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クーロンゲージと量子化:拘束条件の整合性と未定乗数の決定

なぜ未定乗数が決まらなかったのか、それはゲージ対称性が理論にあるからだ。そこで例えばクーロンゲージ条件を追加で課してみよう:
\begin{eqnarray}
\partial_iA^i\approx0
\end{eqnarray}
この新しい拘束条件の整合性を確認しよう。
\begin{eqnarray}
\int d^3y~\left\{
\partial_i^xA^i(x),\mathcal{H}_T(y)
\right\}
&=&
\int d^3y~\left\{
\partial_i^xA^i(x),
\frac{1}{2}(\Pi^i(y))^2
+
\Pi^i(y)\partial^y_iA^0(y)
\right\}\\
&=&
\partial_i\Pi^i(x)-\triangle A^0(x)\\
&\approx&-\triangle A^0(x)
\end{eqnarray}
最後に残った項は既存の拘束条件で0に出来ないので、新しい拘束条件となる。もちろん$~\triangle A^0\approx0~$を新しい拘束条件としてもいいが、もっと強く$~A^0\approx0~$を要請しよう。この新しい拘束条件の整合性より
\begin{eqnarray}
\left\{
A^0(x),H_T
\right\}
&=&\int d^3y~
\left\{
A^0(x),\lambda(y)\Pi^0(y)
\right\}
\approx\lambda(x)
\end{eqnarray}
よってこの条件の整合性は未定乗数を0にすることで満足される。以上により、整合性は全て満たされた。以上より、クーロンゲージが課された結果は全ての拘束条件を考慮して、以下の全ハミルトニアンに纏められる(拘束条件を使って落とせる項は可能な限り消した)。
\begin{eqnarray}
\mathcal{H}_T=
\frac{1}{2}\boldsymbol{\Pi}^2
+
\frac{1}{2}(\partial_iA^j)(\partial_iA^j)
\end{eqnarray}

とりあえず、ここまでに課された拘束条件を通し番号を付けて並べると
\begin{eqnarray}
\phi_1&=&\nabla_iA^i\\
\phi_2&=&\nabla_i\Pi^i\\
\phi_3&=&A^0\\
\phi_4&=&\Pi^0
\end{eqnarray}
となっている。蛇足だが、当然これらの整合性は上記の全ハミルトニアンから保証されている。

一応述べておくが、この全ハミルトニアンは古典電磁気学のエネルギー密度に一致している。それを見ておこう。共役運動量は拘束条件を使うことで\(~\Pi^i=-F^{0i}=-\dot{A}^i-\partial_iA^0\approx-\dot{A}^i~\)になるので、通常の電場とゲージ場の関係式より
\begin{eqnarray}
E^i&=&\left(-\nabla\phi-\frac{\partial}{\partial t}\textbf{A}\right)^i\\
&=&
-\partial_iA^0-\dot{A}^i\\
&\approx&-\dot{A}^i\\
&=&\Pi^i
\end{eqnarray}
を得る。一方で、天下り的だが
\begin{eqnarray}
\int d^3x~B^iB^i=\int d^3x~(\epsilon^{ijk}\partial_jA_k)(\epsilon^{imn}\partial_mA_n)&=&\int d^3x~(\partial_iA^j)(\partial_iA^j)

(\partial_iA^j)(\partial_jA^i)\\
(部分積分と拘束条件で第二項は消える\rightarrow)&\approx&\int d^3x~(\partial_iA^j)(\partial_iA^j)
\end{eqnarray}
となるから、この結果を持って全ハミルトニアンは
\begin{eqnarray}
H_T&=&\int d^3x~
\mathcal{H}_T\\
&=&
\int d^3x~\left[\frac{1}{2}\boldsymbol{\Pi}^2
+
\frac{1}{2}(\partial_iA^j)(\partial_iA^j)\right]\\
&=&
\frac{1}{2}\int d^3x~\left(
\mathbf{E}^2+\mathbf{B}^2
\right)
\end{eqnarray}
となり、古典電磁気学のエネルギー密度に厳密に一致する。

マクスウェル場の拘束条件と未定乗数

マクスウェル場を古典場として扱い、拘束系の解析力学の知識を用いてディラック括弧を構成してしまおう。その前に注意として、以下の計算では全ての引数の時刻は等しいものとして計算する。例えば\(~A_\nu(x)~\)や\(~\partial_\mu A_\nu(y)~\)などが登場するが、どちらも時間成分は等しいとする。でないとポアソン括弧が計算できない。

まずマクスウェル場の共役運動量は定義より、
\begin{eqnarray}
\Pi^\mu=\frac{\partial\mathcal{L}}{\partial(\partial_0A_\mu)}=-F^{0\mu}
\end{eqnarray}
なので、普通にハミルトニアンを求めると
\begin{eqnarray}
\mathcal{H}=\Pi^\mu \dot{A}_\mu-\mathcal{L}
=
\Pi^0\dot{A}_0+
\frac{1}{2}\boldsymbol{\Pi}^2
+
(\boldsymbol{\Pi}\cdot\nabla)A^0
+
\frac{1}{2}(\partial_iA^j)(\partial_iA^j)

\frac{1}{2}(\partial_iA^j)(\partial_jA^i)
\end{eqnarray}
になる。さて、共役運動量$~\Pi^0~$は$~0~$であることが上の計算からすぐ分かるが、これは理論の拘束条件になっているので、適切に取り込まなくてはならない。そのために拘束系の一般論に従い、ハミルトニアンに対し未定乗数$~\lambda~$を加え
\begin{eqnarray}
\mathcal{H}_T&=&\mathcal{H}+\lambda\Pi^0
\end{eqnarray}
というような全ハミルトニアンなるものを定義することにしよう。なおハミルトニアンに含まれている第一項は、未定乗数の項に纏めてられるので、ハミルトニアンからは省こう。さて今から拘束条件の整合性を確認しながら、未定乗数の決定の可否について見ていく。なお拘束条件と全ハミルトニアンのポアソン括弧を以下で計算していくが、全ハミルトニアンの項で拘束条件と明らかに0のものは初めから省いた。

まず$~\Pi^0\approx0~$の整合性を見ると
\begin{eqnarray}
\left\{
\Pi^0(x),H_T
\right\}
&=&
\int d^3y\left\{
\Pi^0(x),\mathcal{H}_T(y)
\right\}\\
&=&
\int d^3y
\left\{
\Pi^0(x),(\boldsymbol{\Pi}(y)\cdot\nabla^y)A^0(y)
\right\}\\
&=&
\int d^3y~
\boldsymbol{\Pi}(y)\cdot\nabla^y\left\{
\Pi^0(x),A^0(y)
\right\}\\
&=&-\int d^3y~
\boldsymbol{\Pi}(y)\cdot\nabla^y\delta^3(\textbf{x}-\textbf{y})\\
&=&
\nabla_i{\Pi}^i
\end{eqnarray}
となるが、これは既存の拘束条件$~\Pi^0=0~$では0にならないので、新しい拘束条件
\begin{eqnarray}
\nabla_i\boldsymbol{\Pi}^i\approx0
\end{eqnarray}
を課す事にする。次にこの拘束条件の整合性を確認すると
\begin{eqnarray}
\left\{
\nabla_k^x{\Pi}^k(x)
,
H_T
\right\}
&=&
\int d^3y~
\nabla_k^x\left\{
{\Pi}^k(x)
,
\mathcal{H}_T(y)
\right\}\\
&=&
\int d^3y~
\nabla_k^x\left\{
{\Pi}^k(x)
,
\frac{1}{2}(\partial^y_iA^j(y))(\partial^y_iA^j(y))

\frac{1}{2}(\partial_i^yA^j(y))(\partial_j^yA^i(y))
\right\}\\
&=&
\int d^3y~
\nabla_k^x\left\{
\frac{1}{2}(\partial^y_iA^j(y))(\partial^y_iA^j(y))

\frac{1}{2}(\partial_i^yA^j(y))(\partial_j^yA^i(y))
,{\Pi}^k(x)
\right\}\\
&=&
\int d^3y~\nabla^x_k\left[
(\partial_i^yA^j(y))\partial_i^y(-\delta_{jk}\delta^3(\textbf{x}-\textbf{y}))

(\partial^y_jA^i(y))\partial_i^y(-\delta_{jk}\delta^3(\textbf{x}-\textbf{y}))
\right]\\
&=&
\int d^3y~\nabla^x_j\left[
(\partial_i^yA^j(y))\partial_i^y(-\delta^3(\textbf{x}-\textbf{y}))

(\partial^y_jA^i(y))\partial_i^y(-\delta^3(\textbf{x}-\textbf{y}))
\right]\\
&=&
\int d^3y~\left[
(\partial_i^yA^j(y))\partial_i^y\partial_j^y(\delta^3(\textbf{x}-\textbf{y}))

(\partial^y_jA^i(y))\partial_i^y\partial_j^y(\delta^3(\textbf{x}-\textbf{y}))
\right]\\
&=&0
\end{eqnarray}
よって、これで整合性は確認ができ、未定乗数が決まらなかったものの、理論の整合性は確立された。