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BSM:シーソー機構

ニュートリノの極微な質量を説明する機構としてシーソー機構なるものがある。その導入のためには右手型ニュートリノ\(\nu_R\)の導入が必要になる。このゲージ量子数は
\begin{eqnarray}
\nu_R=(1,1,0)
\end{eqnarray}
にとっておく。こうでなければ実験で観測されてしまうからだ。さて左手型ニュートリノと合わせて、次の質量項を導入する。
\begin{eqnarray}
\mathcal{L}_{neutrino-mass}=-\left(m_D
\epsilon_{ij}L_iH_j\overline{\nu_R}
+\frac{1}{2}M_M\nu_R\nu_R+h.c\right)
\end{eqnarray}
これはゲージ対称性に抵触しないので許される。添字Dはディラック、Mはマヨラナをやんわり意味している。ちなみに、この2つの質量は実数に取れる。この項のSSB後の形は
\begin{eqnarray}
\mathcal{L}_{neutrino-mass}
&\to&
-\left(m_DL_1H_2\overline{\nu_R}+\frac{1}{2}M_M\nu_R\nu_R+h.c\right)\\
&=&
-\left(m_D\nu_L\overline{\nu_R}\left(\frac{v+h}{\sqrt{2}}\right)+\frac{1}{2}M_M\nu_R\nu_R+h.c\right)\\
&=&
-\left(
\frac{m_Dv}{\sqrt{2}}\nu_L\overline{\nu_R}
+
\frac{m_D}{\sqrt{2}}\nu_L\overline{\nu_R}h
+
\frac{1}{2}M_M\nu_R\nu_R+h.c
\right)\\
&\equiv&
-\left(
M_D\nu_L\overline{\nu_R}
+
M_D\nu_L\overline{\nu_R}h
+
\frac{1}{2}M_M\nu_R\nu_R+h.c
\right)
\end{eqnarray}
となる。質量固有状態を求めるために対角化を実行しよう。そのために上記の
表式ではなく、$M_M\nu_R\nu_R+h.c=M_M\nu_R\nu_R+M_M\overline{\nu_R}~\overline{\nu_R}=M_M\overline{\nu_R}~\overline{\nu_R}+h.c$を用いて、\(\nu_R\)を$\overline{\nu_R}$に変えて議論する。
\begin{eqnarray}
&&M_D\nu_L\overline{\nu_R}
+
\frac{1}{2}M_M\overline{\nu_R}~\overline{\nu_R}+h.c\\
&=&\frac{1}{2}
\begin{pmatrix}
{\nu_L}&\overline{\nu_R}
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
0&M_D\\
M_D&M_M
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
\nu_L\\
\overline{\nu_R}
\end{pmatrix}
\end{eqnarray}
ここに現れた行列は実対称行列であるから実直交行列により対角化が可能である。この固有値は初等計算より
\begin{eqnarray}
\frac{M_M-\sqrt{M_M^2+4M_D^2}}{2}
~~~,~~~
\frac{M_M+\sqrt{M_M^2+4M_D^2}}{2}
\end{eqnarray}
の2つであると分かり、それぞれに対応した固有状態を$\nu_L^1,\nu_L^2$と書くとすると、以下のように書き換えることができる。
\begin{eqnarray}
\frac{1}{2}
\begin{pmatrix}
{\nu_L}&\overline{\nu_R}
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
0&M_D\\
M_D&M_M
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
\nu_L\\
\overline{\nu_R}\end{pmatrix}=
\frac{1}{2}
\begin{pmatrix}
{\nu_L^1}&\nu_L^2
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
\frac{M_M-\sqrt{M_M^2+4M_D^2}}{2}&0\\
0&\frac{M_M+\sqrt{M_M^2+4M_D^2}}{2}
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
\nu_L^1\\
\nu^2_L
\end{pmatrix}\nonumber\
\end{eqnarray}
ここまでは新しい粒子を導入し、ラグランジアンを書いてSSB後の形式を求めて質量固有状態を求めただけである。ここからが「シーソー機構」の肝である。シーソー機構ではマヨラナ質量$M_M$を$M_M>>M_D$となるように選ぶ。この条件のもとで質量固有値は次のように近似できる。$\sqrt{M_M^2+4M_D^2}\approx M_M+\frac{2M_D^2}{M_M}$より
\begin{eqnarray}
M_{\nu^1}=\frac{M_M-\sqrt{M_M^2+4M_D^2}}{2}&\approx&-\frac{M_D^2}{M_M}\\
M_{\nu^2}=\frac{M_M+\sqrt{M_M^2+4M_D^2}}{2}&\approx&M_M
\end{eqnarray}
符号の違いは後に議論するとして、この結果から分かるように$M_M$を増減させた時、$M_{\nu^1}$が上がれば$M_{\nu^2}$は下がるし、逆に$M_{\nu^1}$が下がれば$M_{\nu^2}$は上がる。まさにシーソーのような振る舞いであると言えよう。


ちなみに残しておいた符号の違いだが、対角化した後の質量固有状態を用いると
\begin{eqnarray}
\mathcal{L}_{neutrino-mass} &=& -\frac{1}{2} \left( M_{\nu^1}\nu_L^1\nu_L^1
+
M_{\nu^2}\nu_L^2\nu_L^2
+
h.c
\right)\\
&\approx&
-\frac{1}{2}
\left(
-\frac{M_D^2}{M_M}\nu_L^1\nu_L^1
+
M_M\nu_L^2\nu_L^2
+
h.c
\right)
\end{eqnarray}
のようになる。一見タキオン状態のようにも見えるが、それは見かけ上の問題で、何故なら$\nu^1_L$の定義の段階で位相の自由度があるからだ。つまり\(i\nu_L^1\)を新たに\(\nu_L^1\)と定義し直すことでマイナス符号を吸収することが出来るからだ。この場の再定義により、ニュートリノ質量項は
\begin{eqnarray}
\mathcal{L}_{neutrino-mass}
&\approx&
-\frac{1}{2}
\left(
\frac{M_D^2}{M_M}\nu_L^1\nu_L^1
+
M_M\nu_L^2\nu_L^2
+
h.c
\right)
\end{eqnarray}
という通常の形式に移行する。