素粒子標準模型:ヒッグス場とゲージ場:ヒッグス場のラグランジアン

このポテンシャルの最小点は
\begin{eqnarray}
|\phi|=\frac{v}{\sqrt{2}}
\end{eqnarray}
で取ることになる。従って真空ではヒッグス場は零でない値を取ることになり、自発的対称性の破れが起きる。上式からも分かるように、真空を定める\(\phi\)の値は絶対値で規定されているので、真空を選ぶ段階で位相の自由度がある。しかし以下に説明するように、この位相は常に実数に揃えることが出来る。ここで大域的\(SU(2)\)対称性を考えてみよう。\(SU(2)\)の一般系は複素数\(a,b\)を用いて
\begin{eqnarray}
U=\frac{1}{\sqrt{|a|^2+|b|^2}}\begin{pmatrix}
a^\dagger&b^\dagger\\
-b&a
\end{pmatrix}
\end{eqnarray}
と書き表せる。すると
\begin{eqnarray}
\frac{1}{\sqrt{|a|^2+|b|^2}}
\begin{pmatrix}
a^\dagger&b^\dagger\\
-b&a
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
x\\y
\end{pmatrix}
&=&
\frac{1}{\sqrt{|a|^2+|b|^2}}
\begin{pmatrix}
a^\dagger x+b^\dagger y\\
-bx+ay
\end{pmatrix}
\end{eqnarray}
となり、\(a^\dagger x+b^\dagger y=0\)となるように\(a,b\)を選ぶと
\begin{eqnarray}
\frac{1}{\sqrt{|a|^2+|b|^2}}
\begin{pmatrix}
0\\
-b x+a\left(-\frac{a^\dagger}{b^\dagger}x\right)
\end{pmatrix}
&=&
\begin{pmatrix}
0\\
-\frac{x}{b^\dagger}\sqrt{|a|^2+|b|^2}
\end{pmatrix}
\end{eqnarray}
のように第一成分を0に出来る。更に\(x/b^\dagger\in\mathbb{R}\)となるように\(a\)を選ぶと成分を実数に出来る。従って
\begin{eqnarray}
\phi_{vac}(x)&=&\frac{1}{\sqrt{2}}\begin{pmatrix}
0\\
v
\end{pmatrix}
\end{eqnarray}
のように、実数に取ることが出来る。さらにこの真空からのズレとして
\begin{eqnarray}
\phi(x)=\frac{1}{\sqrt{2}}\begin{pmatrix}
0\\v
\end{pmatrix}+\delta\phi(x)
\end{eqnarray}
と書く。ここで局所的SU(2)対称性から常に\(\delta\phi\)の第一成分を0に出来る。実際、\(\delta\phi(x)=(\phi_1(x),\phi_2(x))^T\)とした時
\begin{eqnarray}
U(x)=\frac{1}{\sqrt{|\phi_1(x)|^2+|\phi_2(x)|^2}}\begin{pmatrix}
\phi_2(x)&-\phi_1(x)\\
\phi_1^\dagger(x)&\phi_2^\dagger(x)
\end{pmatrix}
\end{eqnarray}
としてやれば第二成分は確かに0に出来るし、同時に第一成分も実数に出来る。従って
\begin{eqnarray}
\phi(x)=\frac{1}{\sqrt{2}}\begin{pmatrix}
0\\v+h(x)
\end{pmatrix}
~v,h\in\mathbb{R} \end{eqnarray}

ここではヒッグス粒子を導入する。ヒッグス粒子はSU(2)に関してダブレット、SU(3)に関してはシングレットになっている。そしてヒッグス自身はハイパーチャージを持つので、複素場である。ゲージ量子数は
\begin{eqnarray}
H=\left(1,2,\frac{1}{2}\right)
\end{eqnarray}
である。故にヒッグス場は2つの複素スカラ-場を用いて、\(SU(2)\)に関して
\begin{eqnarray}
\Phi(x)=
\begin{pmatrix}
\phi_1(x)\\
\phi_2(x)
\end{pmatrix}
\end{eqnarray}
というダブレット構造を構成している。ゲージ量子数からヒッグス二重項に対する共変微分は、\(SU(2)\)と\(U(1)\)を取り入れた
\begin{eqnarray}
(D_\mu \phi)=\partial_\mu\phi-i\left[
g_2W_\mu^aT^a_2+g_1B_\mu Y
\right]\phi
\end{eqnarray}
となると言える。ゲージ量子数で指定されているように、ここではヒッグスがハイパーチャージ\(\frac{1}{2}\)である事を認める(こうすると現象が上手く説明できる。という理由から決めている)。
するとヒッグスはダブレットなので、ハイパーチャージに関する生成子は
\begin{eqnarray}
Y=\begin{pmatrix}
1/2&0\\
0&1/2
\end{pmatrix}
\end{eqnarray}
という行列になる。そしてラグランジアンはいつものように
\begin{eqnarray}
\mathcal{L}_H &=& (D_\mu\phi)^\dagger(D^\mu\phi)-V(|\phi|)
\end{eqnarray}
になる。次にポテンシャルを決める必要があるが、ここでは
\begin{eqnarray}
V(|\phi|)=\frac{\lambda}{4}\left(
\phi^\dagger\phi-\frac{1}{2}v^2
\right)^2
\end{eqnarray}
としよう。これは仮定である。このようにポテンシャルを取ると何故か現象を上手く説明できるのだ。

と書くことが出来る。この新しい場\(h(x)\)でラグランジアンを書き直そう。いっぺんに見るのは骨が折れるので、各項づつ見ていこう。まず

\begin{eqnarray}
D_\mu\phi(x)
&=& \begin{pmatrix} \partial_\mu-\frac{i}{2}(g_2W^3_\mu+g_1B_\mu) &-\frac{i}{2}g_2(W_\mu^1-iW_\mu^2)\\
-\frac{i}{2}g_2(W_\mu^1+iW_\mu^2) & \partial_\mu-\frac{i}{2}(-g_2W^3_\mu+g_1B_\mu) \end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
0\\\frac{v+h(x)}{\sqrt{2}}\end{pmatrix}\\
&=&
\begin{pmatrix} -\frac{i}{2}g_2(W_\mu^1-iW_\mu^2)\left(\frac{v+h(x)}{\sqrt{2}}\right)\\
\partial_\mu\left(\frac{v+h(x)}{\sqrt{2}}\right) -\frac{i}{2}(-g_2W^3_\mu+g_1B_\mu) \left(\frac{v+h(x)}{\sqrt{2}}\right)
\end{pmatrix}
\end{eqnarray}

であるから

\begin{eqnarray}
&&(D_\mu\phi)^\dagger(D^\mu\phi)\\
&=& \frac{1}{2}\partial_\mu h\partial^\mu h + \frac{1}{4}(g_2W^3_\mu-g_1B_\mu)(g_2W^{3\mu}-g_1B^\mu)\left(\frac{v+h}{\sqrt{2}}\right)^2 + \frac{g^2_2}{4}(W_\mu^1+iW_\mu^2)(W^{1\mu}-iW^{2\mu})\left(\frac{h+v}{\sqrt{2}}\right)^2\nonumber\\
\\
&=&\frac{1}{2}\partial_\mu h\partial^\mu h+\frac{1}{8}(g_2W^3_\mu-g_1B_\mu)(g_2W^{3\mu}-g_1B^\mu)\left(2vh+h^2\right) + \frac{g^2_2}{8}(W_\mu^1+iW_\mu^2)(W^{1\mu}-iW^{2\mu})(2vh+h^2)\nonumber\\
\\
&&+ \frac{1}{8}(g_2W^3_\mu-g_1B_\mu)(g_2W^{3\mu}-g_1B^\mu)v^2 + \frac{g^2_2}{8}(W_\mu^1+iW_\mu^2)(W^{1\mu}-iW^{2\mu})v^2
\end{eqnarray}

ここでは敢えてヒッグス場を含む項と含まない項で上下に書いた。二行目にある式について考えてみたい。これはゲージ場の二次式の項なので質量に対応すると思われる。まずこの項を改めて書き直していこう。

\begin{eqnarray}
&&\frac{1}{8}(g_2W^3_\mu-g_1B_\mu)(g_2W^{3\mu}-g_1B^\mu)v^2 + \frac{g^2_2}{8}(W_\mu^1+iW_\mu^2)(W^{1\mu}-iW^{2\mu})v^2\\
&=&\frac{1}{8}v^2 (W^1_\mu,W^2_\mu,W^3_\mu,B_\mu)
\begin{pmatrix}g_2^2&0&0&0\\
0&g_2^2&0&0\\
0&0&g_2^2&-g_1g_2\\
0&0&-g_1g_2&g_1^2\end{pmatrix}
\begin{pmatrix} W^1_\mu\\W^2_\mu\\W^3_\mu\\B_\mu\end{pmatrix} \end{eqnarray}

これから見て取れるように、質量項が混じってしまっている。従って質量固有状態を知るために行列を対角化してみよう。簡単な代数計算から固有値は

\begin{eqnarray} 0~~,~~\frac{1}{8}v^2(g_1^2+g_2^2)~~,~~\frac{1}{8}v^2g_2^2~~,~~\frac{1}{8}v^2g_2^2
\end{eqnarray}
と求まり、対応する固有状態は上記の固有値の順に(基底を取り直して)
\begin{eqnarray}
&&\begin{pmatrix}A_\mu\\
Z_\mu\end{pmatrix}
=\begin{pmatrix}
\frac{g_2}{\sqrt{g_1^2+g_2^2}}&\frac{g_1}{\sqrt{g_1^2+g_2^2}}\\
-\frac{g_1}{\sqrt{g_1^2+g_2^2}}&\frac{g_2}{\sqrt{g_1^2+g_2^2}}
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
B_\mu\\
W_\mu^3
\end{pmatrix}
\equiv
\begin{pmatrix}
\cos\theta_w&\sin\theta_w\\
-\sin\theta_w&\cos\theta_w
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
B_\mu\\
W_\mu^3
\end{pmatrix}\\
&&~~~~W^1_\mu\\
&&~~~~W_\mu^2
\end{eqnarray}
が質量固有状態になる。なおここで定義した\(\theta_w\)はワインバーグ角と呼ばれ、二つのゲージ場\(B_\mu\)と\(W^3_\mu\)の混ざり具合を表す。ここからは群論のテクニカルな話しになるが、\(W_\mu^{1,2}\)の基底も取り替える。上記の行列からも明らかだが、質量行列の上二成分行列が対角形なので適当なユニタリ変換で\(W^{1/2}_\mu\)を混ぜても質量固有状態であるという事実は変わらない。勿論任意のユニタリ変換でもいいのだが、リー群の非カルタン行列が昇降演算子の役割を果たすことを思い起こすと

\begin{eqnarray}
\begin{pmatrix}
W^+_\mu\\
W^-_\mu
\end{pmatrix}
&=&
\begin{pmatrix}
\frac{1}{\sqrt{2}}(W_\mu^1-iW^2_\mu)\\
\frac{1}{\sqrt{2}}(W_\mu^1+iW^2_\mu)
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
\frac{1}{\sqrt{2}}&-\frac{i}{\sqrt{2}}\\
\frac{1}{\sqrt{2}}&\frac{i}{\sqrt{2}}
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
W_\mu^1\\
W_\mu^2
\end{pmatrix}
\end{eqnarray}

という新たな場を導入するのが良い。生成子の取替えまで考察すると意味が明瞭になるだろうが、これの解析は後に回す。ユニタリ変換をしても固有値は不変なので、結局以上の対角化により、質量零のゲージ場\(A_\mu\)、質量\(M_Z\equiv\frac{1}{2}v\sqrt{g^2_1+g_2^2}\)を持つゲージ場:Zボソン、質量\(M_W\equiv\frac{1}{2}vg_2\)を持つゲージ場:\(W^{\pm}\)ボソンの4つが生まれる。

ラグランジアンをこの新たに導入した場で書き直そう。

\begin{eqnarray}
&&(D_\mu\phi)^\dagger(D^\mu\phi)\\
&=&\frac{1}{2}\partial_\mu h\partial^\mu h
+
\frac{1}{8}(g_2W^3_\mu-g_1B_\mu)(g_2W^{3\mu}-g_1B^\mu)\left(2vh+h^2\right)
+
\frac{g^2_2}{8}(W_\mu^1+iW_\mu^2)(W^{1\mu}-iW^{2\mu})(2vh+h^2)\nonumber
\\
&&+
\frac{1}{8}(g_2W^3_\mu-g_1B_\mu)(g_2W^{3\mu}-g_1B^\mu)v^2
+
\frac{g^2_2}{8}(W_\mu^1+iW_\mu^2)(W^{1\mu}-iW^{2\mu})v^2\nonumber\\
\\
&=&
\frac{1}{2}\partial_\mu h\partial^\mu h
+
\frac{M^2_Z}{2v^2}Z_\mu Z^\mu\left(2vh+h^2\right)
+
\frac{M_W^2}{v^2}W_\mu^+W^{-\mu}(2vh+h^2)+
\frac{1}{2}M_Z^2Z_\mu Z^\mu
+
M^2_WW_\mu^+W^{-\mu}\nonumber\\
\end{eqnarray}
運動項の書き換えが以上だったので、次はポテンシャル部分も書き直してみよう。

\begin{eqnarray}
V(|\phi|)=\frac{\lambda}{4}\left(
\phi^\dagger\phi-\frac{1}{2}v^2\right)^2=
\frac{1}{4}\lambda\left(
\frac{1}{2}(v+h)^2-\frac{1}{2}v^2
\right)^2
&=&
\frac{1}{4}\lambda\left(
vh+\frac{1}{2}h^2
\right)^2\nonumber\\
&=&
\frac{1}{4}\lambda v^2h^2+\frac{1}{4}\lambda vh^3+\frac{1}{16}\lambda h^4
\end{eqnarray}

のようになる。ここで\(m^2_h\equiv\frac{1}{2}\lambda v^2\)がヒッグス場の質量になっていることが分かる。従って、ヒッグス場のSSBの後のラグランジアンは

\begin{eqnarray}
\mathcal{L}
&=&
\frac{1}{2}\partial_\mu h\partial^\mu h
+
\frac{M^2_Z}{2v^2}Z_\mu Z^\mu\left(2vh+h^2\right)
+
\frac{M_W^2}{v^2}W_\mu^+W^{-\mu}(2vh+h^2)+
\frac{1}{2}M_Z^2Z_\mu Z^\mu
+
M^2_WW_\mu^+W^{-\mu}\nonumber\\
&&
-\frac{1}{2}m_h^2h^2-\frac{1}{4}\lambda vh^3-\frac{1}{16}\lambda h^4
\end{eqnarray}
となる。

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