int _{t^{\prime}}^{t^{\prime\prime}}dt\ L(\dot{q}(t),q(t))\right]\tag{9} $$

となる。ここまで、\(q,p\)の交換関係を認めて経路積分を導いてきたが、逆にこの経路積分を認めることにより、古典系から量子系の計算をすることができる。その方法が経路積分による量子化である。

さて、(8)と(9)を拡張することを考えよう。例えば\(t^{\prime}<t_1<t^{\prime\prime}\)において\(\langle q^{\prime\prime},t^{\prime\prime}|Q(t_1)|q^{\prime},t^{\prime}\rangle\)は

$$ \langle q^{\prime\prime},t^{\prime\prime}|Q(t_1)|q^{\prime},t^{\prime}\rangle =
\langle q^{\prime\prime},t^{\prime\prime}|e^{-iH(t^{\prime\prime}-t_1)}Qe^{-iH(t_1-t^{\prime})}|q^{\prime},t^{\prime}\rangle \tag{11}$$

であるが全く同じように位置固有状態の完全系を挿入したりして計算することで

$$ \langle q^{\prime\prime},t^{\prime\prime}|Q(t_1)|q^{\prime},t^{\prime}\rangle =\int {\mathcal{D}}p{\mathcal{D}}q \ q(t_1)e^{iS}\tag{12}$$

となることが分かる。ここで、\(S=\int _{t^{\prime}}^{t^{\prime\prime}}dt\ (p\dot{q}-H)\)とした。さらに\( \int {\mathcal{D}}p{\mathcal{D}}q \ q(t_1)q(t_2)e^{iS} \)を考えてみると今度は\(t_1,t_2\)の順序が関係してくるので

$$ \int {\mathcal{D}}p{\mathcal{D}}q \ q(t_1)q(t_2)e^{iS} =\langle q^{\prime\prime},t^{\prime\prime}|TQ(t_1)Q(t_2)|q^{\prime},t^{\prime}\rangle \tag{13}$$

となる。ここで、\(T\)は時間順序積である。

さらなる応用のために汎関数微分を用いよう。まず、汎関数微分\(\delta/\delta f(t)\)を

$$\frac{\delta}{\delta f(t_1)}f(t_2)=\delta(t_1-t_2)\tag{14}$$

により、定義する。ここで、\(\delta (t)\)はディラックのデルタ関数である。また、チェインルールのような普通の微分で成り立つような性質が成り立つと仮定する。

外力を考えることにより、ラグランジアンを修正する。

$$H(p,q)\to H(p,q)-f(t)q(t)-h(t)p(t)\tag{15}$$

ここで、\(f(t),h(t)\)は特定の関数である。このときの確率振幅を

$$\langle q^{\prime\prime},t^{\prime\prime}|q^{\prime},t^{\prime}\rangle_{f,h}=\int {\mathcal{D}}p{\mathcal{D}}q\exp\left[i\int _{t^{\prime}}^{t^{\prime\prime}}dt\left(p\dot{q}-H+fq+hp\right)\right]\tag{16}$$

と書くことにする。すると汎関数微分が次のように計算できる。

\begin{eqnarray} \frac{1}{i}\frac{\delta}{\delta f(t_1)}\langle q^{\prime\prime},t^{\prime\prime}|q^{\prime},t^{\prime}\rangle_{f,h}&=&\int {\mathcal{D}}p{\mathcal{D}}q\ q(t_1)e^{i\int dt\left[p\dot{q}-H+fq+hp\right]}\\ \frac{1}{i}\frac{\delta}{\delta f(t_1)}\frac{1}{i}\frac{\delta}{\delta f(t_2)}\langle q^{\prime\prime},t^{\prime\prime}|q^{\prime},t^{\prime}\rangle_{f,h}&=&\int {\mathcal{D}}p{\mathcal{D}}q\ q(t_1)q(t_2)e^{i\int dt\left[p\dot{q}-H+fq+hp\right]}\\ \frac{1}{i}\frac{\delta}{\delta h(t_1)}\langle q^{\prime\prime},t^{\prime\prime}|q^{\prime},t^{\prime}\rangle_{f,h}&=&\int {\mathcal{D}}p{\mathcal{D}}q\ p(t_1)e^{i\int dt\left[p\dot{q}-H+fq+hp\right]} \tag{17}\end{eqnarray}

この微分操作のあとに自由に\(f(t),h(t)\)を変えることができるので一般には

\begin{align} \langle q^{\prime\prime},t^{\prime\prime}&|TQ(t_1)\dots P(t_n)\dots|q^{\prime},t^{\prime}\rangle\\ &=\left.\frac{1}{i}\frac{\delta}{\delta f(t_1)}\cdots\frac{1}{i}\frac{\delta}{\delta h(t_n)}\cdots\langle q^{\prime\prime},t^{\prime\prime}|q^{\prime},t^{\prime}\rangle_{f,h}\right|_{f=h=0} \tag{18}\end{align}

とできる。

今、興味があるのは\(t^{\prime}\to -\infty,t^{\prime\prime}\to +\infty\)で始状態と終状態が真空のときである。これは位置固有状態の完全系を挿入すると

$$\langle 0|0\rangle_{f,h} =\lim_{ \substack{t^{\prime}\to -\infty \\ t^{\prime\prime}\to +\infty}}\int dq^{\prime\prime}dq^{\prime}\psi_0^*(q^{\prime\prime})\langle q^{\prime\prime},t^{\prime\prime}|q^{\prime},t^{\prime}\rangle_{f,h}\psi_0(q^{\prime})\tag{19} $$

と計算できる。ここで、\(\psi_0(q)=\langle q|0\rangle\)は真空状態の波動関数である。このあと(19)式を変形すればよいわけであるがこれはなかなかめんどくさい。そこでここでは\(\epsilon\)トリックといううまい方法を用いて計算することにする。

まず、ハミルトニアン\(H\)の固有値が\(E_n\)の状態を\(|n\rangle\)と表すことにする。ここで、\(E_n=0\)が成り立つと仮定しよう。(成り立たなくてもシフトをすればよいだけである。)すると位置固有状態はこの\(|n\rangle\)を用いて次のように計算できる。

\begin{eqnarray} |q^{\prime},t^{\prime}\rangle &=&e^{iHt^{\prime}}|q^{\prime}\rangle\\ &=&\sum^{\infty}_{n=0}e^{iHt^{\prime}}|n\rangle\langle n|q^{\prime}\rangle\\ &=&\sum^{\infty}_{n=0}\psi_n^*(q^{\prime})e^{iE_nt^{\prime}}|n\rangle \tag{20}\end{eqnarray}

ここで、\(\psi_n(q)=\langle q|n\rangle\)は\(|n\rangle\)の波動関数である。今、\(H\)を\((1-i\epsilon)H\)に置き換えることを考えよう。\(\epsilon\)は微小な正の値としておく。すると面白いことに(20)式で\(E_n\to E_n(1-i\epsilon)\)と置き換えてから\(t^{\prime}\to -\infty\)にすると\(\sum\)の真空状態以外はすべて\(e^{-\infty}\)がかかって消えてしまうのである。よって、その極限の下で(20)式は\(\psi_0^*(q^{\prime})|0\rangle\)になる。全く同様にブラの方もこのトリックを用いることで\(\langle q^{\prime\prime},t^{\prime\prime}|\to \langle 0|\psi_0(q^{\prime})\)となる。

よって、ハミルトニアンを少しずらすだけで真空の場合も簡単に計算できて

$$\langle 0|0\rangle_{f,h} = \int {\mathcal{D}}p{\mathcal{D}}q\exp\left[i\int _{-\infty}^{+\infty}dt\left(p\dot{q}-(1-i\epsilon)H+fq+hp\right)\right]\tag{21} $$

となる。ここで、波動関数の部分は経路積分の測度に吸収させた。

最後に\(H=H_0+H_1\)となるような摂動論で便利な表式を紹介しておく。この表記は以後のファインマンダイヤグラムを使った計算でかなり使うのでとても重要である。といっても計算自体は単純で汎関数微分を用いるだけである。

\begin{eqnarray} \langle 0|0\rangle_{f,h} &=& \int {\mathcal{D}}p{\mathcal{D}}q\exp\left[i\int _{-\infty}^{+\infty}dt\left(p\dot{q}-H_0(p,q)-H_1(p,q)+fq+hp\right)\right]\\ &=&\exp\left[-i\int _{-\infty}^{+\infty}dt\ H_1\left(\frac{1}{i}\frac{\delta}{\delta h(t)},\frac{1}{i}\frac{\delta}{\delta f(t)}\right)\right]\\ &&\times \int {\mathcal{D}}p{\mathcal{D}}q\exp\left[i\int _{-\infty}^{+\infty}dt\left(p\dot{q}-H_0(p,q)+fq+hp\right)\right] \tag{22}\end{eqnarray}

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です